ダッシュで焼きそばパン買ってこい! 「パシリ」
「パシリ」 とは、「使いっ走り」 のことです。 他人の身の回りの雑用を言い渡され便利に使われる小間使いや召使い、下男下女のような扱いを受ける人を指し、学校で昼食のパンを俺の代わりに売店で買ってこいと命じられるといったお使い要員としてのそれが代表的でしょう。
ただしパンの代金もお前が出せとか、命じられる前に気を利かせて先に買ってこいとか、欲しいパン (焼きそばパンとか) が売り切れで買えなかった場合はお仕置きとして何らかの制裁が科せられる、場合によっては 「何か面白いことをしろ」(その人の人間性や尊厳をあざ笑い破壊するようなものが多い) とか、暇だから殴らせろなどなど、ほとんど いじめ の対象と変わらない状態をしばしば含みます。
いじめの一形態ではなく、友人関係の中での序列によるものもあります。 こちらもいじめと大差のない状態もありますが、場合によっては人数合わせとして一時的に仲間のような扱いを受けることもありますし、日常的 に暴力を振るわれるほどの酷い扱いではないケースもあります。 またパシリ本人がいじめっ子よりはマシだと、半ば自主的にパシリとして扱われることを望むこともあります。
序列による役割固定とそのネーミング
序列でいえば、似たようなものに1980年代中頃から1990年代にかけての、いわゆるバブル期に良く見られた一部の男性に対する女性からの序列による使い分けがあります。 例えば車で送り迎えするだけのアッシー君、食事を奢らせられるだけのメッシー君、高額のプレゼントを贈るだけのミツグ君、本命 の男性以外のキープ君などです。
こちらはいじめや学校におけるパシリとはまた異なり、男女間のあれこれの欲望をベースに利用したりされたりでもあるので同列には語れませんが、いわゆる スクールカースト の上位に位置するような男性からモテる女性が、自らの魅力を武器やエサとして用い、相手を召使いのように扱う点では大きな違いはありません。
一般にアッシー君やメッシー君が本命になることは極めて稀ですが、このあたりもいじめられっ子やパシリが同格の友人関係に昇格することが極めて稀な点では共通しています。 ただし男性間のいじめと違い、女性間のいじめはまた様相が異なることもあるので (女性の場合のいじめは、男性のように立場が固定せず、むしろいじめる役といじめられる役を持ち回り・交代で行うようなこともあります)、あまり同列には語れません。 また学校を卒業するなりして進学・就職なりすると、学校時代とは全く異なる評価軸で人間関係の再構築が行われることから、立場の逆転もあります。
ただし中学校時代にいじめていた男性といじめられていた男性が、例えば工事現場で末端の作業員と現場監督としてやってきた大手ゼネコン社員として再会するといったケースはあるものの、中学時代に出来上がった上下の人間関係はそう簡単に覆せないとはよく聞く話です。 たしかに現場内では指示を受ける側と指示する側になってはいますが、そもそもいじめをするような人は常識や倫理に欠ける人物であり、そんな理屈が通用しなかったりもするんですね。 結局 トラブル を起こさないために元いじめられっ子が元いじめっ子に配慮するみたいな救いのない現実もあります。 もっともこうはっきりと立場の入れ替えが明確になると、元いじめられっ子の側も昔のことなど今さらどうでも良いと 割りきれ たりもするのでしょう。
パシリやいじめられっ子が逆襲する物語なども
創作の世界でも、パシリは現実世界と同様の描かれ方をしますが、いじめ描写と同様、取るに足らない 雑魚 として扱われることもあれば、一発逆転というか、パシリにされていた人物がパシリさせていた人物への復讐や立場の入れ替え (下剋上) を痛快な勧善懲悪ものとして描く場合もあります。
とくに時代を経るごとに、いじめとか他人をパシリとして使うといった行為が倫理的に強く忌避されるようになり、その傾向は強まっているかもしれません。 いわゆる 「みにくいアヒルの子」 みたいなストーリーラインですね。