下が上を打倒してのし上がる 「下剋上」
「下剋上」(げこくじょう) とは、おたく や 腐女子 のある文脈においては、自分より目上のもの、具体的には親とか上司とか同じ趣味仲間の 古参・ベテラン勢 に対して 布教 を行うこと、相手を自分と同じ 趣味 や ジャンル に引きずり込むことを指します。 それが成功したら必然的にそのジャンルでは自分が相手の先達・先輩ということになります。
例えば親。 自分が生徒や学生といった就学年齢の子供だった場合、一般に親は 「趣味 (遊び) より勉強」「夜更かしせず早寝早起き」 を口うるさく押し付けてくるちょっと鬱陶しい存在でしょう。 しかし父母のどちらか、あるいは片方を自分と同じ趣味やジャンルに引きずり込んで趣味仲間にしてしまえば、逆に力強い味方になってくれるかも知れません。
もちろん親の勉強しろ早く寝ろといった小言は子供のことを思ってのものなので、趣味に対する理解や協力が得られても 「それとこれとは話が別」 ではありますが、少なくとも自分の趣味や大切にしているものを無理解から悪しざまに否定したり、趣味や生活態度について 緊急家族会議 が招集されるようなことはなくなるでしょう。 場合によっては遠隔地の イベント に行くための 遠征 といった、まとまったお金が必要なタイミングで、適切な援助が得られるかもしれません。
また職場の上司とある程度プライベートな話ができる関係性がある場合、同じ趣味となれば仕事でのあたりが柔らかくなったり、ここぞという時の休暇なども、取りやすくなるかも知れません。 趣味やジャンルの話では自分が相手の上位ともなりますから、上下関係も微妙に変わるでしょう。 まぁ有給は誰でも一定の範囲で自由に取れるのが当たり前で上司の理解など本来は不要なのが望ましい形ですが、往々にして思ったようにならないのが社会の現実だったりもします。 理解されていれば多少は有利に事が運ぶかも知れません。
場合によっては 「お前が好きな ゲーム の新作がもうすぐ出るな、いつ休む?」 などと前もって尋ねてくれたり、「土日挟んで4日? それじゃクリアできないだろ、1週間は休め」 などとアドバイスしてくれたりします (職場でここまで濃密で私的な人間関係は嫌だという人もいますが、それなら下剋上しなければいいだけですw)。 上司とのこうした関係性は、マンガ 「釣りバカ日誌」 のそれに倣ってハマちゃん・スーさん化 (社内では平社員と社長、趣味の釣りの世界ではベテランとビギナーという関係性) などと呼ぶこともあります。
立場逆転! 小物が大物を討つ…使いやすい 「下剋上」
下剋上という言葉自体は、歴史で習う戦国時代のそれを指します。 一般的には 南北朝時代からから戦国時代にかけ、時の権力が衰退して中央からの統制が利かなくなり、力をつけた各地の豪族や小領主、農民などが蜂起して地域の支配者を打倒し自らがその地位に就く、血で血を洗う権力闘争を指して使います。
似た 概念 に 「革命」 や 「クーデター」 があります。 これらは重なる部分も大きく場合によっては同じものだとされることもありますが、異なるものとする意見も多いでしょう。 一般に革命は組織や権力構造そのものの作り替え、クーデターは同じ組織や権力機構の中での序列争いだと理解され、下剋上は広い意味での部分的クーデターだとされますが、それらの首謀者たちの当初の計画や目標はともかく、結果的に権力を奪取した後に組織や権力構造の刷新を行うこともありますし、革命だと思ったら結果的に首謀者の野心に基づく国家権力内の序列争いに過ぎない場合もあります。 ただしいずれの場合もおおむね暴力や実力行使による権力奪取という点では同じです。
いずれにせよ下位者が上位者を討つ、身分制度や序列・秩序を破壊して新しい秩序を打ち立てる風潮がベースとなり、権威や法律・規則ではなく軍事力や経済力といった実力とか、権謀術数や裏切りだけがものをいう乱世のイメージが 強い言葉 でしょう。 こうした 「既得権の打破」 や 「上下の立場の逆転」 は ロマン あふれるドラマチックなものに感じられますし、言葉としての使い勝手も極めて良いため、歴史用語としての使われ方だけでなく、日常の様々なものに当てはめられて使われています。
受けが攻めに逆襲する 「下剋上オチ」 なども
創作物や 同人 の世界では 「下剋上オチ」(淫乱オチ) という云い方もあります。 上位と下位が入れ替わるどんでん返しの物語とか、カップリング において、それまでは哀れな 受け だった キャラ が 攻め に対して反旗を翻し、立場が逆転するような オチ がつく物語となります。