転売禁止、オク禁、海賊版禁止、共有禁止…問題の多い二次流通
「二次流通」 とは、同人誌 や 同人ソフト などの創作物を、制作した 同人サークル や 作家 に無断で 転売 したり配布 (再配布) すること、それによって作品が世の中でグルグルと回ることです。
一般的にこれらの創作物、作品は、同人誌即売会 で 作者 が自ら 頒布 したり、通販 をしたり、同人専門の書店などで 書店委託 したり、同人ソフトのダウンロードサイトなどで販売したりします。 これらは制作者が自ら販売の可否を判断したり、有料の場合はその対価が入ったりします。 こうしたものは 「一次流通」 と呼びます。
「二次流通」 は、「一次流通」 もしくは 「二次流通」 で入手した第三者 (所有者) が、さらに別の人に販売したり配布することを指します。 一番分かりやすいのは、所有者が古書店に古本、中古として売って、その古書店がまた販売するなどですが、同人市場が広がったり ネット が普及するなどで、問題が大きくなったり深刻化したり、様々な トラブル の原因にもなっています。
限定本を高値転売したり、データを無料で配布したり…
問題となるケースでもっとも多いのは、人気同人サークルの 新刊 や 限定本 などを不正な手段 (サークルチケット の不正使用や購入列への割り込み、徹夜 などで購入) で手に入れ、高値で転売 (リセール) するケースでしょう。
これが蔓延すると、せっかく同人イベントで自分の サークルスペース に来てくれた ファン の手に渡りづらくなってしまいますし、サークルの預かり知らないところで金銭的なトラブルが起こるケースもあります。
かつてはこれら 「転売」 を一部のグレーな同人専門ショップなどが行っていましたが、ネットが普及し Yahoo! オークションやビッダーズ、楽天フリマなどネット上のオークションサイトが人気となると、数多くの素人、もしくはセミプロの 同人ゴロ や 転売屋 も暗躍。 これを嫌って一部の 大手サークル の側では オークション禁止 を宣言したり、イベント会場 で 1限 などの頒布制限などをかけるようにもなっています。
さらに頭の痛いのは、「WinMX」(ウィン エムエックス) や 「Winny」(ウィニー)、「Share」(シェア/ 洒落) などの ファイル共有ソフト (ファイル交換ソフト) でのスキャンデータの配布です。 一旦ネット上にデータとして流れるとこれを制限したり消すのはほぼ不可能で、制作者の手を離れ作品がいつまでもネット上で漂うこととなります。 著作権 の上では完全にアウトですが、取り締まるのは難しく、これが常態化すると、わざわざイベントに足を運んでお金を払って同人誌を買うのがバカらしいとの 雰囲気 を、一部の人に広めてしまうかも知れません。
ナマモノ同人誌がいつまでも市場をさまよう?
一方、「取扱い注意」 の傾向がきわめて強い実在人物の同人、いわゆる ナマモノ同人 の作品の二次流通も、頭の痛い問題でしょう。
作者本人や、ジャンルの約束事・ルールを理解している人たちの間では問題のないやり取りでも、それらを全く知らない、あるいは理解しようともしない人たちがお金さえ出せば簡単に手に入れることができるようになるのは、ジャンル全体に思いもしないトラブルを招く可能性があります。 せっかく J禁 や P禁 といった自主規制をしても、これでは台無しです (根本に、作者から頒布を受けたにもかかわらず、古書店なりオークションなりに流す読み手が一番悪いのだとしても)。
世に出した作品は、作者の手を必ず離れるという覚悟が必要?
ただ無料配布は論外としても、中古販売などについては、いったんイベント会場などで読み手側に 「有償」 で販売している以上、対価を支払って購入した 読者 が 「自分の所有物」 である同人誌をどう処分しようが、それを同人サークル側が事前・事後にあれこれ規制・指図するのは、なかなか難しいのではないかとも思います。
そもそも本や書籍類には 「古書」 という考え方がありますし、あれこれ指図したりお願いしても、それを徹底させるのは不可能でしょう。 転売も、モラルの点ではともかく、法的には制限するのは難しい状況です (チケットの転売については、ダフ屋行為として迷惑防止条例等で処罰される場合がありますが、これも境界線はあいまいです)。
同人 の世界には、色々な人がいます。 みんながみんな、自分たちのように志やモラルや危機意識を 共有 していれば良いのですが、中には 「金儲け」 の手段としか考えていない人もいますし、特定サークルに対する悪意の塊の人だっています (ナマモノ のサークルを憎む人が、そこで発行された同人誌をスキャンしてネット上にばら撒いたり、モチーフ となった本人や事務所に送りつけるなど)。
必要以上に委縮する必要はありませんが、作品や意見を世の中に出すということには、多かれ少なかれ不愉快な状況に巻き込まれたり、様々な責任とリスクが伴うというのは強く認識して活動するのが、大切なのかなとも思います。