大手の対義語で小手、そして 「ピコ手」
「ピコ」 とは、国際単位系 (SI単位) の用語のひとつ 「pico」(10-12/ 1兆分の1/ 0.000 000 000 001) のことで、しばしば 「ものすごく小さい」 ことをあらわす接頭辞としても一般に使われる言葉です。
同人 の世界においては、同人サークル のうち、少ししか 同人誌 を 頒布 できないサークルを、大手サークル や有名サークルなどの対極の存在として 「ピコ」(ピコサークル・ピコサー) と呼びます。 同人誌の 部数 (1タイトルあたりの刷り部数) が少ないだけでなく無名サークル・弱小サークルといった意味や、あるいは小部数発行が前提の コピー誌 (コピ本のコピの反対でピコ) が中心の同人サークルといった意味になります。
なお 「大手」 に対してわかり易い 「小手 (こて)」 と呼んだり、「ピコ」 に 「手」 をつけて 「ピコ手」(ぴこて)、「ピコ手サークル」、あるいは 「弱小サークル」「ナノピコ」「ドピコ」「ピコピコ」、同じく小さいなんて意味で使う 「プチ」「プッチプチ」、あるいは 「底辺」 などと呼んだりもします。
また仲の良いサークルに 差し入れ などをする際に、「サークルスペース が過疎ってる」「同人誌などの購入希望者がぜんぜん来ない」 というような意味で、「ピコってる」 といった派生した言い回しもあります。 さらに マイナージャンル を 「ピコジャンル」 などと呼ぶ場合もあります。 小さい、地味 だ、マイナーだ、無名だといった状況を幅広く表す、とても便利な言葉となっていますね。
サークル主催者が自称するケースの多い 「ピコ」
腐女子 「ドピコ ピコ手 PICO? …でピコって何!?」 |
ところでサークルの 「大手」 や 「ピコ」 の判断基準ですが、これといった明確な数的指標があるわけではありません。 とりわけ 「ピコ」 の場合、他人がよそのサークルを指して、「あいつはピコ」 なんて使うケースももちろんありますが、多くの場合は、「うちはピコだから」 みたいな、自認・自称する言葉となっていますね。
「大手」 の場合、同人誌購入希望者が殺到するため、混雑対応 として コミケ などの 同人イベント で特別な 配置 がされるなど、外から見て一目瞭然なわかりやすい基準もあります。 しかし 「ピコ」 の場合、あまり外からみてわかるような特徴がありません (というか、ごく一部の大手を除くと、どこも似たような規模だったりもします)。
当初は ネット の 掲示板 などで、1イベントの 頒布数、あるいは1タイトル 1,000部を超えるような同人誌を出しているサークルを 「大手」 とし、それ以下を 「小手」 とする分類がありましたが、そもそも 1,000部どころか、数十部程度しか出さないサークルが非常にたくさんあるので、大手、中手、小手 よりさらに小さいサークルとして 「ピコ」 が使われるようになり、うち 100部を超えないサークルをそう呼ぶようになっています。 しかし後には、「一番小さい」「とにかく小さい」 的な意味で使われる場合もあります。
そもそも同人サークルの大半が数十部から数百部程度の頒布数であり、また全体の9割が 赤字サークル だということもあり、「大手以外は全部ピコ」 みたいな認識でも、あながち遠くはないかなとも思います。 自虐的 な表現は敵を作りづらく親しみもありますから、ピコ手専用のノウハウの 共有 が計られたり、大手とはまた違った楽しみ方を追求している場合もあります。
「赤字サークル」 と 「ピコサークル」
ちなみに結構な数の同人誌を頒布しておきながら、堂々の赤字サークルも結構あります。 同人誌を豪華な装丁にしすぎて予算オーバーみたいなケースが多いようですが (この場合は 「ピコ」 にはなりませんが)、趣味 の世界なので、それもアリですかね。
筆者 のサークルがもろに 「ドピコ」 だからというわけでもないんですが、無名で小規模、気心の知れた仲間内だけで同人活動を行う 「ピコ」 や 「ピコ手」 には、それなりの気楽さ、楽しみもあるようです。 もっとも自省的に考えると、「うちはピコだ」 と開き直ると向上心が失せてぬるま湯生活になったりもしますし、人によっては知人がピコから卒業すると、ピコ時代そのままのピコ専用の用語や振る舞いなどに腹を立てるケースもあるなど、自分自身の レベルアップ の点でいえば、ちょっとトホホな状況なのかも知れませんが…。