同人用語の基礎知識

ロマン

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役に立たなくても、おたくにはこれが必要…! 「ロマン」

 「ロマン」 とは、おたく の世界では、文化・歴史用語としてのロマンが持つ本来の意味 (後述します) を一部踏襲しつつもやや離れ、「合理的でも現実的でもないが自らの信念や信条に従って生きる」「効率ではなく趣味や好き嫌いを優先する」「それをわかりやすく提示する」「他者の異なるそれも一つの価値として肯定する」 ような意味でよく使われます。

 例えばどう考えても絶対に勝てない戦いに男の意地や名誉をかけて挑むことを 「男のロマン」 と云ったり、アニメ で音が伝わらないはずの宇宙空間で爆発音がするとか、巨大ロボットが物理法則を無視した動きをする、ヒロイン があまりに男に都合が良い考え方や行動を取るなどの ファンタジー な描写も、「それがロマンだから」 で解決することができます。

 これは苦しい言い逃れや 詭弁 のようにも見えますが 「創作物に合理性や過度のリアリティを求めても仕方がない」「派手な爆発音がしたりかっこよく動く方がいいじゃないか」「それが好きなんだから仕方がない」「野暮なことを云うな」 という宣言だとも云えます。 別の云い方をすると 「普遍的・絶対的な 正義 や価値など存在せず、正解は人によって違う」 となり、これはある意味で日本人的な物事をあいまいにする感性にも合致するものかもしれません。

 なおロマンチックな人をロマンティスト、その対義語は一般にリアリストと呼びますが、おたく的な文脈の対の 概念 は、融通が利かず人の心の機微や風雅を理解しない 「野暮天」 あたりが近いのかもしれません。 とくに趣味の世界に生きる おたく にとっては、これは重要なポイントでしょう。 そもそもが趣味なんてものは無駄なものなのですから、それを愛する以上、あまり効率ばかりを求めすぎても仕方がないことなのでしょう。

「ロマン枠」「ロマン武器」…だって好きなんだから仕方がない

 おたく同士の日常会話でも様々な おた活 の場でロマンという言葉は利用されます。 例えば ゲーム で、実用性はほぼ皆無なのに見た目や 絵アド だけに能力を 全振り した キャラ とか、ドレスアップ にしか使えないような武器・防具といった アイテム を 「趣味枠」 や 「趣味武器」 の意味で 「ロマン枠」「ロマン武器」 と表現するなどです。 歴史シミュレーションや ミリタリー 関係のゲームなどはその傾向が顕著で、あえてゲーム内の最適解である実用性のあるキャラや 装備 を使わず、史実に則ったものや 未完補正 のある大戦末期の試作機などを使うこだわり プレイヤー も多かったりします。

 これらはゲームの攻略や効率という点で考えればほとんど意味のないキャラや武器、こだわりですが、それが好きで使いたいならそれがその人のロマンだとして周囲も認める傾向があります。 誰にだって自分にとってのロマンがあるので、だったらお互いにそれを尊重しようということなのですね。 ロマンや趣味のほか、雰囲気 やムード、香りを楽しむためのものとして、フレーバーとかフレーバー装備と呼ぶこともあります。

 もちろん ガチ勢 で効率重視のプレイをしている人には疎んじられたりすることもありますが、そもそもゲーム自体が楽しみでやるものなので、使いたいキャラや武器が使えなくてはプレイする意味がないというプレイヤー (しばしば エンジョイ勢) がいてもおかしくはないでしょう。 これは単にゲームプレイに対するその人のスタイルや姿勢の話なので、どちらが正しいかどうかとは無関係な話です。 尊重できないなら別々にプレイするか、同じ趣味のもの同士で集まってプレイすれば良いだけです。 もっとも、実用性のないはずのロマン武器をある種の 「縛り」 として使い続け、通常では考えられない発想や技術、粘りで、通常プレイですら難しい部分を突破するようなロマン・縛りプレイのガチ勢もいるので、ゲームの世界は奥が深いです。

何でも 「ロマン」 で押し通すわけにもいかないけれど…

 一方、マンガ を描いたり、SSラノベ などを書く場合、どのあたりにリアリティラインを設けるかは難しい問題です。 架空世界における設定バランス などもそうですが、いくらロマンだと云っても、あまりに物理法則や歴史考証を無視したり、if に if を重ねるようなご都合主義すぎる 設定 や描写の作品では、感情移入を妨げられることもあります。 リアルとロマンをどう折り合いをつけて 読者騙す のかに、作家 の腕の見せ所があるのかも知れません。

「ロマン」 本来の意味は…?

 本来の 「ロマン」 とは、18世紀末から19世紀前半にかけて主にヨーロッパで起こった精神・文化運動 「ロマン主義」 と、そこでの価値観、創作物などの テーマ や表現方法などを網羅的に表す言葉です。 それまでのキリスト教的な道徳・均整・調和・秩序・戒律・合理性を重んじる古典主義・教条主義と決別し、人間の個性や感情、主観、欲望を尊重し、恋愛や空想、冒険、甘美、神秘主義、民族主義、理想主義、異国・中世への憧憬などをドラマチックに描く文学や 絵画、音楽、演劇などを生む原動力となりました。 さらには人々の意識や政治にまで影響が及ぶ、歴史的に見てもたいへん大きなものでした。

 とくにフランスで書かれた恋愛をテーマとした長編小説を意味する言葉 「Roman」 から派生したロマンや、そこから生まれたロマンス、ロマンティックといった言葉や概念、表現 テーマ やその手法はヨーロッパの外にも広く波及し、日本でも明治中期から末期にかけて先進的な西洋の文化を取り入れる和洋折衷などと呼応しながら、文化・芸術関係で大きな影響を与えました。 とくに個人の解放や自由といった考え方が、時代とマッチしていたこともあります。

 その後ヨーロッパと同様に日本でも自然主義 (超越者や美化を否定し、空想ではなくありのままの赤裸々な真実を描く) や写実主義へと運動の流れが反転しますが、ロマン主義を踏まえた大正時代の文化のありようを後に大正浪漫と呼ぶなど、言葉としても定着することになりました。 なおロマンを漢字で浪漫と書きますが、これは夏目漱石が当て字として作ったとされています。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2004年11月24日)
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