同人用語の基礎知識

ディテール

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全体を見るか、細部にこだわるか、その両方か 「ディテール」

 「ディテール」(ディティール/ Detail) とは、全体に対する細かい部分、細部、細目、詳細といった意味の言葉です。 ビジネスや技術的な世界の話では、製品やサービス、建造物などの詳細図や計画・予定の詳細を指すこともあります。 対義語は 「アウトライン」 や全体などになります。

 おたく腐女子 に近いところで云えば、創作物における細かい 設定 やデザイン上の細部、細かいパーツを描写する精度や質感を指します。 「ディテールが優れている」「こだわりを感じる」 などは、作者 の創作に対する前向きな姿勢や職人的なこだわりを賞賛する ポジティブ な意味で使われることが多いでしょう。

 俗に 「デザインの神は細部に宿る」 などと云うように、あまり目が届かないような細かい部分まで手を抜かずしっかりとデザインすることが、結果的に全体のクオリティを大きく上げることになるとする考え方は根強いものがあります。 すぐに目に入る大きな部分に力を入れるのはある意味当然なので、それ以外の部分にこそ差が出てくる、細部にこだわる繊細さが全体を見る上でも大切だというわけですね。

 とくに細かい設定とか仕様にしっかりとした整合性や説得力があったり、緻密さや正確さがある仕事は、見ている人にとってはそれを発見する喜びもありますし、ある種の知的な興奮や爽快感を覚えるものでもあるでしょう。 例えば作中で キャラ が使う道具類が単に実物に忠実に描かれているだけでなく、使用による的確な汚れ (ウェザリング) 描写があれば、より強いリアリティやキャラの息吹を感じさせてもくれるでしょう。

 このあたりは 趣味 として作者個人の嗜好が採算度外視で注ぎ込まれる 同人 や作家性の極めて強いマニアックな作品と、一般大衆を対象とした 商業メジャー な作品とでは 費用対効果 の考え方なども違い、一概にどちらが正しいとも言えない部分があります。 細部は無限大にあるため、完璧主義者的にこだわりだしたらいつまで経っても完成しないという部分もあります。

完成度は、高まれば高まるほど次第に労力に見合わなくなる

 一般に何らかの質を高めるための努力は、100が最高だとすると50とかせいぜい80あたりまでは、比較的簡単に高められ、かつその効果も分かりやすくなるものです。 濡れ雑巾を絞る際、はじめのうちは簡単に水が絞れるのと同じです。 しかし90を超えたあたりになると改善すべき部分はほとんどがすでに改善され尽くされていて、次第に重箱の隅をつつくような細かい作業になって費用対効果も悪くなってしまいます。 乾いた雑巾をいくら絞っても水は出てこず、頑張って90を91や91.5にしたところで、その区別がつく人も少なくなってしまうでしょう。

 全体と細部をはっきりと分けて、どう頑張っても全体は70点だけれど、ごく一部のディテールだけとことん 病的 にこだわって、何となく辻褄を合わせるような方法もあります。 「作品は大したことがないが、ここだけはすごかった」 みたいな ニッチ な評価を最初から目指す訳ですね。 逆に作品全体の完成度やバランスを重視して、あえて細部を省略することが大切な場合だってあります。

 一つの作品内でディテールの粒度というか 解像度 が揃っていないのはとても気持ち悪く感じられたりもしますし、テーマ とはまるで関係がないどうでもよい細部が異常に優れていたとしても、「それが何なんだ」 になってしまうことはよくあります。 どれが優れているとかそうでないとかはともかく、様々な描き方や方向性があります。 とはいえ細部へのこだわりも狙ったのではなく結果的にそうなっただけで、単に全体と細部の優先順位やバランス配分が分からない人なだけの場合もありますが。

 同人作品で、作者の興味関心の中心であろうメカや女体や 制服 は緻密に描かれているけれど、興味がなさそうな作中の日用品や アイテム がデタラメだというのはとてもよくあることです。 これを 「作者の好みに忠実な魂の叫びのような作品」 と好意的に見るか、それとも単なる手抜きだと否定的に受け取るかは、受け取り側のどこを楽しむかの視線も含め、創作物が持つとても面白い部分でしょう。 もちろんここでも、自分の好きな部分を最初に描き始めてそれ以外の部分を後回しにしていたら、締め切り の関係でそれ以外の部分が時間切れになっただけの場合もあります。 これらが実物や写真と違い作者の内面が赤裸々な形となって現れる、創作物の魅力だとも云えます。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2012年4月9日/ 項目の再構成です)
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