同人用語の基礎知識

魔改造/ 淫改造

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模型やフィギュアを作り変えてしまう 「魔改造」

 「魔改造」 とは、模型 (プラモデル) やフィギュアなどに極端な改造を加え、ほとんど別物のような状態にまで仕上げてしまう改造方法のことです。

 しばしばごく普通の、着衣状態の美少女フィギュアを 「裸状態」 にし、アダルトな 18禁 フィギュア、エロフィギュアにしてしまうことから 「淫改造」「裸 (ネイキッド) 改造」「エロ改造」 などとも呼ばれます (これらは初期の頃はそれぞれ別の 概念 でした/ 後述)。 こうしたフィギュア改造を行う人は、「魔改造師」「魔改造職人」 などと呼ばれます。

模型本来のディテールを無視、あるいは超越する 「魔改造」

 元々 ミリタリー (軍事用の兵器) の模型などで、キット売りされている戦車や軍艦、戦闘機などに特殊な改造を施すケースは昔から存在し、言葉こそ違っていたものの、初期の 「魔改造」 的な改造は、こうした工作をも含めて指していたようです。 例えば戦艦大和の菊水作戦時のキットを竣工直後の兵装にしてしまうとかがポピュラーですが、その後史実を無視した改造を行ったり、スケール (縮尺) を無視したパーツを組み合わせて改造を行う人などが現れました。

 子供のお遊びを超えた レベル で、それなりに経験や技術のある人が 「実物の再現」 という模型本来の目的から逸脱し 「実物が存在しないなりのリアリティの追及」 を始めたのを、まだ当時は 「魔改造」 との名称こそなかったものの、「禁断の改造」「邪道 な改造」 のような名称で表現することがありました。

「ガンプラ」 ブームと、「プラモ狂四郎」 により 「魔改造」 名称誕生

 その後、1980年7月の 「ガンプラ」 の発売をはさみ、講談社の雑誌 「コミックボンボン」 に連載された マンガ 「プラモ狂四郎」(1982年2月〜1986年11月/ やまと虹一/ クラフト団) において、ライバルとして立ちふさがる薩摩模型同人会の南郷快山による特殊な模型改造 (飛行機がロボットに変形する) を 「魔改造」 としてネーミング。

 これを実際に一般の軍用機などのスケールモデルとガンダムのプラモデル (ガンプラ) との合体で再現するものが現れ (プラモ狂四郎の 作者、やまと虹一さん自体、ガンプラ関係の漫画を発表しています)、これらが一体となって、古典的なスケールモデルの改造ではなく、版権もののプラモ (仮想ミリタリー) との合体、あるいは特殊な改造を 「魔改造」 と呼ぶようになりました。

 なお当初は美少女 キャラ の模型へのエッチな改造を魔改造と呼ぶことはあまりなかったのですが、前後して発売されたマンガキャラのプラモ (ルパン三世の峰不二子、カリオストロの城のクラリス・ド・カリオストロ、うる星やつらのラムちゃん、ミンキーモモのモモ、超音戦士ボーグマンのアニス・ファームなど、ガレージキットやフィギュアの登場前、もしくはその黎明期に登場したプラモデルキット) にちょっとした改造を加えることもありました。

 多くの場合は洋服部分を削ったり溶かしたりしながら裸にしたり、腕や足を切断して接着しなおし整形してエッチなポーズを取らせるなどの作品が登場し、おたく向け雑誌や模型雑誌、あるいはイベントのサークルスペースの飾りとして目にするケースが出てくるようになりました。

80年代から90年代にかけ、ガレージキットの大ブーム

 その後ガレージキット (GK) が大きく注目を集め、1984年には、ワンダーフェスティバル (ワンフェス) の前身となるイベントが、ゼネラルプロダクツ (現ガイナックス) 大阪2号店で開催。 同人誌コスプレ と並ぶ、「フィギュア」 というおたく文化の象徴のような文化が大きく発展しました。

綾波レイ フィギュア
エヴァのキャラ 「綾波レイ」
体のラインが出るプラグ
スーツ姿は 「魔改造」 向き

 その流れはそのまま、大ヒットした アニメ、「美少女戦士セーラームーン」(1992年3月7日〜1997年2月8日) から 「新世紀エヴァンゲリオン」(1995年10月4日〜1996年3月27日) にかけてつながり、空前の美少女フィギュアブームが始まります。

 とりわけ 「エヴァ」 は、登場キャラの 綾波レイ や 惣流・アスカ・ラングレー の人気と同時に、フィギュア造形的にも体に密着したプラグスーツが 「裸改造しやすい」 形状だったため、かなりの数が作られ、また広まったようです。

 また高価なガレージキットから、わずか数百円で同じものをいくつも手に入れることができる安価なカプセルフィギュア、プライズ系のフィギュアが大量に出回ったのもそれを後押ししました (この要素が大きい)。

 この種の低価格フィギュア (ガシャポン系のものなど) は昔からありましたが、「セーラームーン」 のHGシリーズなどをきっかけに劇的にレベルの向上が図られ、「大人の鑑賞」 に耐えられるものになっていました。 「魔改造」 は、モデルを潰すつもりで作る必要がありますが、1体数千円もする上に 限定品 など数も少ないガレージキットに比べ、一般小売店や専門店で1体数百円程度で買える大量生産されたプライズ系フィギュアは、まさにうってつけの 「素材」 でした。

インターネットの普及で、隠れファンが表に出たり、ファンが大増殖したり

 「魔改造」 の大きな転機となったのは、インターネット の普及と、Yahoo! オークションの登場でした。

 それ以前にも パソコン通信 の私的な会議室 (掲示板) などで、好事家が個人の 趣味 として細々と既存フィギュアの改造やフルスクラッチでの製作と情報交換などを行ってはいました (うちのサークルでも、1995年〜1996年頃からフィギュアやドールの改造版をサークルスペースに並べたり、仲間が 「ワンフェス」 に出品してました)。

 しかし誰でもすぐに見られる場所に簡単に 画像アップロード でき、また見る側もお金さえ出せば買える状態で画像が何枚も並べられたオークションサイトでの発表は衝撃的で、しかも結構な高額で次々に落札されるに及んで、ネット 界隈 で大きな話題に。

打撃系模型サイト 「裸族電網空間」
打撃系模型サイト 「裸族電網空間」

 2001年には 2ちゃんねる の模型板に、Yahoo! オークション スレ (スレッド) の派生の形で 「魔改造」メインのスレ、「みんなで御魔改造」 が立ち、参加者が作った 「魔改造」 フィギュアの写真などの発表が相次ぎました。

 その後、それらの画像類をアップロードするためのアップローダー、「裸族の作品倉庫」「魔改造アップローダ」 を統合する形で専用のホームページ (ウェブサイト) が立ち上がり (「裸族電網空間」/ 管理人/ 裸族/ さるぼぼ)、表向きのフィギュアブームと対を成す影の形で多くの ファン から支持され人気を得て行きました。

 この頃には、「魔改造」 と性的な改造、エッチな改造を施す 「淫改造」 との名称の上での区別化はほとんどなくなり、以降は 「魔改造」 という名称にひとまとめとなったようです。

2003年のリカヴィネブームで美少女フィギュアの 「魔改造」 大ブレイク

 一般に 「魔改造」 の名称が大きく広まったのは、海洋堂がフィギュア制作を行った 「リカヴィネ」(タカラ/ 全5種類/ カードつき) のブームが発端でした。 2003年7月30日に、専門店だけでなくコンビニなどでも食玩扱いで 315円で発売されたこのフィギュアは大ヒット (造形がファン好みで良いだけでなく、ありえない豪華な内容でした) となり、すぐさまこのフィギュアの 「魔改造」 がオークションに出品され高値で次々と落札される事態に。

 これに対し発売元のタカラが 「リカちゃんを性的に毀損するものだ」 として改造フィギュアの 頒布 やネットを使った 二次流通 に法的処置を通告。 新聞沙汰となり、一般のニュースにも大きく報道され、広く 「魔改造」 の名が知られることとなりました。

お見せできない部分?まで、リアルに魔改造されています!
レンタルショーケースの登場で、実店舗で実物の閲覧、購入も可能に

レンタルショーケース
レンタルショーケース

 前後して、秋葉原などのおたく系ショップに登場した 「レンタルショーケース」 の設置の拡大で、魔改造師が手塩に掛けた 「裸改造」 の完成品フィギュアを、陳列、販売することが可能に。

 「魔改造」 ファンや購入規模者らはガラス越しに実物をじっくり鑑賞することもでき、また多くが 200円から 500円程度までのプライズ系フィギュアを素材としているため、販価も 2,000円から 3,000円程度と手ごろで、普及に弾みがつきました。

 また同じ頃に 「エロポン」 と呼ばれる、エロいフィギュアも発売され (後にプライズ魔改造フィギュアをエロポンとも呼ぶようになっていますが)、こうしたフィギュア全体が盛り上がるきっかけともなりました。 さらにその前後にドラマ 「電車男」 が放映されるなどして 秋葉原おたく 界隈が活気付いている時期でもあり、ネット界隈でもよく目にする言葉となりました。

その後、無茶な改造、オリジナルをはるかに凌駕する超改造を 「魔改造」 と呼ぶように

 「魔改造」 は前後して、例えば本物の自衛隊がアメリカ軍機をライセンス生産した現実の戦闘機に独自 装備、改造を施して超高性能機としているのを 「魔改造」 と称したり、車のエンジンを載せ変えて (スワッピング) パワーアップした本物のチューニングカーを 「魔改造」 と呼ぶなど、模型ではなく実物の改変の時にもそのまま使うようになりました。

 模型ファンとミリタリーファン、自動車、バイクファンなどは人種的にかぶっているからなんでしょうが、ちょっと面白い言葉の逆輸入です。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2003年12月13日)
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