頭の良し悪しを計るバロメーター? 「偏差値」
偏差値とは、ある集団の中で特定の一個人や要素がどのあたりに位置するかを導く数学的な値のことです (後述します)。 現在の日本では、一般的に高校・大学受験の際の合否予測に活用される学力水準の評価基準のひとつ、およびそこから派生した 「知能」「実力」 といった意味でも用いられがちな言葉でしょう。 数学やビジネス分野で活用されることもありますが、日本の場合はほとんどの生徒が進学で行う受験の際に身につまされる使われ方がされ、その印象が極めて強い言葉だと云って良いでしょう。
模擬試験などにおける偏差値は、受験者の学力のあるなしをその設問における点数と全体の平均から判定するだけなので、頭の良し悪しとは大きな相関関係があるものの、個別的・直接的な関係はありません。 試験ごとに当然いくらか変化しますし、そもそも河合塾や駿台、東進、ベネッセといった模試の種類によっても異なってきますし。 また学校の勉強が嫌いで成績やテストの点は悪いけれど、高い知能や IQ を持つ人もいます。 その場合はとくに 「地頭 が良い」 などと呼びます。 学力の土台となる地の頭は優れている、といった意味になります。
逆に頭がさほど良くなくとも、問題を勘で当てて運よく良い点を取る、過去問から出題傾向を分析して要領よく点数を取ると云った試験対策によって偏差値を上げることも可能です。 こうしたテストの点だけを重視した対策や勉強法、あるいは偏差値が何よりも重視されて詰め込み式の勉強を強いることは、偏差値偏重主義とか偏差値教育などと呼ばれることもあります。
なお 偏差値が低い といった場合、そのまんまの意味で使う場合もありますが、ある種の称賛表現として用いられることもあります。 これはバカとか アホの子 といった言葉が、しばしば ネガティブ・ポジティブ 両面の意味で使われるのと同じです。
いまさら解説 「偏差値」 って?
同じ母集団 (例えば受験の模試なら同じ試験を受けた集団) の中で、ある参加者 (例えば自分) が平均や全体からどれくらいのポジションにいるかを示す数値が偏差値です。 学力偏差値なら、志望校の 難易度 やランクを測ったり、自らのポジション (学力) からその学校に合格できるかどうか、できるとしたらどのくらいの確率か (A〜E判定) を算定するためにも使われます。
偏差値を求めるための式は次のようになります。
偏差値 =(値 − 平均値)÷ 標準偏差 × 10 ÷ 50
途中で出てくる標準偏差とは、単純化すると平均値からどれくらいズレているか (散らばっているか) を示す数値のことです。 こちらは (点数−平均点)の二乗の総和 ÷ 母数の平方根で求められます。 受験の学力水準を計るおなじみの学力偏差値の場合は、おおむね最低値を25、最高値を75あたりまでとし、この範囲に母集団のほとんど全て、99%が入ります。 中間である偏差値50は、その母集団の平均にあることを意味し、50より低ければ平均以下、高ければ平均以上となります。 ただし母集団の数が少なすぎる (正規分布に乗らない)、あるいほとんど全員が同じ点だった、みたいな特殊だったり極端なケースでは有効な偏差値が求められない場合もあります。
全国模試最上位あたりだと、範囲外の1%に相当する78とか79とか80以上といった外れ値のような高い数値となることもあります。 割合は75以上の場合、上位0.62%程度となり、すなわち 1,000人中6番目以内あたりの位置となります。 これは学校の偏差値についても同様で、全国トップレベルの超難関校や学部の場合、これらと同じか実質的に同等の数値となるものがいくつもあります。
逆に最低値の場合は25以下もありえますが、そもそもそのレベルの学校の場合、俗に 「名前が書ければ合格」 といった受験さえすれば合格・事実上の全入状態となり、合否判定のボーダーとなる偏差値に意味がないことがあります。 判定が不能だったり著しく困難になりがちな学校 (おおむね偏差値 35 以下) はFランク (Fラン/ 河合塾が2000年に大学のランク表示に追加した名称) とか BF (ボーダーフリー) と呼ばれることが多いでしょう。 現在ではこれが、おおむね実質的な最低値判定と見なされます。
なお学力以外に人並外れた高い能力が求められるケースもあります。 スポーツや芸術といった分野で入試に実技試験がある大学や学部などですね。 これらも国公立やそれに近い実績を持つ高いポジションの学校では課題実技以外の学力試験でも平均水準より高い得点が求められるケースもありますが、何といってもその分野での飛びぬけた能力が必要な上、特定のスポーツや芸術分野に極めて強い学校 (や教官教員) もあるため、志望校選びの基準が一般の大学と比べて異なるケースが多いでしょう。