アンチはせっせとネガティブ情報を書き込み続ける… 「ネガキャン」
「ネガティブキャンペーン」(Negative Campaigning) とは、ライバル関係にある企業や商品などを貶め評価を下げるため、それらの ネガティブ (マイナス) な情報を広める宣伝方法のことです。 ライバルの評価が下がれば、相対的・結果的に自分たちの評価が上がることにもなります。 略して 「ネガキャン」 とも呼びます。
ネガキャンの内容としては、些細な問題や欠点を大げさにふれ回ったり、負のレッテルや誤解を植えつけ助長するといったもの、無関係のスキャンダルや人々から嫌われている別のものとイメージを無理やり結びつける、完全に事実無根の誹謗中傷を行うなど、様々なものがあります。
転じて、商売やビジネスの世界ではなく、日常生活における個人間の単なる悪口や陰口、罵詈雑言などをネガキャンと呼ぶ場合もあります。 また ネット の時代となり、特定商品や作品の熱心な ファン や 信者 (儲) などが、ライバルとなるものにネガキャンを仕掛けたり、アンチ となって 叩き を行ったりもします。
元々は選挙戦術の名称として使われるようになった 「ネガキャン」
ネガキャンという言葉が使われるようになったのは、アメリカの国会議員の選挙戦においてと言われています。 自分たちの正しさや優位性を説くのではなく、対立候補の批判を行うことで選挙を有利に進めようとの選挙戦術を指すものとなります。
ただし、選挙などは主義主張や政策を巡って批判したり批判されたりは常ですから、ことさらにネガティブ・キャンペーンという用語が使われるのは、政策や公約などについての公正でまともな批判ではなく、イメージ優先の実態のないバッシングや 人格攻撃、誹謗中傷かそれに極めて近いものなどがそれにあたります。
アメリカ大統領選のテレビCM 「Peace, Little Girl」 でイメージ操作
有名な例では、1964年11月のアメリカ大統領選挙において、現職の民主党大統領候補リンドン・B・ジョンソンが行った、共和党バリー・ゴールドウォーター候補に対するテレビCMでのネガキャンが良く知られています。
タカ派として知られていたゴールドウォーター議員が、核兵器について過激な発言 (当時悪化しつつあったベトナム情勢について 「ベトナムの密林など核兵器で焼き払えば良い」 など) を行なっていたことから、ジョンソン陣営はこれを利用。 花園の小さな女の子が花占いをしている掛け声を核爆発のカウントダウンにオーバーラップさせ、きのこ雲の爆発へとつないで、「ゴールドウォーターが大統領に当選したら核戦争を起こす」 との強烈な印象を見るものに与える内容となっていました (ただしゴールドウォーターの名前は出さず、ジョンソンに投票を呼びかけるだけだったため、ゴールドウォーターも効果的な抗議などができなかった)。
このネガキャンCM 「Peace, Little Girl」(平和、小さな少女) は同年9月7日にわずか1回だけの放送だったものの、ベトナム情勢の悪化や 1962年10月のキューバ危機による核戦争への恐怖の記憶もあり、大きな反響を呼ぶことに (その後このキャンペーンCMは、「ヒナギク」「汚いヒナギク」 と呼ばれることに)。 結果としてこのネガキャンは功を奏し、劣勢に立たされていたジョンソンは大差をつけて逆転 勝利。 それに伴ない、こうした選挙戦術の有効性が広く知られることとなりました。
比較広告とは異なり、一騎打ちでとくに真価を発揮するネガキャン
有力なライバルが少数、あるいは事実上1つだけであるような一騎打ちの場合に、とくに直接的で高い効果が見込めるのが 「ネガキャン」 の特徴です。
似た宣伝方法である 「比較広告」 との違いは、PRするのが自陣営の優位性ではなく、相手の劣ったところをクローズアップするところで、必ずしも自陣営の宣伝を必要としない点も大きく異なる点でしょう。 ただし比較広告の中にも、ネガキャン側に強く振った内容のものも存在します。