同人用語の基礎知識

挫折回

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キャラの成長に不可欠ながら、見るものにストレスも与える 「挫折回」

 「挫折回」 とは、マンガアニメ・ドラマなどの連載・放映において、主人公 やその仲間などの 「挫折」 が テーマ となるエピソード回のことです。 単に主人公の実力不足で勝負事に負ける、失敗する、身の程を知って打ちのめされるという描写の場合もあれば、仲間や恋人とすれ違いが生じていさかいとなったり、仲間や恋人・家族との離別や死、あるいは事故や 病気、災害、戦災など避けられない トラブル に巻き込まれるといった場合もあります。

 なお 「挫折」 と 「危機・ピンチ」 は表裏一体の関係ですし、ほとんど同じものとして扱う場合もありますが (例えば危機によって挫折する、挫折によってピンチになるみたいなケースが多いでしょう)、必ずしも同じものではありません。 単なる言葉の定義という部分もありますが、挫折はあくまで内面的なもの、危機・ピンチはしばしば外面的な要素を持つものという分類もできるかもしれません。

挫折や悩みによって人もキャラも成長する

 ストーリー性の高い作品で主人公の成長や夢を叶えるといったテーマがある場合、様々な困難に直面しそれを乗り越えるというのは物語の骨格をなす重要な部分です。 とりわけスポーツ (スポ根もの) やバトルものなどは、挫折から立ち直って諦めることなく前に進んで夢や目的を叶える、完遂する、勝利 するというのは 王道 とも云える流れでしょう。 挫折が大きく深いほどそれを乗り越えて掴んだ勝利や成功はより大きなカタルシスがありますし、主人公と形は違えど悩みや挫折を味わった 読者 や視聴者は挫折回を通じて主人公に共感して強く感情移入でき、その後の勝利で勇気や感動を得られるでしょう。

 一方で、挫折の描写があまりに深刻なものだったり、あるいはリアリティがありすぎて辛いものだった場合、読者や視聴者も大きなストレスを感じたり、自分が辛かった過去の記憶やある種のトラウマが呼び覚まされて落ち込んだりもします。 単に自分の好きなキャラが苦しむ姿や 下げられるような描写 を見たくないという読者や視聴者もいるでしょうし、「娯楽や息抜きとして楽しんでいる作品でストレスを感じたくない」「嫌なものは見たくない」 という人も少なくなく、どのくらいの レベル の挫折描写で読者や視聴者に負荷をかけるのが良いのかは、時代性や視聴者層、作品のテーマなどによって変化するでしょう。

 とりわけ史実・仮想問わず戦争や事故や病気、死を扱った作品では、仮にハッピーエンドで終わるのが約束されたような作品であったとしても、途中の挫折回の深さと頻度によっては 「挫折や苦悩を扱えば作品の質が高まると勘違いしている」「読者や視聴者といった ファン に対する嫌がらせだ」 などと否定的に見られてしまう場合もあります。

 また挫折によって主人公の性格などが救いのない形で悪い方へと傾いたりする場合 (闇落ち黒化) は 鬱展開 や地獄などと呼ばれ、とくに嫌われるケースが多いかも知れません。 この場合は挫折回といった言葉の範疇を超えるものとなりますが、単にこうした負荷に極端に弱い読者や視聴者が、ことさらに 「鬱だ」「地獄だ」 などと大げさに吹聴しているだけの場合もありますから、なかなか複雑です。

アニメの場合は3回目が危険回?

 例えばアニメの場合、物語の出だしからいきなり挫折が入って始まるようなケースもありますが、初回や2回目くらいまでは興味関心を喚起して 新規 ファンを獲得して心を掴む必要があることから、1話まるごと挫折が描かれる挫折回が 設定 されることは少ないかもしれません。

 スポーツアニメなら、序盤はそのスポーツの面白さや素晴らしさが力の入った作画で展開され、それに向かう主人公の紹介とともに動機づけを魅力たっぷりに描いて 「1話切り」(初回で見るのをやめること) がされないように留意するものです。 しかし3回目ともなると見続けている視聴者はある程度作品に対するモチベーションが高いというか、「作品に食いついて釣り針ががっつり刺さっているもの」 と見られ、このあたりで最初の 「挫折回」 が仕込まれるケースがわりとあったりもします。

 とくに全編1クール 13話くらいのアニメの場合、作品全体のバランスから云っても3回目くらいで最初の挫折回を1話分設けないと、後が苦しい展開になりがちです。 挫折回は大小合わせて何度か挿入されますが、挫折回が続くと見るのが辛くなりますし、かといって挫折がなさ過ぎても薄味な作品になってしまうかもしれません。 その丁度よい位置が3話目くらいなのでしょう。

 一方、1年4クール放映するようなアニメの場合は、挫折回が1話分ではなく延々と数話にわたって続いたりするものもあります。 例えば週1放映で4話挫折回が続くと1か月間挫折しっぱなしで苦しみ続けるわけで、これはこれで見ていて辛いものがあります。

 なお挫折回の有無に関わらず、作品の 「勢い」(人気だけでなく物語としての突破力) が衰えたり低下傾向にあるとされる場合、物語とは直接的な関係性が薄くとも、見どころたっぷりのエピソードを入れる場合もあります。 この場合はとくに 「テコ入れ回」 などと呼びます。 一番安易というか手っ取り早いのは、海で水着とか入浴シーンなどが描写される 「お色気回」 があります。 またこうした停滞する時期を、熱心なファンとそうでないファンを分別・厳選 する 厳選タイム と呼ぶこともあります。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2012年8月7日)
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