同人用語の基礎知識

2.5次元

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2次元と3次元の中間あたりで 2.5次元です

 「2.5次元」 とは、アニメ漫画ゲーム などの キャラクター である 「2次元キャラ」 と、声優や芸能人やタレント、スポーツ選手、あるいは自分の周りの人間など実在の人物である 3次元 との中間に位置するものの呼び名です。

 位置的に中間くらいという意味もありますが、「2次元と3次元の特徴を兼ね備えている」「2次元を3次元化した」「3次元を2次元化した」 といった意味もあります (同様の意味で、アニメの声を当てている声優さんそのものを 「2.5次元」 とする場合もあります)。

  2010年以降は、マンガやアニメを原作とするミュージカルや舞台、声優らが作品中で演じたキャラとシンクロした形で行うコンサートやライブを行うこと、そうした活動を行うタレントや声優、ユニット などをそう呼ぶ場合も増えています (後述します)。 また2020年代に入り、いわゆる画像生成AI による イラスト の作成が本格的に広がると、それまでは特殊な技能が必要だった実写風のイラスト (フォトリアル) が手軽に作れるようになりますが、このフォトリアルといかにもアニメやイラスト風のものとの中間のような作品 (フォトリアル寄りのイラスト) を2.5次元と呼ぶようにもなっています。

ナマモノと半ナマと 2.5次元

 ところで実在の人物 (タレントなど) を創作の対象とする 「同人」 を 生もの、その生もののタレントが出演する実写ドラマや映画など創作物を対象とする 「同人」 を 半ナマ などと呼びますが、この 「半ナマ」 と 「2.5次元」 は、近くて微妙に違う、独特な関係の言葉となっています。

 一概には云えませんが、「半ナマ」 の場合は女性同人 ファン腐女子 さん、など) がよく使い、「2.5次元」 の場合は男性同人ファンやアニメや漫画、ゲームのファン (おたく さん、など) が良く使う言葉となっています。 どちらも実写映画やドラマなどを対象とした二次創作、同人作品などで使われることもある言葉ですが、成り立ちもその後の意味の 拡散 もかなり異なっており、男女の対象とするタレント、キャラへの係わり合い方も特徴があり、違いを際立たせる面白い言葉となっています。

 なお数学の世界でいう自己相似とか等角螺旋とかフラクタルとかハウスドルフ次元とかとかミンコフスキー次元とかコッホ曲線とかコッホ雪片とかメンガーのスポンジとか、そういうのとはまったく関係ありませんw

2次元を3次元化するフィギュアという存在

綾波レイ 等身大フィギュア
等身大フィギュアだと、いかにも2.5次元
新世紀エヴァンゲリオンの綾波レイ
ただしフィギュアは 「3次元」 と
呼ぶことも

 「2.5次元」 の端的な例としては、アニメやゲームの2次元キャラクターを3次元化する 「フィギュア」(キャラクターガレージキット) の存在があげられます。

 元々アニメなどのキャラを 「2次元」、実在する人物などを 「3次元」 と呼んで区別したのは男性ファンが多く、またフィギュアやガレージキットも、プラモデルや模型の延長として男性ファンが圧倒的に多い世界でした。

 女性の文化と認識されるものにも 「着せ替えドール」 というキャラクターの立体造形物がありますし (男性で愛好家も非常に多い)、2次元を3次元化するという意味では同じような ニュアンス を持つ バーチャルフィギュアバーチャルアイドル (3Dの CG によるキャラ) もあります。 さらには人間が2次元キャラになりきる コスプレ の存在もあり、「2次元」「3次元」 という云いまわしはポピュラーなものではありましたが、こういった言葉使いの感覚は、やはり男性が多い世界からかと思います。

 またタレントや声優さんを対象とする同人の場合、多くの男性ファンは女性タレントや女性声優さんを愛好しますので、女性ファンによる実在人物の同人における やおい 表現などに比べ、圧倒的に同性愛やら 18禁 やらの表現が難しい (社会の見る目が極めて厳しい) という現実があります。

 主に男性が作っているであろう即物的な おかず としての アイコラ の存在もあり、同人漫画の世界でいわゆる 「ナマモノ」「芸能同人」 といった ジャンル が、男性側であまり発展しなかった点もあります (男性による女性アイドル系の同人サークルは膨大な数がありますが、女性による男性アイドル系の同人サークルとは、活動内容が重なる部分がありつつも、かなり違っています)。

昨今は 2.5次元 と 半ナマ の相乗りも盛んに

 ただし 「腐女子」 化する男性ファン (腐男子、腐兄) や、「おたく」 化する女性ファンが増え続けたことにより、時代を経るにつれ両者は接近してきています。 とりわけ ネット の普及による 掲示板 などのコミュニティが増えたことは、女性同人ファン、男性同人ファンの意見交換や、それぞれが持っている文化の衝突と融合とを活発化させています。 それ以前は、同人イベント などでもジャンル違いで 会場 の位置が違っていたり、そもそも別の日にセッティングされるなどして、意外なくらい接点や意思疎通の機会は少なかったものです。

 結果、あまりそれぞれの固有の文化や言葉にこだわらない人たちが 「半ナマ」 の意味で 「2.5次元」 を使ったり、その逆もあったりで、意味や定義もかなり重なってきています。 同じころにアニメやマンガ、ゲームを原作とする実写作品が激増したことも影響があるでしょう。

 ただし 「生」 が 「生身の人間」 という意味は当然あって、例えば 「コスプレ」 を 「2.5次元」「半ナマ」 という人はいくらかいても、「フィギュア」 を 「半ナマ」 とはまず呼びません。 ある意味、「○○次元」 は 「形状」「生もの」 は 「素材」 をあらわす記号のような扱いになっていますね。

 もっとも、実在タレントのフィギュア化 (例えばその手の話でよく名前のでる、「森高千里」 のフィギュア、「森高フィギュア」(1989年) とか) なんかは、かなり微妙なラインですが…(これは3次元から3次元ですしねぇ…この場合は 「半ナマ」 が一番しっくりくるような気がします)。 

舞台を中心に大手メディアを賑わす 「2.5次元」

 アニメやマンガ、ゲームなどの舞台化と云えば、子供向けの着ぐるみショーなどを除けば1974年から始まった宝塚歌劇の 「ベルサイユのばら」 が有名でしょう。 より 「おたく」 や 「腐女子」 に近いところで云えば、1991年の 「聖闘士星矢」、1993年の 「美少女戦士セーラームーン」、1997年の 「サクラ大戦」 などのミュージカルは忘れられない存在です。

綾波レイ 等身大フィギュア
ドームだけでのべ10万人以上を集めた 「ラブライブ!」
東京ドームライブ (2016年3月31日〜4月1日)

 こうした作品は2000年代に入り少しずつその数を増やしていきますが、2007年頃から増加のペースが上がり、2010年頃に一気に舞台化数が倍増する状況となっています。

 こうした作品群は 「2.5次元ミュージカル」 と呼ばれ、アニメやマンガを舞台化した作品群の振興を目指す一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会も2014年3月23日に発足。 大手芸能プロやアニメ・ゲーム制作会社、出版社、メディアなどが中心となって、盛んに 2.5次元という表現を使うようになりました。 2を略して 「.5」 と表記する場合もあります (多少ニュアンスもズレる)。

 またアイドルが活躍するアニメやゲームが人気となり、それらでキャラクターを演じている声優がキャラとシンクロする形 (楽曲はもちろん、衣装や振りつけの同期、コンテンツの 設定 やストーリー、発展と歩調を合わせる形でのリアルイベントの開催など) でのイベントや プロモーション も盛んに。

 中でも2000年代アイドル二大タイトルともいえる 「アイドルマスター」(THE IDOLM@STER/ 2005年〜)、「ラブライブ! School idol project」(2010年〜) の作品としての人気上昇とライブの発展も、メディアを中心に 2.5次元 と紹介されるケースが多くなっています。 こうした作品の話題は地上波テレビの芸能情報でも好意的に紹介され、一般にも2.5次元という 概念 や言葉が広がってきています。 それに伴い、アニメやマンガなどの実写ドラマ化や映画化なども、追って2.5次元と表現されるケースが増えています。

 とくにラブライブ! は劇場版のヒット、作品中楽曲のヒット、NHK紅白歌合戦への出場や作品中で触れられていたドーム (作品中ではアキバドーム、実際に開催されたのは東京ドーム) でのファイナルライブ、熱心なファン (ラブライバー) のインパクトなど、2015年にはある種の社会現象と云えるほどの盛り上がりを見せ大きな話題となりました。 ミュージカルの増加を含め、こうした大きなうねりが、2.5次元という言葉をある程度一般化した原動力でしょう。

舞台、とりわけミュージカルはすごい

 ところでアニメやマンガの実写ドラマ化や映画化は、おおむね叩かれる傾向が多いものですが (実際にひどい作品も多い)、ミュージカルや舞台化などでは、わりと好意的な意見が多いのは面白い傾向ですね。 筆者 はセーラームーンのミュージカル (セラミュ) を中心に1990年代からこの手のミュージカルを継続的にわりと観ていますが、ほとんどの作品で観客は原作のファンらしき人たちが占めていました (たまに人気アイドルやタレントなどが舞台に参加するとそのファンが流れて来ることもありますが、数は少ない印象です)。 で、おおむねそうした原作ファン、それも実際に観るまでは 「ミュージカルはなぁ…」 と敬遠していたような人が、観るとあっさり好きになったりします。

 独特のライブ感があったり、テレビや映画と違ってそれなりの費用がかかるチケットを購入して観に来るので熱心で寛容、よく訓練された 大人の観客が多い、舞台ではそれなりに実力のある歌手や若手俳優が演じるなどが違いとしてあるのでしょうが、何かと 原作レイプ とか 人質商法 などと批判されがちな実写ドラマや映画化、ここらに汚名を返上する何らかのヒントがあるのかもしれませんね。 まあ舞台ものやミュージカルは他の媒体と異なり、舞台や楽曲の配分といった明確な制約があるので、その部分が他の媒体に比べ割り引かれて見られるというのもあるのでしょうけれど。

 ちなみに筆者はその後、仕事がらみもあって 2.5次元ミュージカルの演者や制作スタッフなどと多少の親交を得る機会に恵まれましたが、筆者の観測範囲だけの話かも知れませんが、正直言ってみんな真面目で必死にやっている印象です。 原作に対する リスペクト もすごいし (普通に オタトークや 萌え語り が盛り上がる)、少なくとも 「企画ありきの演劇」「キワモノだ」 みたいな斜に構えたところは全くなかったです。 元々演劇の世界は厳しい世界ですし、そうした世界で生き残ってる人間が本気でやってるのなら、そりゃ面白くなるよねって感じました。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2000年7月2日)
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