思考を省略すると得られるのは時短か偏見か 「ヒューリスティック」
「ヒューリスティック」(heuristic) とは、人の思考や 認知 において、それまでの経験や観察・学習の積み重ねで得た知識、あるいはそれらによる先入観・固定観念などを元に、直感的にある程度正解に近い答えを素早く導き出す思考法や問題解決の手法のことです。 一般によく使われる言葉では経験則となりますが、常識や世間知、俗信や、ルール・オブ・サム (Rule of thumb)、大まかなコツや目安などもあります。 「いつもだいたいそうなるよね」「だからこうしよう」 みたいな感覚ですね。
語源はギリシャ語の 「見つけていこうとする」 という言葉の意味に由来します。 心理学や行動経済学では、過去の知識や経験を用いて思考を ショートカット しようとする心理的メカニズムや、無意識の思い込みによって考え方や判断が一方向に偏ってしまう状態 (バイアス や 認知の歪み) を指すこともあります。
例えば空に黒っぽい雲がたくさん出て日が陰れば雨が降りそうだと感じて外出時に傘を持って行こうと判断するでしょうし、いつも渋滞している道を車で通るなら、時間に余裕を持って移動しようと考えるでしょう。 人は目の前の状況に合わせて考えたり行動するだけでなく、過去の類似の状況を思い出したり身に着けた基準を元に、ほとんど無意識に近い感覚で今後の判断を自然に行ったりします。 すべての選択肢をその都度しらみつぶしに調べたり深く考えたりせず、「あたり」 をつけて効率よく答えを出そうとするのですね。 これは 認知負荷 の軽減のためでもあるし、迅速さが求められる急ぎの仕事や緊急時の行動などの時短のためでもあります。 過去の経験やノウハウを持つ ベテラン や経験者の知見が力を発揮する部分です。
一方で、過去の経験や知識が思考を歪めて本人も意識しないままに誤った判断を導いてしまうこともあります。 過去の成功体験が忘れられずに現在では通用しない考え方に固執して非合理な判断を行ったり、臨機応変な対応ができなくなったりもします。 思い込みが偏見や差別となってあらわれることもあります。 このあたりはケースバイケース、あるいは個々人の性格や特性によっても変わってくるので評価は様々でしょう。 端的に云えば、それで本人や周囲が不利益を被ったり社会生活に支障をきたすなら改めるべき 害悪、逆なら知識人やベテランの 有能 さの源泉になります。 多くの場合で状況次第です。
認知に対するバイアスは本人が意識できないことが多いので、人は、そして自分もそれからは逃れられず、ただ人はそういうものだと常日頃から疑って見る、持っている知識の アップデート や メンテナンス を怠らないことが大切なのでしょう。 そう思っていてもなかなかできないのが人間というものですが…。





