頼れる先輩? 目障りな老害? 「古参」
「古参」(こさん) とは、古くから参上しているという意味で、昔からその職や地位に長らく就いている人を指す言葉です。 一般でもよく使われる言葉であり、古参職員と云えば何十年もそこで働いている職員を指し、おおむね古株や老兵、そこから転じて先達や ベテラン、先輩、目上、手練の古強者、老練な古兵、実力者という ニュアンス も持っています。
おたく や 腐女子 の世界でも自称・他称問わずよく使われ、おたく歴や腐女子歴が長いとか、特定のアイドルの ファン歴 が長い、ジャンル での活動歴が長いといった意味で使われます。 何かに接頭して使うこともあり、例えば ファン なら古参ファン、サークル なら古参サークルであり、またそうした人たち全体を古参勢と呼ぶこともあります。 尊敬の対象として扱われる場合もありますが、一方で 老害 や老いぼれ、ロートル、旧式、頭が固いといった ネガティブ な意味で使う場合もあります。
対義語は一般に 新参 (しんざん) や 新規、実年齢が若い場合は若手などとなりますが、古参同様に初心者やビギナー、ニワカ、半可通、浅学、ワナビ などといったネガティブなイメージも合わせて持っています。 中間にあたる場合は 中堅 と呼ぶこともあります。
おたく・腐女子の古参アピールと古参マウント
古参と新参の意識の違いや、しばしば生じるすれ違い、対立は、おたくや腐女子の世界以外にもままあることですが、妥協しづらい 趣味 の世界のことでもあり、リアルな場でも ネット や ゲーム といった場でも、しばしば火花が散るような バトル が生じることもあります。
中でも嫌われるのは、上から目線で自慢話っぽい 「自分はこんなに昔からファンだった、活動していた」 との古参アピールや、昔は良かったといった懐古表現 (懐古厨)、それによる マウント取り でしょう。 もちろんそこに深い知識や造詣があれば耳を傾けたり尊敬に足る存在となるのでしょう。 しかし単に関わった時間が長いだけ、新参や新規が知らない時代の話をちょっと知っているとか、その当時の プレイヤー だけに配布された キャラ や アイテム を持っているだけ、あるいは会員番号や ID が若いだけなのをアピールされても、新しく入ってきた人にとっては目ざわりで ウザイ だけの存在になりがちでしょう。
また 掲示板 といったコミュニティの場で古参風を吹かせて新参・新規勢に対し 「これだから新参は」「新規は」 と苦言めいた文句を云ったり、「そんなことも知らないのか」「持っていないのか」 と云われても、「たまたま先にいただけだろ、それが何か?」 との反発や白けた気分になってしまうでしょう。
またそこまであからさまな自慢話やマウントではなくとも、新参・新規勢は知らない話をわざわざ持ち出したり、「昔は大変だった」「今は恵まれているよ」 と苦労話風の 自虐風自慢 をされても、「さすが古参さんはすごいですね」「もっとその話を聞かせてください」 みたいな反応を待っているのが見え見えで、苛立たしいよりも 「それしか誇るものがないのか」 との哀れさや 痛々しさ を感じる場合もあるでしょう。
誰でも最初は新参で、誰でもいずれは古参になる
このあたりは趣味や仕事とは関係なく、単に高齢者がやりがちな 「今どきの若いもんは」 とか押しつけがましい 自分語り や 武勇伝 と同様の老害ムーブ (ただし実年齢はあまり関係がないかも) であり、自分が関わる分野で無意識にマウントや揚げ足を取ることがないよう気をつけなくてはと 筆者 なども思うものの、無意識に出てしまうものだけになかなか難しいものです。 最低限、新参・新規を 煽った り不快にさせる目的で発言したり、その場に居辛くするような言説は強く意識してなくすよう努力しないといけないな…などと思ったりもします。 同じ言葉でも、その人のポジションによって受け取り方は変わってきますし。
そもそもの話として、新参・新規が入ってこなければその コンテンツ やジャンルは先細りしていずれ消えてしまう訳ですし、謙虚な方がかっこいいと感じられて存在感が逆に増すこともあります。 短期的な 承認欲求 ばかり強すぎると本人が身を滅ぼすだけでなく、場も壊してしまうでしょう。 趣味の世界の話なので、仕事や社会的な役職と違って 引退 する必要はありませんが、何かうんちくを垂れるにしても、人から尋ねられた時だけ答えるみたいな付き合い方が良さそうです。
また逆に、新参・新規の側も、上から目線や口うるさいだけでなく、「いずれ自分もああなるのかな」 みたいな恐怖と 「ああはなるまい」 との意識も手伝ってことさら否定したくなる部分もあるのでしょうが、耳障りな話は聞こえないふりをして鷹揚に構えるのが精神衛生上も良いのかなという気もします。 別にへりくだって機嫌を取ったり接待して持ち上げる必要はありませんが、根っからのマウント取りでもない限り、適当におだてるといろいろと役に立つのが古参だったりもしますので。
なお、長年 マイナー だったジャンルなどが突然注目を集め、新規ファンが押し寄せるような状態となった場合、もちろん古参と新参の軋轢などが生じることもありつつも、「古参の人たちが応援してたからこのジャンルが続き、自分たちが触れることができた」「支えてくれてありがとう」 と新参が感謝を捧げることもあります。 最終的には古参・新参というよりも個々人の性格や資質によるのでしょうが、お互いに尊重できるとその趣味やジャンルはもっと豊かになるのでしょう。 もちろん適切な争いによって淘汰や新陳代謝が生じて場が活性化する部分は否定しませんけれど。