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認知の歪み

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何より自分自身が辛くなる 「認知の歪み」

 「認知の歪み」 とは、何らかの物事や事象に対する捉え方 (認知) が、受け取った人の考え方のクセや偏った知識、思い込みなどによって極端に歪んでしまうこと、それによって物事が正しく、あるいは客観的に見ることができなくなって様々な問題が生じてしまうことです。 心理学的には、誇張的で非合理的な思考パターンのひとつだとされます。

 もちろん認知自体はその人の持つ知識や考え方、知的能力や感受性によってそれぞれですから、多少他人と違っていてもそれは個性の範囲であって、歪みとまではいえません。 例えば友人に メール を送ってすぐに返信がなかったとして、「忙しいのかな」 と思う人もいれば、「すぐに返信しないとは失礼なやつだ」「無視された、軽んじられている」 と不快に感じたり強い怒りを覚える人だっているでしょう。

 心が弱っていたり落ち込んでいる時は、相手がしゃべってもいないし思ってもいないことを 「そうに違いない」 と ネガティブ な方向へ勝手に決めつけて苦しんだり、相手の顔色で一喜一憂するなどは誰でも身に覚えのあるものでしょう。 遠くで笑い声がしただけで、「自分が笑われているのではないか」 と悩んだり、しまいには見慣れない鳥が飛んでいる、いつも乗っている電車が遅れただけで、そこに何らかの隠れたメッセージや誰かの悪意を感じ取ってしまう人もいます。

 感じ方は人それぞれ、状況だって千差万別なのですから、もしかしたらそれが正しいこともありますし、そもそも万人が支持する 「正しい認知」「普遍的な認知」 がどの程度存在するのかも不明です。 しかしその認知があまりに常識や現実と乖離していたり、何より本人がそれに振り回されて生き辛さに苦しんだり、周囲に迷惑や危害を及ぼすようでは困ります。 単なる偶然にいちいち特別な意味や誰かの意図、あるいは悪意を感じたり、それによって追い詰められて感情が爆発し、自己正当化したいがあまりに何の罪もない相手を 他責思考 で憎んだり非難したり攻撃するのでは、みんなが 不幸 になってしまいます。

 こうした歪みはネガティブ方向とは逆に作用することもあります。 それがプラスに働くこともありますが、極端に自分に都合よく物事を考え、結果的に自分や他人に被害を及ぼすこともあります。 例えば 痴漢 などの性犯罪者が、被害者の抵抗が恐怖のあまり小さかったのを、「強く拒まれなかった」「受入れてくれた」「むしろ誘ってきた」 などとあり得ない 解釈 をして自己正当化するようなパターンです。 痴漢だのストーカーだのセクハラなどは、客観的に考えたら相手が望むわけがない行為なのに、常識的・合理的な判断ができずに相手から望まれているかのように感じられると、被害者だけでなく本人も犯罪者として人生を失う不幸に見舞われてしまうでしょう。

自分が強く否定されるとますます認知が歪んでくる

 認知の歪み自体は誰にでも起こりうるものですし、心理的・精神的な部分だけでなく、単なる無知や 環境 によって生じることもあります。 過去に一度覚えたことをいつまでも正しいと思い込んで状況が変わったことに気づかず他者とのコミュニケーションが阻害されたり、親や周囲の人間に影響されてその価値観から逃れられずに誤った考えを貫き通して摩擦を起こす場合もあります。 これらは新しい情報なり価値観なりを改めて身に着けたり、生活環境が変わって視野が広がれば、ある程度は自然に解決できるものでしょう。

 しかし一度染みついたものは、それが自身に災いをもたらすものだと本人が分かっていたとしても、中々抜けきらないものです。 またこうした歪みに苦しむ人を狙って、やれ自己啓発セミナーだ新興宗教だ 陰謀論 だを刷り込んでお金儲けをするような人もいます。 何らかの目的やひとつの 党派性 で凝り固まった環境にいると、自分の認知の歪みを肯定するような言説に触れがちになりますし、同質性の高い場にいると エコーチェンバー によりますます歪みが強化されることにもなります。 自分の認知が否定されればされるほど、より強固に歪んだ認知が正しいものだと感じられてしまったりもします。

 こうした歪みやネガティブ・マイナス思考は努力でどうにかできるものでもないので、日々悩み落ち込むほどの レベル のそれを強く感じたなら、不幸な事件や事故を起こす前に、なるべく早く専門の医療機関などに相談するのが良いでしょう。

 なお精神科医のデビッド・D・バーンズが1989年に著した 「フィーリング・グッド・ハンドブック」 では、認知の歪みについて以下の10つのパターンを挙げています。 どれもこれも程度の違いこそあれ、誰でもが少なからず持っているものばかりです。

フィーリング・グッド・ハンドブックによる認知の歪み10つのパターン

  1. ・全か無か思考 (all-or-nothing thinking)
  2. ・過度な一般化 (overgeneralization)
  3. ・心のフィルター (mental filter)
  4. ・マイナス思考 (disqualifying the positive)
  5. ・飛躍した結論 (jumping to conclusion)
  6. ・拡大解釈と過小評価 (magnification and minimization)
  7. ・感情的な決めつけ (emotional reasoning)
  8. ・すべき思考 (should thinking)
  9. ・レッテル貼り (labeling and mislabeling)
  10. ・個人化・自己避難 (personalization)
 人間の心とか健全な認知機能などは、ちょっとした寝不足や悩みであっけなく崩れ去るものです。 危ないものには近寄らない、「自分だけは大丈夫だ」 などと慢心しないことが何より大切なのでしょう。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2012年8月10日)
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