忍び寄る暗い何か…「不穏」
「不穏」 とは、世の中の空気や 雰囲気 が険悪で穏やかでないこと、近い将来に何らかの破局や混乱、争い、不幸 な事件が起こりそうな、ただならぬ気配が生じていることです。 不穏当とも云います。 医学・医療の世界では、精神的な不快感を起こしたり、何かに興奮して言動が活発になった状態を指したりもします。 似たような使われ方をする言葉に 「物騒」 とか 「物々しい」「殺伐」「ただならぬ」「殺気立つ」「刺々しい」 などもあります。 対義語は穏当で、筋が通り無理のない穏やかな状態を指します。
不穏は個別の具体的な何かを指して使うというより、あくまで穏やかならぬ全体的な雰囲気や気配、漠然とした不安などを指して使うことが多い言葉です。 なので具体的な何かをあえてぼかして伝えるのに、とても便利な言葉でもあります。 創作物などの作中でもよく使われ、「不穏な動きがある」「不穏なやつ」 といった云いまわしは、人々が争う時代物とか戦争ものにはつきもののセリフでしょう。
明るい話の中に、なぜか小さな暗い影
一方、不穏な要素など皆無だと思われる作品 (例えばギャグ作品や明るくほのぼのとした日常系の作品など) に不穏に感じられる要素が入ると、それを見ている ファン の側が 「これは不穏だ」 と表現することもあります。 前述した時代ものとか戦争ものは不穏な動きがあって当然とも云えますが、日常系の作品に何らかの暗い要素、とくに暗い未来を予感させたり、表面的な明るさの中の暗さ、作者 の意図の奥に見え隠れする違和感のある要素や不吉なものに、場違いな不穏さを見つけて不安に思う読者や視聴者は結構います。
一見明るいけれど実は奥底に暗いものが横たわっている作品、逆に物語や登場人物の表情もめちゃくちゃ暗いけれどどこか明るい未来を感じさせるような作品は、物語の作り方としてもありふれており、違和感やギャップによってファンの心を動かしたりコントロールすることを目的とした様々なパターンがあります。 面白さや感動を覚えさせるというのは相手の心を揺さぶることでもありますから、どのようなパターンでもあり得ますが、不穏は見る側に緊張を強いることにもなるため、苦手とする人も多いようです。
まあ単に受け取り側が 深読み をし過ぎているだけの場合もありますが。