同人用語の基礎知識

壁サークル/ 壁配置

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混雑対応が必要なことから、壁際に配置されるサークルです

 「壁サークル」(かべさーくる) とは、同人イベント が開催される 会場 で、サークルスペース配置 が会場建物の壁際になる 同人サークル のこと、もしくはそのサークルスペースのことを指す言葉です。 「壁配置サークル」「壁サー」「壁」、あるいは 「外周」 などとも呼びます。

 同人誌頒布数 (売り上げた 部数) が飛び抜けて多い同人サークルを一般に 大手サークル、あるいは超大手サークルなどと呼びますが、壁サークルは、これとほぼ同義の言葉となります。 世界最大の マンガアニメ の祭典、コミックマーケット にて使われるようになり、他の イベント などでも大手サークルの代名詞のような存在になっています。

 なお、コミケが 晴海 (東京国際見本市会場) で開催されていた頃、超大手サークルを 「A館」 に 隔離 していた時期があり、「A館サークル」 とか 「A館組」 などと呼ばれていた時期もあります。

長大な行列により通路が塞がれ会場内が混雑するのを防ぐために

 壁際に大手サークルの配置がされるケースが多いのは、1つにはこれらの同人サークルの同人誌を購入しようという 一般参加 の人たちが長い長い行列を作ることにより、その行列が会場内の通路をふさいでしまい、他の参加者らの身動きが取れなくなったり、他のサークルのスペースの前に行列が折り重なり迷惑を掛けてしまうなどの状態を防ぐためです。 壁際ならば、例えば会場の出入り口から行列を外に逃がすこともできますし、他のサークルのスペースからある程度離すことも可能になります。

壁サークルへの道は遠い…
壁サークルへの道は遠い…

 これらの対応は、混雑対応 (混対) と呼ばれ、これが転じて 「混対サークル」(壁サークルと同じく、大手サークルの代名詞) とか、「非常口サークル」 などとも呼ばれています。

 もうひとつの理由としては、机を並べて作る 「」(しま) に配置するのと違い、背面にサークルを配置しなくて済むので、膨大な数の同人誌の入った段ボール箱などをスペース背面に積み上げるなどが可能になる点が挙げられます。 1冊あたりの本の体積にもよりますが、数千冊もの同人誌は膨大な置きスペースが必要になりますから、通常の 「島」 では対応不可能なのですね。 また円滑な頒布を行うために、売り子 と呼ばれる頒布作業を手伝う人も複数人必要となりますから、それなりのスペースが必要なのは当然と云えます。

 なお 「壁サークル」 と一口にいっても、同人誌頒布数にはそれぞれかなりの違いがあり、例えばトップクラスの頒布数を誇るような超大手サークル (1日の頒布数が万単位クラス) を隣り合わせに配置すると、いくら壁といっても常軌を逸した混雑となってしまいます。 その場合は、比較的頒布数の少ないサークルを間に挟んで混雑を緩和するような配置となる場合があります。

 この場合には壁サークルでありながら、俗に クッション配置 とか緩衝材、谷配置 などといった呼び方をします。 これはその場所に配置されたサークル関係者がへりくだったり 自虐的 に呼ぶ場合もあれば、それ以外の人が侮蔑、罵倒の目的で使う場合もあります。

壁サークルの選定基準は?

 壁サークルの位置にどのサークルが配置されるのかは、イベント主催者側の判断となります。 通常は過去のイベントで購入希望者が殺到し、大量の同人誌を頒布した人気サークルや著名サークルが、その過去実績や次に持ち込む予定の冊数といった情報を元に考慮され決められます。 ただしこうした数値データ以外にも判断基準はあり、各 ジャンル ごとに経験豊富なスタッフがジャンル全体の傾向などを見ながら、「あのサークルは壁にしないと混雑するに違いない」 との総合的な検討を行い、それが反映する場合もあります。

 サークル参加の申し込みの時点で、同人誌の申告持ち込み数が少なかった場合には除外することもあります。 誰でも知っている人気サークルであっても、持ち込み冊数が例えば100冊程度なら、瞬時にさばけてしまい、長時間の混雑対応や行列対応をする必要がないからです。 一般的に男性向けジャンルに比べ女性向けジャンルは 頒布数 が全体的に少ない傾向があると思いますが、生まれたばかりのジャンルや作家の動向によって状況はまちまちであり、ここらの適切な割り振りの可否は、イベント担当者の知識やノウハウ、市場調査的な熱意がモノをいう部分もあります。

 2000年代に入ると、主に ネット で活動している オンライン 中心の作家やサークルのコミケ参加も増えています。 いわゆる オン専 (温泉) と呼ばれるような人たちです。 こうした人がコミケに初参加する場合、前回実績はないものの、ネットでの活動状況を見て配置が検討される場合もあります。 SNS などで膨大な フォロワー を持つ有名作家や人気サークルの場合、初参加でいきなり2,000とか3,000冊規模の持ち込みなどもあり、このあたりはどんな配置が最適なのか、イベント側担当者や作家・サークル側でも手探りの部分もあります。

 コミケや一部大型イベントの配置のあれこれについては、様々な苦労話や蓄積されたノウハウなど悲喜こもごもの面白い話が色々あります。 何が何でも壁になりたいといった虚栄心から水増しした嘘の実績を書いて申し込む迷惑なサークルもいますし、それぞれのイベントではこれといった明確な基準をあえて宣言していないこともあり、ここでこと細かくあれこれと書くことはしませんが、イベントの 中の人 も色々と大変なんだなぁという感じで認識しておくと良いかもしれません。

行列の先の方に並ぶための大変な苦労

 2000年代になり、同人誌を委託販売する同人専門の書店 (書店委託) も一般化し店舗数も増え、昔ほど人が殺到する必要はなくなったのですが (書店委託は販価が高めですが、1時間以上炎天下で並ぶよりは、300円くらい上乗せして書店で買うのが現実的でしょう)、コミケなどに参加する人が増え続け、また 「一刻も早く読みたい」 との ファン の欲求もあり、その列は年々伸びる傾向にあります。

 ジャンルによっても違いますが、友人らと手分けして 共同購入 などを行わないと、お目当ての 「壁サークル」 の本を手に入れるのは難しいかも知れません 。 もっとも逆に云うと、壁サークルの同人誌などは委託書店販売や 通販 などで済ませようと割り切ると、かなり時間を有効に使えます。 列の先頭付近を確保するために朝早くから並んだり (徹夜 は厳禁です)、男津波 の波頭となって会場内を駆け巡る必要もありません (これも禁止です)。

 まぁ妥協するのが難しい 「趣味 の世界」 のことなので何とも云えませんが、割り切るところは割り切って参加すると、かなり楽になると思います。 もちろん幾多の困難を踏み越えて望みの同人誌を手に入れるのも大きな達成感があり、まさしく趣味の醍醐味、楽しいものなのですが。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 1999年9月10日)
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