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ペンタブ・板タブ・液タブ・タブレットPC…いろいろある 「タブレット」

 「タブレット」 とは、主にパソコンに接続して使う入力用の電子デバイスや、本体が板状で比較的大型の液晶画面を持つコンピュータ・電子端末を指す言葉です。 元々は英語で粘土板や石板などを指して使われていた言葉 「Tablet」 で、その形状から当てはめて使われるようになったものです。 略して 「タブ」 や 「パッド」 と呼ばれることもあります。

 うち、同人商業 の世界において、パソコンを使った お絵描きCG・デジ絵) の 画材 としては、1990年代中頃あたりから、マウスの代わりに専用の電子ペンと描写面として板状の本体 (台座) を使うタイプのポインティングデバイスを、もっぱらタブレット (ペンタブレット/ ペンタブ) と呼んでいます。

 ペンタブとして使える機材にはいろいろな種類がありますが、モニタと併用して巨大なマウスパッドのような本体板面にペンを使う板タブ、板面に液晶画面がついた液タブ、iPad に代表されるオールインワンのタブレットPC あたりが代表的なお絵描きタブレットでしょう。 それぞれにメリットとデメリットがあり、時代を経るごとに選択肢が増える傾向にあります (それぞれ後述します)。

アナログなポインティングディバイスとして1990年代に登場

ペンタブ (板タブ) を使った作画環境の例
ペンタブ (板タブ) を使った作画環境の例

 世界初のペンタブを開発販売し、主に業務用デバイスとして展開していたワコム (Wacom) が、1994年に一般向けに安価で発売した 「ArtPad」 やその後継機である 「ArtPad II」 は、ペンタブ市場を開拓し、ペンを使った入力を身近にした存在としてとくに有名です。

 これらは新しい入力デバイスとして注目を集め一定の評価も得ましたが、一般に広く普及することはありませんでした。 ノートパソコンについていたタッチパッドでも簡単な手書き入力なら十分実用できた上に、外部デバイスを接続するデスクトップパソコンの場合、そもそも安価なマウスとキーボードの方が何かと使い勝手が良いという部分もありました。

 これ以降に何度かパソコンやモバイル端末においてちょっとした 「手書き入力ブーム」 もあったのですが、その中心はあくまで文字入力であり、配置を覚えたキーボードによる ブラインドタッチ (タッチタイピング) やトグル入力 (ケータイ入力) の方が結局は便利で早いということで、言うほどの普及はしなかったようです。 とくに文字入力の場合、日本語の手書き文字を正確に判定してテキスト化するのが難しかった上、テキスト化せずに 画像 のまま保存することは、データの汎用性や利便性が損なわれる以前に、当時の記憶媒体 (フロッピー やハードディスク) の容量があまりに小さく、また高価過ぎました。

 パソコンで描く趣味の イラスト に関しても、1990年代は末期を除いて MAG などの 16色ドット絵 の制作が中心で、マンガ についてもGペンや丸ペンにインクや墨汁で紙に描くアナログ絵が圧倒的であり、一部で取り入れる人もいましたが、さほど注目を集める存在にはなっていませんでした。 デジタル・アナログどちらも描く人は、紙に線画を描いてスキャナや ラップスキャン でパソコンに取り込み、マウスで着色や調整をするといった描き方がほとんどでしたね (その前は、方眼紙に絵を描くなどして得た座標を数値で打ち込んで線を引いていました (方眼紙スキャン)。

液タブの登場でペンタブから板タブ&液タブの時代へ

ペンタブ (液タブ) を使った作画環境の例
ペンタブ (液タブ) を使った作画環境の例

 2001年になり、ペンタブの本体部分に15インチの液晶画面をつけた液晶ペンタブレット (Cintiq C-1500X) が登場すると、液タブとペンタブ (あるいは液タブに対してただの板だとの意味で板タブ) といった俗称・通称としての名称の使い分けが生じます。 本来はどちらも板タブでペンタブであり違いはおおむね液晶画面の有無だけですが、これはわかりやすさ重視ですね。

 液タブは紙あるいはトレス台でこれまで通りに描写するような姿勢で描け、アナログ絵に慣れた人にはとても使い勝手の良いものでした。 しかし価格は当時 168,000円で、その後の後継機なども軒並み20万円台前後以上といった価格帯であり、若者が趣味のお絵描きで気軽に買って使えるようなものではありませんでした。 慣れるまでは視差 (実際の描写面とペン先のズレが生じる) とかタイムラグ (描写が反映するまでの時間差) も気になります。

 前述した ArtPad から続く板タブは1万円から3〜4万円程度と比較的安価でしたが、手元を見ずにモニタを見ながら描画する必要があり、アナログ 絵描き に慣れている人は、使いこなせるようになるまでかなり苦労することがあります (マウスでは感じない違和感が、ペンだとすごくあります)。 もっとも慣れてしまうと液タブより素直で使いやすいという意見は多いかもしれません。 とくに正確な発色のために DTP 用でカラーマネジメント対応の高機能モニタを使っていると、液タブの液晶はどうしてもそれに及ばないため、思ったような色味にならない (結局モニタ上での色調整が欠かせない) と考えるクリエイターは一定数いる感じでしょうか。

 一方で 2000年前後は、これらのデバイスを使うパソコンの価格は DOS/Vパソコン (PC/AT互換機) の普及により急激に下がっていた時代でした。 ハードディスクなどの記録媒体の価格も下落、また インターネット が普及して通信費用も下がりつつ速度は上がり、環境を整えるための全体的な費用は大きく下がっています。 それ以前の PC-98 及び互換機や Macintosh の時代には、ちょっとした スペック の環境 (ハイエンド機をベースにメモリ・HDD増設、大型CRT、スキャナ、ペイントソフトなどなど) を整えるだけで100万円は当たり前みたいな感じでしたから、これは大きな変化です。

 前後して 同人誌 などの 原稿MOオンライン入稿 する データ入稿MO入稿デジタル入稿オンライン入稿 なども徐々に広まっていたので、プロの漫画家やイラストレーターだけでなく、趣味の 絵描きさん でも、この頃から周囲で使い始めた人がちらほらでてきた印象です。

 ちなみにペイントソフトとしては、Adobe の Photoshop (フォトショ) 一強の時代がしばらく続いていましたが (機能性の高さもさることながら、グラフィック系の周辺機器を購入するとよくバンドル (付属) していました)、2001年8月にセルシスの ComicStudio (コミスタ) が登場すると急速に普及し、ほどなくしてデジタル絵描きやプロ漫画家の事実上の標準ソフトとなります。 2004年8月には SAI (サイ/ SYSTEMAX) も登場。 それぞれに強固な支持者を獲得しつつ、若い世代だけでなく、ベテランも含めプロ漫画家がこぞって液タブもしくは板タブ + ペイントツールに制作環境をシフトするのにあまり時間はかかりませんでした。

2010年、本格的なタブレットPC の時代に突入

 さらにその後のスマートフォンの登場とその大画面版のようなタブレット型パソコン (iPad/ 2010年) が登場し猛烈に普及すると、「タブレット」 という名称はもっぱらこちらを指す一般名詞のようになっています。 こちらも初代 iPad 時点で液タブのような使い方が出来なくもなく、通信キャリア契約込で64GBタイプだと8万円程度とだいぶ身近になった印象ですが、使えるアプリはいまいち、画面の筆圧感知も専用のペンタブには遠く及ばず、筆者 も使っていましたがお絵描きに利用することはなかったです。

 ちなみに少し遅れて登場した android 用パッドや画面タッチに対応した Windows8 用のタブレットPC なども折々で評判の良いものをいくつか購入して使ってみましたが、いずれも外出時に ゲーム で使うだけでした…。 ついでに Palm や W-ZERO3 といった、スマホ前に一部で流行した大型液晶画面つきの PDA (携帯情報端末) も使っていましたが、こちらも手書きメモに使えるかも程度で、爪楊枝のような専用ペンの頼りなさもあって、絵描きには使いませんでしたね (誰かが ネタ として描いて、それが結構すごい作品だったみたいなことはよくありましたが)。

 この頃は個人的に絵描きを休止というかサボっていた時期でもあるので、やりようはあったのかもしれませんが、日ごろ使っている板タブや液タブの代用になるようには思えませんでした (一部は可動実機が残ってるのでそのうち検証してもいいかもです)。

液タブも 2015年以降は、超お手頃な感じに

 板タブや液タブは長らくワコムの独壇場でしたが、経営陣のカルト宗教とのつながりが問題視されるなどして、忌避する人も結構いました (2003年頃の株式上場に合わせ経営陣の刷新により関係を断ち切ったとされます)。 その後 iPad などのタブレットが普及し性能も向上すると、これらを液タブ代わりにお絵描きする人も増え始めています。 それ専用のアプリも次々に登場して充実し、タブレットどころか性能が向上した小さなスマホでお絵描きしている人も多くなっています。

 しかし 印刷 を前提とした同人誌にするためのコマ割りがされた本格的なマンガの執筆となると、やっぱり専用デバイスの板タブや液タブをパソコンに接続して使う方が便利でまだ多いでしょう (機材の進化、とくにデータの保存容量関係や互換性が改善すると、そのうち逆転されそうですが)。

 液タブの価格も徐々に下がり、とりわけ 2015年前後に中国製のある程度本格的で安価な液タブ (中華液タブ) が登場・販売されると、ある種の価格破壊に近い状態となっています。 初期の中華液タブは性能もいまいちで、いかにも安かろう悪かろうといった感じでした (スペックを偽ったほとんど詐欺のような商品も結構ありました)。 しかし中華タブ2大メーカーとも呼ばれる XPPen、HUION あたりは価格のわりに性能も機能性も品質も高く、十分信頼できるメーカーだと 認知 されています。 とくにワコムと比べて価格差が大きい20インチクラス前後以上のサイズが欲しい場合は、コスパ 的に積極的に選ぶ価値があるかもしれません。

 ただし中国メーカーは進化が早い一方、おしなべて製品自体の耐久性やサポート体制、そもそも会社自体の存続も不透明で、ドライバの更新やペン先など消耗品の 供給 体制など、上記2社以外のよくわからないメーカーの製品は運頼みのばくちに近い部分があります。 製品個体の当たり外れも大きく、グラフィックソフトから 公式 なサポートや推奨がされていない、使っている人が少ないので トラブル が生じても日本語の情報が ネット になく自力解決が難しいなど、さまざな苦労が待っていることもあります。 またワコムも市場の変化に合わせ、それまでは考えられなかったような低価格高機能のエントリーモデルを投入するなど、選択肢がどんどん増えている状況です。

 スマホやタブレットPC の場合は、CLIP STUDIO PAINT(CSP/ クリスタ/ セルシス/ コミスタの実質的な後継ソフト) や ibisPaint (アイビスペイント/ アイビス) といった利用者が多く定評のある国産お絵描きアプリが使えるかどうかで判断するのが良いでしょう。 いずれパソコンを使った本格的な作品作りをするつもりなら、先を見据えてアプリ選びをすると乗り換えの苦労が少しは軽減するかも知れません (どちらも PC版があり (アイビスペイントは2022年6月末より)、データの連携もできますが、完全ではありません)。

創作のお供にするなら、信頼できるものを

 と云う訳で、最初の一台目、あるいはちゃんとしたものを長く使うつもりなら、ワコムのエントリークラスかミドルクラスのものを選ぶのが無難かも知れません。 ある程度使い倒すつもりなら、価格ははね上がりますがハイエンドクラスも視野に入れて良いでしょう。 何といっても作業効率と信頼性が激上がりします。 締め切り 間際にトラブルで原稿作成が滞り、身動きが取れなくなったら目も当てられません。 パソコンがなかったり、すでにそこそこの性能のスマホやタブレット (とくに iPhone や iPad などの Apple 端末) を持っていたら、そこから始めるのも現実的でしょう。

 サイズは液タブの場合、11インチから 32インチくらいまで様々なサイズがありますが、エントリーモデルとしても使いやすい 13インチ、ちょっと大きい 16インチ、だいぶ大きい 24インチあたりが売れ筋でしょうか。 サイズは大きければ大きいほど価格が高くなる反面、作業性は高まりますが、22インチや 24インチだと描く時にそのぶん利き手を結果的に大きく動かすことになりがちなため、わりと腕が疲れたりもします。

 とりわけ最初の一台目を選ぶなら、人気があって値ごろ感もある 13〜16インチくらいがお薦めです。 目が良くて細かい部分が見分けられる人なら、13インチでもなんら不足は感じないかも知れません。 むしろコンパクトなぶん、机が広く使え取り回しも楽で、作業効率が高まるかも知れません。 パソコンとペンタブを使った作業ではキーボードや左手デバイス (後述します) との連携が必須なので、16インチクラス以上だと広い机がないと結構辛いです。 解像度 は 4K のものも販売されていますが、現時点 (2020年あたり) では HD で十分だと思います。

あると便利な 「左手デバイス」(片手デバイス)

 板タブの場合は拡大縮小回転やショートカットキーが割り当てられるサイドスイッチがおおむね本体についていますが、液タブの場合はないことも多くなっています。 本体をコンパクトにするためですが、画面上でグラフィックソフトのツールボタンを操作しての絵描きはかなり面倒です。 キーボードを併用することもできますが、液タブを机の中央に置くと、キーボードやノートパソコンだとちょっと使いにくい感じです。

 なので、タッチパネル操作ができない、あるいはできてもより効率を上げたい場合は、各種ボタンなどがコンパクトに配置された、いわゆる左手デバイス (片手デバイス) と呼ばれる外付けのサイドデバイス (ソフトウェアコントローラ) があった方が良いでしょう。 ワコム製なら1万円ちょっと、定番の TourBox (ツアーボックス) シリーズだと3〜5万円前後といった価格感です。

 2010年代後半以降はもっとも利用者が多いと思われるペイントソフト クリスタで液タブを使う場合、既存の各種サイドデバイスの他、特化したデバイスの タブメイト (CLIP STUDIO TABMATE) もあります。 こちらは5千円程度 (クリスタユーザなら値引きあり) で手に入ります。 さらにコンパニオンモードを使ってスマホを左手デバイスとして利用することも可能です。

 保護フィルムは反射光の調整や描き味重視でお好みで選ぶと良いと思います。 一般に紙っぽい描き味になるペーパーライクフィルムは、消耗品であるペン先が減りやすい傾向があります。 表面がなめらかでペン先を長持ちさせるものについては、費用対効果の面で考えてみる価値はあるかもしれません。 画面保護の必要はあまりないでしょう (ペンタブの画面はそう簡単にキズなどつきませんし、多少ついたところで使用時には気になりません)。 筆者はスマホでもタブPC でもデジカメの画面でも何でも保護フィルムを必ず貼る神経質なタイプなのですが、液タブでは必要性を感じないので現在は使ってません。

とりあえず宝の持ち腐れにならないように頑張って使います…

 ちなみに筆者は運がない方なので、万が一のトラブルに備えて信頼性重視で板タブも液タブもワコムをずっと使っています。 ソフトは長年使い続けているフォトショや Illustrator (イラレ) が中心ですが、クリスタも挑戦中で制作データに合わせて使い分けています。

 左手デバイスはあれこれ使ってきた後で前述したクリスタ用のタブメイトを選んだものの、Bluetooth が切れまくりで使い物にならず (わざわざ Bluetooth アダプタまで変えたのに改善せず…)、キーボードや使い慣れた適当な外部デバイス (TourBox とか汎用型のテンキーとか) を用途にあわせて使い分ける感じで落ち着いています。 パソコンは Windows だったり Mac OS だったりデスクトップだったりノートだったりとバラバラです。 いずれにせよ周囲もワコム&フォトショかコミスタ・クリスタが多いですし、ネット上に情報もたくさんあるので安心です。

 とはいえアナログ絵描きやアナログ絵のスキャナ取り込み、マウス描きの期間がかなり長かったので、手持ちの液タブがダウンしたらマウス、最終的には多分アナログ対応で解決するかなと思います。 ただまぁ、ワコムのタブは使用頻度が低いこともあってか、一度も壊れたことはないですw

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2005年7月19日/ 項目を分離して整理しました)
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