大手サークルに挟まれてもう…もうあたしゃ… 「クッション配置」
「クッション配置」 とは、同人イベント において 会場 に 同人サークル を 配置 する際、混み合うことが予想されるサークルをいくつも並べて配置すると混雑に拍車がかかるので、混むことがなさそうなサークルをクッションのようにして間に挟み、バランスよく並べることです。 単にクッションや緩衝材、あるいは 谷配置 と呼ぶこともあります。
同人誌 の 頒布数 が飛び抜けて多いサークルには、当然ながら 頒布 (購入) を受けるための長い長い 待機列 (行列) が生じます。 会場内の人の動き、動線を塞がないよう、待機列は邪魔にならない場所に逃さなければなりませんが、隣り合ったいくつものサークルいずれにも長い列が生じた場合、列を左右どちらにも逃がすことができず、現場 が混乱してしまいます。
そこで、頒布数が多く混雑すると見込まれるサークル (大手サークル) の隣に、頒布数が比較的少ない空いたサークル (中手 や 小手) を並べて、バランスを取るようにします。
壁サークルの全てが超大手という訳では…時代とともに壁も変わる
こうした配置方法は、サークルスペース の場所を決める際にはどこであれ多少なりとも配慮はされるもので、大手サークルがひしめく 壁配置 やそれに近い位置 (偽壁) で行われるのはもちろん、長い待機列が生じる可能性があまりないであろう一般のサークルが配置される中間部の 島 などでも、それなりに考慮されたり必要に応じて行われています。
壁サークルというと、コミックマーケット (コミケ) などでは大手サークル、超大手サークルの代名詞のようになっていますが、こうしたクッション、緩衝材として配置されているサークルもあり (もちろん壁に配置されている時点で、ある程度以上の規模のサークルなのは間違いないのですが)、有名な超大手サークルに挟まれた場所に配置されたサークルの関係者、中の人 が、自虐的 に 「うちはしょせん、クッションですから…」 などとぼやいたりもします。
ただしこれは単なる被害妄想や、壁配置昇進? の照れ隠しとして、「クッション要員だ」 などと謙遜して話す場合もあったりしますから、一概には云えませんが。
なお時代を経るごとにサークルの配置方法も変化し、現在は混乱が予想されるサークルは独立したいくつかの小さな塊にして分散配置するようにもなっています。 この場合は壁や島にクッションの必要はなく、配置されることもありません。 どう混雑を緩和・解決 (あるいは適切な行列さばきや誘導) をするかは大規模同人イベントの宿命みたいな部分もありますから、近年はかなり改善・洗練され、少なくとも会場内に行列が続いたり、あからさまなクッション配置が設けられるような状況はなくなっています。 まぁ会場の外には相変わらずつづら折の長い長い行列があるんですけどね…。
ちなみにクッション、座布団と云えば…
ところでクッションとは、もっぱら欧米で使われている弾力性がある布製のインテリア小物、日用品を指します。 日本では座布団などが、その代表でしょう。 クッションも座布団も、まだ綿やスポンジなどが庶民の手に届かない時代、時の権力者や富裕層のみが使うことを許された高級品でしたが、それが転じて 「権力の象徴」「権力の地位の象徴」 としても扱われるようになっていました。
日本においては支配階級のみが使用を許されたり (例えば家臣は板の間や畳に直座りで、主君や大名のみが高座で座布団を使用する)、高僧などが読経の際に用いる座布団などが 「権力や権威、徳の象徴」 として扱われています。 こうしたものには華美な装飾が施され、後には人間以外の物品 (茶碗や各種の仏具、絵画 など) にも、緩衝材としてではなく奉る意味でも使われるようになっています。
長大な行列の谷間に挟まれるクッション配置は、そこに設置された人には少々辛いものでしょうが、こうしたクッションや座布団の歴史を振り返ってみるのも、ちょっとした慰めになるかも知れません。 ならないかも知れません。 ならないですね。