自分が紹介したのに、気が付いたら自分だけ仲間外れ… 「はしご行為」
「はしご行為」 とは、主にビジネスの世界において使われる言葉で、取引先同士のやり取りの中で、紹介した相手ともう一方とが、紹介者を抜きにして無断で直接やり取りをすることを指します。 言葉としては 「はしご (梯子) を外される」 みたいなニュアンスです。
例えばビジネス上のやり取りをしているAさん、Bさんがいたとして、AさんがBさんに自分の取引先であるCさんを紹介したとします。 その後AさんBさんのやり取りの他、AさんBさんCさんのやり取りも始まりますが、そのうちBさんCさんがAさんへの断りなしに直接やり取りをはじめ、むしろそちらだけが盛り上がり、両者の紹介者であるAさんが仲間外れのようになってしまう状況となります。
もちろんAさんBさんCさんそれぞれのビジネス領域が異なっていれば、これはこれでビジネスではよくあることではありますし、何らかの仲介料が発生しないのであれば、「今後は直接やり取りさせてください」 と一言Aさんに許可を得れば済む話ではあります。
しかしAさんCさんのビジネス領域に重複する部分がある場合、AさんはCさんを紹介したばかりに自分のビジネスをCさんに奪われる結果となってしまいますし、Bさんに対してもそれまでの取引実績や関係を無視され、自分が紹介してあげたCさんにあっさり乗り換えられた、裏切られたといった ネガティブ な感情だって生まれるでしょう。
こうした考え方は、BさんCさんのビジネスの仲介をしたAさんに何の利益も生じないといった部分で、ビジネスの仁義や筋に反するものと考えられますし、そうしたことが起こることを警戒して関係者全てにとって利益があるのにあえて有益な取引先を紹介しない (それによってビジネスの発展が阻害される) といった弊害も生じるものでしょう。 あるいは逆に、「自分が紹介してあげた」 という関係性を作るために、シナジー効果などをまったく考慮せず年がら年中片っ端から紹介しまくる人もいます。
紹介や仲介を間に挟むとその意向を汲んだり顔を立てる必要が生じるため、安易に紹介や仲介を受けず、何らかの交流会や産業系の イベント、飛び込みなどで取引先を開拓する人もいます。 ビジネス上、両者に本当に有益な相手なら、誰に紹介されなくてもいずれは巡り合うこともありますから、紹介される前に自分から関係を求めるわけですね。 「出会いを作ってくれるのはありがたいが、それだけでいつまでもあれこれ言われたら後々面倒だ」 という訳です。
人間関係でもありがちな 「はしご行為」
ビジネスの世界で使われる言葉と云え、この 「はしご行為」 の概念は、日常の人間関係でも子供から大人まで、あるいは異性間のあれこれで、ありがちなものでもあります。 同人 の世界では、合同誌 などを通じて サークル の間を取り持ったり、配信者 や Vtuber が、コラボ などを通じて紹介し合うと云った場合にも生じることがあります。
友達に友達を紹介したらそいつらだけで勝手に仲良くなって結果的に自分だけ仲間外れにされるとか、片思い中や交際中の異性に自分の友達を紹介したらそっちで仲良くなって付き合い始められたとか、長い人生で誰でも一度くらいはそうした状況に遭遇することはあります。 自分は友人や恋人を2人同時に失い人間不信すら覚えるほどなのに、相手は自分と入れ替わりに友人と楽しくやっているのが許せない、割り切れないと思うのは仕方がない部分があります。 同じ学校やご近所、あるいは職場の場合、そもそも人間関係がある程度狭くて、そのうち紹介してくれたという事実すら忘れられ、昔からの知り合いだったみたいな意識になったりしますし。
とはいえ人間関係などは流動的で、紹介したりされたりはごく当たり前の事であり、ある時期に友達だったからといってそれがずっと続くわけでもないし、「紹介したらその相手に友達をとられた、奪われた」 などと思い込むこと自体がナンセンスだ、独占欲が強すぎて キモイ という考えも当然あります。 ことあるごとに 「二人が知り合ったのって、あたしが紹介したからだよね」 などと恩着せがましく主張されても、度を越せば 「それはそうだけど、それが何か?」 としか言いようがない部分もあります。
ビジネスの世界にせよ個人的な友人や恋人の話にせよ、ある程度は仁義というか筋を通すのは無用な トラブル や逆恨みを防ぐ意味でもあって良いとは思います。 とはいえ利害が一致したり波長があったもの同士が仲介者のいない形で強く結びつくのは避けようがないので、ビジネスならばしっかり仲介としての権利を文書として残す (この場合、紹介や仲介の結果、逆に不利益が生じたら道義的な責任は取らなくてはならないでしょうけれど)、それができない場合、あるいはプライベートな場合は、「ビジネスってそういうもの」「人間関係ってそういうもの」 と割り切るのが精神衛生上も良いのかもしれません。
また自分が紹介された場合は、紹介してくれた人物の顔をなるべく立て、感謝を忘れないようにしたいものです。 良好な人間関係が維持できてさえいれば、また新たに素敵な紹介をしてくれるかも知れないのですから。