他愛のない日々の営みをクスっと笑えるネタとともに… 「日常系」
「日常系」 とは、マンガ や アニメ といった創作物の ジャンル の一つで、これといった中心的な 物語 や テーマ、メッセージ などはなく、おおむね平凡な 一般人 の 普通 の生活を、キャラ たちの会話を中心に淡々と描いた 作品 のことです。 折々でお正月とかバレンタインとか夏休みといった歳時的な イベント は発生しますが、それで何かが大きく動くことはなく、キャラの生活をひたすら 地味 に描いた作品となります。 日本人なら誰でも知ってそうな作品で云えば、アニメ 「サザエさん」(初期のブラックな頃を除く) あたりが日常系のひとつの典型かも知れません。 「空気系」「ほのぼの系」 あるいは 「会話系」 とか、会話中心のため揶揄として 「顔マンガ」 などと呼ぶこともあります。
言葉としては 「らき☆すた」(Lucky☆Star/ 2004年) や 「日常」(2006年)、「けいおん!」(K-ON!/ 2007年) が人気となった頃に ネット を中心に使われるようになり、それ以前から人気と存在感があり似たような構造でこうした作品群の原型でもある 「あずまんが大王」(1999年) などを含め、ひとくくりの言葉として定着するようになっています。 いずれも 萌え っぽい女の子が登場する4コマ漫画だったことから、「萌え四コマ」 と呼ばれることもあります。 なお 「あずまんが大王」 以外の作品のアニメ化は京都アニメーションでの制作だったことから、その観点での分類がされることもあります。
なおドラマチックな展開が続く作品中に、どうでもよい日常話のエピソードが入る場合は 日常回 などと呼びます。
かわいい女の子の日常をそっと見守りたい…
日常系の主な傾向としては、ほのぼのとした軽いギャグ・コメディタッチのものが多く、学校生活を描いたものにせよ社会人の生活を描いたものにせよ、誰でも経験したことがあるような平凡な毎日の描写、あるいは 日常 における 「あるあるネタ」 で構成され、クスリと笑えるような小さな ネタ が細かく刻まれて提示されることが多いかもしれません。 ただし4コマ1本で1つのネタを提示するといった従来の4コマの形にはなっておらず、雑誌の連載1回分の4コマ何本かで話がつながっていたり、次回に続くこともあります。 最後のコマで話を 落とす (オチをつける) といった起承転結の流れもあったりなかったり、あるいは意図的に排除します。
大きな物語が存在しないため、物語をリードする 主人公 や 脇役 といったキャラの役割分担もゆるやかです。 一応主人公とされるキャラが 設定 されるケースは多いものの、別にそのキャラの視点で物語が進むわけではなく、仲良し の何人かの主要なキャラのオムニバス形式のような進め方がされたり、ほとんど群像劇のようになっていることもあります。 また季節は巡っても年はおおむね経過せず、キャラが成長することも年を取ることもほとんどありません (サザエさん時空)。 こうした傾向から4コマ漫画のようなシンプルな形で制作されることが多いのでしょう (形式が先か内容が先かはケースバイケースです)。
なお日常に存在する何かをことさらに深く掘り下げるようなことはしません。 例えば部活そのものを掘り下げてしまうとスポーツものといった部活ものになりますし、恋愛にフォーカスしすぎると恋愛物語やラブコメになってしまいます。 日常系の場合は特定の要素を取り上げるとしても、あくまでスポーツ部員の日常 (何とか大会の優勝を目指して次々と強豪校と戦ったりしない)、恋人同士の日常 (二人の恋愛関係が大きく変わるような出来事は起こらない) を小ネタの羅列という形で展開します。 それぞれの要素を少しずつ入れつつ、学校が舞台なら勉強とか試験とか部活とか、あるいは文化祭とか修学旅行とかバイトとか家族旅行とか、歳時的なできごとを織り交ぜてそれぞれのキャラの生活を描きます。
起承転結のある映画をハラハラドキドキしながら観るというよりは、自分の好きな金魚が何匹か泳いでいる水槽を、ぼうっとしながらずっと眺めているような鑑賞に適した作品と云えます。 いつまでも終わらない日常、いわゆる BL要素 やシュールさのあまりない やまなし・おちなし・いみなし (やおい) みたいなものです。 キャラたちの楽しい会話や関係性を、部屋の壁になってひたすら見守るような感じです。
元々4コマ漫画は、新聞に掲載された風刺的な4コマ、マンガ雑誌に掲載されるクスリと笑える小ネタ4コマ含め、日常的、それも一般人のそれを軽く扱ったものが多いものです。 そこに萌えとか美少女というスパイスが加わったものなので、とくに飛びぬけた独自性があったわけではありません。 もちろん萌えや美少女が出てくる類似の4コマも、それ以前から存在もしていました。
とはいえ、4コマという歴史もあり優れたマンガの形式ながら、おたくの世界ではややもすれば軽く扱われがちでもあったものが、一気にマンガやアニメ文化のど真ん中、何年にも渡って大きな中心のひとつになった点では画期的なものだったと云えます。 とくに4コマ漫画の暗黙の前提であった起承転結をまるで無視したような展開は、一部で 「こんなの4コマじゃない」「4コマ漫画でやる意味ある?」 みたいな反応 (拒否というより、これで4コマ漫画として成立するの? みたいな戸惑いが大きかった気が) を受けつつも、新しいフォーマットを作った、あるいは過去の類似作品を含めて再定義した存在だとも云えそうです。
突飛な出来事は描かれないが、突飛な解釈は日常系の魅力
日常系は バトル ものの作品などに比べると物語にさしたる起伏はなく、非日常的な突飛な出来事や事件も起こりません。 内容が薄くてぬるい作品だと評価されることが多いでしょう。 人によっては 「何が面白いのかさっぱりわからない」 と評価されることもあります。
しかし現実世界で他人との競争を強いられがちな現代の 読者 や 視聴者 にとっては、創作物の中に 「ゆるさ」 とか 「癒し」 を求める部分もあるのでしょう。 また大きな物語もないので、どこから読み始めても見始めても、どこでやめても問題ありません。 ネタバレ に必要以上に怯えることも、物語に 不穏 な空気を感じて緊張感を覚えることもありません。 気軽に楽しめるのも日常系の魅力のひとつです。
一方で、日常生活を淡々と描くだけで成立させるため、個々のキャラの魅力は大切です。 またありふれた出来事を描くために、作者 には見過ごされがちな日常を切り取る分解能というか 解像度 の高さも必要です。 突飛な出来事や事件を描くのではなく、日常にありふれた平凡な出来事を突飛に 解釈 して丁寧に提示する力量が求められます。 「そこを切り取るか」「そう解釈するか」 という作者の感覚が大切なのですね。 そしてそれらを魅力的なかわいい、あるいはかっこいいキャラが自分たちと同じような生活の中でわちゃわちゃしてるのを微笑みながらそっと見守るような作品なので、かなり見る人を選ぶ作品ではあります。
何か大きな出来事が起こると、もうすぐ終わるかもしれないと云う寂しさが
連載もののマンガなどでは、それまでずっと淡々と日常的なネタが続いていたのに、急に数話に渡るようなストーリーが提示されることがあります。 ありがちなのは学校ものなら卒業とか部活で何らかの大会に出るとか、作中でずっとつかず離れずだった異性や同性との関係性の変化などです。
日常系なのだから最後の最後まで日常のまま終わっても良さそうなものですが、一定期間続いた人気のある作品なら、キャラたちに区切りとなる 「相応しい最終回」 を最後に与えたくなるものなのでしょう。 これは作者もそうですし、多くの ファン もそう考えるもののようです。 もちろんそれでも、日常系である以上は日常を大きく飛び越えるほどの大きな出来事や事件にはならないのですが、「ああ、ずっとこのゆるい空気に浸っていたいのに」 との思いから、一抹の寂しさを覚えることはあるでしょう。
もっとも四コマや一話完結ならば、ちょっとした続きを描くのも比較的容易ですし、日常系という言葉が使われるようになった頃はネットによる作品公開も珍しいものではなくなっていたので、雑誌やテレビと云った媒体以外で続きが楽しめることもあります。 同人 と 商業 の垣根もなくなってきていますし、ずっと楽しめる作品があると嬉しいなと思います。
公式 からの 供給 が途絶えても、同人者なら、最後は 自分で描くしかない で突破することもできます w
![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() |
関連する同人用語・オタ用語・ネット用語をチェック
