同人用語の基礎知識

御用学者

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学者としての良心よりも国や行政への追従を… 「御用学者」

 「御用学者」(ごようがくしゃ) とは、国や行政機関、公的機関、あるいはそれらの強い意向に沿った政策などを無批判に肯定、あるいは絶賛し、それを後押しするような論評や提言、研究結果発表を繰り返す学者 (大学教授など) を侮蔑的に指す言葉です。

 「御用」 とは、幕府や朝廷など国家権力に雇われているといった意味がありますから、国や自治体によって設置・運営 されている国公立大学の教授や研究者、公的なプロジェクトなどに参画している学者だけを本来は指すのがふさわしい言葉です (江戸時代などはその意味で使われていた (後述します)。

 しかし現代にあっては、大学の公私に関わらず公権力におもねり、自らの利益のために学者としての良心に反して公権力の意向の代弁、政策の肯定や弁護を行う卑劣な学者の意味でのみ使われているといって良いでしょう。

鶏が先か卵が先か、難しい御用判定

 元々御用学者という言葉は、江戸時代に江戸幕府から雇われ、歴史の編纂や学術研究を担っていた学者の名称でした。 お上に認められた一流の学者であるという意味もありますが、戦国時代の 「武力で支配する時代」 が終わり、制度や仕組み、政権の正当性などで支配する時代となり、時の政権や権力者にとって都合の良い歴史や思想をまとめていたことに対し、批判的な ニュアンス も持っています。

 こうした 「時の政権に都合のよい歴史をつくる」 という営みは、徳川幕府だけでなく歴史上のあらゆる政権で大なり小なり見られることですし、それは日本以外の国でも同じですが、学者としての良心が 「学術的に正しい歴史」「事実の追求」 にあるのだとしたら、「時の政権に寄り添うことで名誉や金品を得る」 というのは、止むを得ない状況にあるとは云え、学者の道からは外れる行為となるのでしょう。

 ただし信念や事実関係を曲げて 「役人が白といったら黒でも白」 にしてしまうような御用学者なら 「学者にあるまじき不誠実さ」 だと簡単に批判もできますが、学者間で見解が大きく割れているような分野や、事実関係が不明確な分野において、一方の説を誠実に研究している学者が、その説で利益を得る立場の役人から抜擢され重用されるのを、「学者が悪い」 とは決めつけられないでしょう。 後にその説が誤りであったことがわかったからといって、後出しジャンケンで 「御用学者だった」「曲学阿世だ法匪鼠賊だ」 とレッテルを貼るのも気の毒です。

 世の中の人間すべてが聖人君子ならともかく、学者にも野心や欲はあるのでしょうし、最終的に自分の良心に従った研究結果の実現を目指しつつ、途中経過で一時的に権力に擦り寄るだけのケースもあるでしょう (研究にはお金が必要なのですから)。 権力者や役人、あるいは大企業などはそれを利用しようとの意図があるのですから、ある意味で学者と公権力の化かし合いの部分もあります。

 庶民にできることは、「国がいってるならそれが正しい」「偉い学者さんがいってるなら正しいはずだ」 などと過信せず、かといって全てが出来レースだ捏造だと背を向けず、様々な立場からの意見を総合して判断するのが大切なのでしょう。

 なお学者が君主や権力者に極めて強い影響力を持って、実質的に政治そのものを動かす場合もあります。 主君に仕えて学問を講義する侍講や各種献策を行う儒官などが側近として重用され、主君の意思決定を左右し政治の実権を握るケースなどですが、この場合も立場上は御用学者と呼ばれます。 しかし学者出身の者が君主や権力者の立場に就いた場合は、学者宰相、学者将軍のような呼ばれ方はするかもしれませんが、御用学者と呼ばれることはありません。

水俣病や外交・国防問題、環境、教育、原発…学者さんは大忙し?

2011年3月の福島原発事故関連では、原子力関係の学者によるいい加減なコメントなどが問題になり、「御用学者リスト」 などもネットに登場し批判された
2011年3月の福島原発事故関連では、原子力
関係の学者によるいい加減なコメントなどが
問題になり、「御用学者リスト」 なども
ネットに登場し批判された

 御用学者という言葉が頻繁に使われるのは、国が推進してきた政策が後に誤りであったことが発覚したり、それによって人や 環境 に大きな被害や事故、トラブル が生じた時でしょう。

 なかでも熊本県水俣湾を中心とした地域で発生した水俣病は、その原因となる物質について1956年 (昭和31年) 7月に熊本大学の研究班や厚生省食品衛生調査会などが有機水銀が原因だとする研究結果を発表したものの、反対の声も巻き起こり、学者間で激しい論争に発展。

 速やかな原因物質特定の妨げや、マスコミを通じた誤った世論誘導にしか使えないような な反論を述べた学者などは、「国や会社から金を貰っているのではないか」 との揶揄の対象となり、侮蔑的に御用学者と呼ばれることとなりました。

 こうした言葉の使われ方はその後も続きますが、なかでも大きく話題となったのは、2011年3月に起こった福島第一原発事故に対する、原子力関係の大学教授らのマスコミでのスタンスや コメント からくる批判でしょう。 結果的に事故直後に述べた意見の多くに誤りがあり、中には明確な虚偽とも思える 「嘘八百」 もありました。 また事故前の 「原発は何があっても絶対に大丈夫」 との意見なども、過去にさかのぼって検証され、厳しい批判に晒されることとなりました。

 さらに2020年に世界的な感染拡大を引き起こし、日本においても多数の感染被害が生じた新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) においても、専門家らが集う有識者会議のメンバーらに対して、困難な時期に大変な仕事をしてくれたと称賛の声があると同時に、感染対策に重点を置いた自粛政策による経済に関する立場の違いによる様々な批判もじています。

 なお 同人 の世界では、児童ポルノ法 を中心とした表現規制の問題で、警察や政権与党などの規制案を無批判に肯定するような学者を、侮蔑的に御用学者と呼ぶ場合があります。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2007年8月4日)
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