同人用語の基礎知識

詭弁/ 詭弁のガイドライン

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議論に勝つ、せめて負けないために弄する 「詭弁」

 「詭弁」 とは、何らかの議論や論争において自分に有利な流れや結論へと導くために、自身の意見にもっともらしい理屈をつけて正しいことのように見せかけたり、相手の意見を捻じ曲げたり否定するなどして誘導し、相手やその場にいる人間を言いくるめる不誠実な話術・テクニックのことです。

 基本的には自分の意見を押し通して議論や論争に打ち勝つためのあれこれとなりますが、自説を補強するためのもの、相手の意見を無効化するもの、自説が危うくなった際に話をそらすものなど方法は多岐にわたります。 古代ギリシャ時代の弁論をはじめ、営々と人々の間で使われ続け、それは現代にあっても政治や外交、ビジネスの世界から子供同士の些細な口喧嘩に至るまで、あらゆるコミュニケーションの場で見かけるものと云って良いでしょう。

 ネット掲示板 などでは、単なる交流や情報交換だけでなく論争や バトル はつきものです。 折に触れて パソ通 の時代から詭弁のあれこれが話題になっていますが、とりわけ レス によるバトル (レスバ) が日常茶飯事となる インターネット 時代の匿名系の掲示板、例えば あめぞうや 2ちゃんねる では、良くも悪くも周囲からの単なる 同意 獲得ゲームたる不毛な議論に勝つための詭弁術に磨きがかけられています。 2002年8月8日には 「詭弁のガイドライン」 スレッド も2ちゃんねるに立てられてまとめられ、コピペ として広がるようになっています。

ディベートや弁論術と詭弁

 なお似たようなものにディベート術や弁論術 (討論に勝つための技術) などがあります。 これらと詭弁は、参加者からより多くの同意を獲得して議論に勝つ、相手を負かすという目的がおおむね同じであり、その手法も一部は同じで、本来の意味はともかく全体としても限りなく近いものです。 いわゆるレトリック (巧みな言葉で効果的な表現をすること、美辞・修辞) なども、現在は印象操作を狙う詭弁の一種だとする考え方もあります。 相手や周囲の レベル があまりに低ければ、あやふやな言葉と質問に質問で返すような ヤクザ論法 や、話を遮って大声で一方的に喚き散らすのだって立派? な弁論術や詭弁でしょう。

 お互いが相手に勝つことだけを目的に詭弁を弄していては、話し合いも深まらず、そもそも議論自体が無駄になってしまいます。 それでは言葉や文字を使っていてもまともな意思疎通や課題の解決には役に立たず、口から出る単なる空気の音、文字や記号がデタラメに並んでいるだけの紙や画面の汚れと同じようなものです。 誠実さは話し合いの最低条件ですが、何をもって誠実・不誠実を判定するのかも人それぞれ、立場それぞれですし、コミュニケーションにおける避けがたい バグ の一種なのかも知れません。

詭弁や屁理屈は自らの身も滅ぼす

 自己保身や強弁のための詭弁や屁理屈による正当化は、それを発した本人にも甚大な被害を与えます。 単に見苦しいとか不誠実な人間だと周囲から思われるといった外部評価に対する悪影響だけではなく、本人自身の思考方法にも直接影響を与える本質的な部分においてでもです。

 詭弁や屁理屈は 「嘘」 と似ています。 一度嘘をつくと、その嘘がバレないようにまた別の嘘をつく必要が生じて際限がなくなってしまいますが、詭弁や屁理屈も一度口にするとそれを正当化するために別の詭弁や屁理屈が必要になってしまいます。 詭弁を詭弁で塗り固めているうちに自分自身でもだんだんそれらを信じ始め、どんどん自縄自縛に陥ります。 そのうち無理が出て過去の自分の意見とまるで整合しない意見がつい出てしまい、矛盾だ ダブスタ だと 突っ込まれ たり当の本人が 「え? 何でこんなこと言ったの?」 とショックを受けたりして、結局は自滅するハメになります。 議論における誠実さは、透明性などと同様に倫理的に優れているだけでなく、時として自分自身を守ってくれる最強の振る舞いでもあるのでしょう。

 無知や勘違い、思い込みなどによって、個々人が内面に持つ真実が事実とは異なる形で歪むこともあります。 しかし歪んでようが何だろうが、本人が信じている真実に忠実・誠実であれば、その場限りの詭弁や嘘で右往左往することもなくなります。 詭弁は本人に混乱をもたらすだけでなく、歪みや間違いを撤回・修正する機会を奪ってしまいます。 それで議論に勝ったとして、得られるのは惨めな勝利感だけです。 これは他ならぬ本人にとってもっとも手痛い損失でしょう。

 人間自体が矛盾に満ちた存在なので、矛盾やダブスタ、えこひいきは誰にでも生じるものです。 しかしそれがあまりに過ぎている人の話はおよそ詭弁まみれなものであり、傾聴に値するものとは見なされないでしょう。 話をしても信頼されない、耳を貸してももらえない状況はとても辛いものです。 そうならないためにも、詭弁は行わないと強く心がけるのは大切です。 そう心がけていてもつい出てしまうのが詭弁ですが、身を滅ぼすほどの取り返しのつかない詭弁だけは、何とか避けられるかも知れません。

「詭弁のガイドライン」 コピペ

真っ当な意見と見せかけ、実は詭弁で論点をはぐらかす輩が多々おります。
皆様も以下の「詭弁の特徴15条」を覚え、そういう輩を排除しましょう。

例:「犬ははたして哺乳類か」という議論をしている場合、あなたが
「犬は哺乳類としての条件を満たしている」と言ったのに対して否定論者が…

 1:事実に対して仮定を持ち出す
  「犬は子供を産むが、もし卵を生む犬がいたらどうだろうか?」
 2:ごくまれな反例をとりあげる
  「だが、時として尻尾が2本ある犬が生まれることもある」
 3:自分に有利な将来像を予想する
  「何年か後、犬に羽が生えないという保証は誰にもできない」
 4:主観で決め付ける
  「犬自身が哺乳類であることを望むわけがない」
 5:資料を示さず自論が支持されていると思わせる
  「世界では、犬は哺乳類ではないという見方が一般的だ」
 6:一見関係ありそうで関係ない話を始める
  「ところで、カモノハシが卵を産むのは知っているか?」
 7:陰謀であると力説する
  「それは、犬を哺乳類と認めると都合の良いアメリカが画策した陰謀だ」
 8:知能障害を起こす
  「何、犬ごときに マジ になってやんの、バーカバーカ」
 9:自分の見解を述べずに人格批判をする
  「犬が哺乳類なんて言う奴は、社会に出てない証拠。現実をみてみろよ」
 10:ありえない解決策を図る
  「結局、犬が卵を産めるようになれば良いって事だよね」
 11:レッテル貼りをする
  「犬が哺乳類だなんて過去の 概念 にしがみつく右翼はイタイね」
 12:決着した話を経緯を無視して蒸し返す
  「ところで、犬がどうやったら哺乳類の条件をみたすんだ?」
 13:勝利宣言をする
  「犬が哺乳類だという論はすでに何年も前に論破されてる事なのだが」
 14:細かい部分のミスを指摘し相手を無知と認識させる
  「犬って言っても大型犬から小型犬までいる。もっと勉強しろよ」
 15:新しい概念が全て正しいのだとミスリードする
  「犬が哺乳類ではないと認めない限り生物学に進歩はない」

「詭弁のガイドライン」 の派生項目

◆派生例

 16:さも当然のように未決着事項を前提にする。
  「犬の鼻はぬれているのに哺乳類と言えるのか?」
 17:論点をすりかえる。
  「犬が哺乳類だなんて倫理的に許されるのか?」
 18:事実の一部のみを抜き出してミスリードする。
  「哺乳類ではない生物として、例えば爬虫類の蜥蜴がいるが、蜥蜴も犬も同じ“4本足の生物”である」
 19:相手に譲歩したと見せかけながら、自分の意見を押しつける。
  「確かに犬は哺乳類だが、明らかに哺乳類ではない犬も存在する事に間違いはない。」
 20:条件の包含関係を間違える
  「犬がおまえと同じ哺乳類というのなら、おまえは4本足で歩き、道端で交尾していて水をかけられたりするのだなw。」
 21:全てか無かで途中を認めないか、あえて無視する。
  「全ての犬が哺乳類としての条件を満たしているか検証するのは不可能だ(だから、哺乳類としての条件を満たしているとはいえない)」
 22:勝手に極論化して、結論の正当性に疑問を呈する。
  「確かに犬は哺乳類と言えるかもしれない、しかしだからといって哺乳類としての条件を全て満たしているというのは早計に過ぎないか。」
 23:自分で話をずらしておいて、「話をずらすな」と相手を批難する。
  「現在問題なのは広義の哺乳類の定義であり、一例としての犬が哺乳類といえるかどうかは問題ではない。話をそらすな。」
 24:ネタと決めつけて議論を停止させる。
  「犬を哺乳類と言い張るなんて、大した釣り師だねw」
 25:嘲笑で優位に立った様に振舞う
  「犬が哺乳類なんて、固定観念にしがみ付く奴には理解できないのだろうな。」
 26:反論の代わりに詭弁ということにしてすます
  「それは詭弁です。いいから詭弁なんです。」

詭弁を弄すると議論も深まらず、話し合いが無意味になる

 詭弁という言葉や代表的な詭弁術である論点のすり替え、レッテル貼りなどは日常生活でも普通に使われる日本語でもあり、実際にこうした方法を使う人も少なくないため、「いるいるこんなやつ」 といった感じで 「詭弁のガイドライン」 コピペは大流行することになりました。

 実際非常によくできたコピペ (とその派生) であり、類型化された詭弁の手法をコミカルにまとめた単なる ネタ として面白いだけでなく、「人と話し合いをする際の知恵」「相手の話し方や態度から説の信憑性を推し量る実践的なノウハウ」 が詰まっているとさえ云えるでしょう。

 ネットでのレスバや競技・娯楽としての弁論やディベート、ネタ議論 (例えばきのこたけのこ論争とか) での話ならともかく、実際に物事を決める議論で詭弁使いがいると議論も深まらずせっかくの話し合いが無意味になってしまいます。 相手が意図的な詭弁に走ってごまかそうとしているのを初期段階で察知するのは、その後の話し合いを建設的な方向へと軌道修正するためには有効でしょう。

 一方で、他者の論をあれこれ考えるだけでなく、自分自身がこうした不誠実な論で話をしていないか、自らを省みるものとしてもとても有用なものでしょう。 根っからの詭弁家とか病的な嘘つき魔という人はいます。 ほとんどの人はそういう人たちと自分は違うと思うし、それは実際そうなのですが、自分は正直な人間のつもりでいても、その場の状況や自分の立場などによってつい詭弁や嘘が出る人は多いでしょう。 それは自己保身といった利己的な理由だけでなく、同情すべき理由がちゃんとあることもあります。

 何かを決める時、他者の意見をあれこれ精査するのと同じくらい、自分の語っていることを自己検証するのは、とても有意義なことです。 自分の意見があまりに伝わらない場合、同意できない相手の意見もこちらに正しく見えていない可能性があります (よくよく話したら双方ともに同じことを云っていた…なんてのは、とてもよくある話です)。

 議論が白熱するとつい 脊髄反射レス のように早口で相手の話を都度否定したり、売り言葉に買い言葉で表現がエスカレートしやすいものです。 ネットでのそれなら頭を冷やすために1日待ってみる、リアルな話し合いなら休憩を挟むなり、いったんは相手の主張に沿った形で論を進めて見るなど、クールダウンする方法を手放さないようにしたいものです。 逆にそうした方法を奪ってくる相手には十分な警戒が必要でしょう。 それは娯楽としての詭弁合戦の果たし状としばしば同じものだからです。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2006年10月6日)
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