知能指数ゥ センサンビャクウゥ!(チーン)「IQ」
「IQ」(Intelligence Quotient/ 知能指数) とは、主に人間の知的機能を相対的に評価するための検査における得点数値のことです。 もっぱら児童の段階で質問票への回答で測定し、学校教育の場でそれぞれの知的能力に応じた教育の実現や潜在能力の発見、知的障害の評価と適切な支援などのために用いられます。 ある年齢における成熟度 (精神年齢) や知性そのものを測ったりしますが、そもそも知性という 概念 自体があやふやなため、ある程度の目安にはなっても、絶対的な評価となるわけではありません。 とはいえ一般的には、IQ が高いほど頭が良いとイメージされるでしょう。
IQ 測定に用いる検査方法はいくつかあり、また時代によっても変わりますが、ひと昔前までは田中ビネー式と呼ばれる検査が日本の学校などで広く実施されていました (2歳〜成人まで)。 その後人権的な配慮などもあり、以降は希望者によるおおむね任意の測定のみとなっています。 測定内容も検査対象によって異なりますが、認知・記憶・数・言語・思考などが代表的です。 そして設問の対象年齢とそれが解けた (解けない) 被験者の実年齢との差を見て成熟度・発達度を判定します。
この他に現在広く用いられているのは、国際的にも評価が高い WISC-IV (児童向け知能検査のバージョンIV) の日本版でしょうか。 5歳から16歳11ヶ月までの児童の知能を測定する包括的な臨床検査で、他の検査方法も合わせ、病院や公的な教育支援センター・子育て支援センターなどで原則自費負担で受ける形になっています。 なお成人向けは WAIS、幼児向けは WPPSI となります。
ちなみに成人でも高齢者を対象とした場合は、IQ とはまた違った知的活動についての判定指標があります。 代表的なのは 1996年にカナダのケベック州モントリオールで作成された MoCA (モントリオール認知評価/ 日本版は MoCA-J) で、こちらは記憶力や注意力、抽象概念、見当識などを通じて、高齢者の認知機能の評価や認知症 (痴呆) の早期発見のために行われます。
IQ分布
IQ分布 |
IQ 自体は平均100を中央値とした 偏差値 で表現され、85〜115 (標準偏差) の間に68%の人が入る左右対称の山型・釣鐘型の分布となっています (ガウス分布)。 この範囲が平均的な知能 (期待値) とされることが多いでしょう。 70以下 (自治体によっては75以下) は知的障害があるものと判断され (約2%)、70〜85 の間は境界知能 (ボーダー) あるいはギリ健 (ギリギリ健常者) と呼ばれます (14%)。
逆に130を超えるような数値についてはしばしばギフテッド (神から授けられた才) あるいはギフテッド児と表現され、天才 (の知能) と表現されることも多いかもしれません。 ただし正規分布によるIQ130以上は全体の約2%ほどにもなり、一般に天才からイメージする人物像としてはやや数が多すぎるきらいがあります (学校の1クラスに1人弱、日本全体では約250万人が天才みたいなことになってしまいます)。
もともより IQ の数値だけでその人の知的能力の全てを把握することはできませんし、また知的能力がその人の人間としての価値を決めるものでも全くありません。 しかし現実問題として高い IQ = 高い知的能力は生きていく上でとても大きな アドバンテージ でもあり、IQ を巡る悲喜こもごもがあったりもします。
全体的に高いか低いか、あるいは一部が突出しているか
学校の成績や模試の偏差値、学歴、難関資格、教養といった後天的な要素が小さくない知的基準は、家庭や周囲の教育に関する意識といった 環境 にも大きく左右されます。 どれほど優秀な子供でも、家の経済状況や親の教育や学業に対する無関心、あるいは敵視すらする状況では進学もままなりません。 IQ はそれらに比べ後天的な影響がさほど大きくなく、脳の発達初期である乳幼児期 (臨界期・敏感期) の栄養状態や育て方などの影響はあるにせよ、本人の生まれながらの 「素の能力」「脳のポテンシャル」 といった俗な ニュアンス が強くイメージされるものです。 近年では同じような意味で 地頭 といった言葉も使われるようになっています。
知能の発達には様々な能力や特性があり、それぞれが相対的なものなので、いわゆる発達障害なども、一般に広がっているイメージとかなり異なる部分があります。 端的に云えば、知能に関わるあらゆる能力や特性がまんべんなく平均して発達しているのがバランスの取れた好ましい発達であり、例えばほとんど全ての要素が一般人平均より遥かに高く IQ スコアが上位にあっても、一部の能力や特性が平均や平均より少し高い程度に留まっていた場合、その部分が足かせとなって様々なトラブルや社会生活の困難を招き、発達障害の傾向があると判定されるケースもあります。
発達障害=平均以下の能力だ、という訳では必ずしもなく、また特定分野で極端に高い能力がある、という訳でもありません。 あくまでケースバイケースであり、漠然としたイメージから自分や他人の能力や特性を決めつけるのは危険です。 もちろん 「それが自分の個性だ」 と思えないほどの生き辛さを感じるなら、きちんと医療機関にかかりましょう。
IQ を巡る社会的役割や、国や民族がもつ傾向
IQ 判定を児童ではなく成人に対して行う場合もあります。 一度も測定したことがなくて自分の知的能力を知りたいとか、障害者手帳の申請や何らかの公的支援を求めるために本人や家族などが受診を決めることもあります。 就業の条件に一定以上の知能指数を求めるなどは人権上許されないものとされていますが、かつては軍事指導者や指揮官らの選抜に用いられたり、宇宙 開発 など失敗が許されない大規模な国家プロジェクトなどで用いられることもありました。
ちなみに国や地域別の IQ スコアの平均値も様々なところからでていますが、日本や中国・韓国・台湾・シンガポールなど、おおむね東アジアや一部の東南アジアの国々が上位を独占している状況です。 また IQ スコアだけでなく、学力テストや学術論文数、ノーベル賞受賞者数、識字率など様々な条件を組み合わせた調査でも、おおむね同じ結果となっています。 日本は 世界ランク 1位〜5位あたりで安定しているようです。
IQ1300といえばプリンプリン物語のルチ将軍
マンガ や アニメ の キャラクター にも、高い IQ を持つ者がいっぱいいます。 中でも有名なのは、NHK の連続人形劇 「プリンプリン物語」(1979年) に登場するアクタ共和国の独裁者、ルチ将軍でしょう。 やたらと後頭部がでかい ルックス と、声を担当した神谷明さんによるぶっ飛んだ演技、甲高い声の決め台詞 「知能指数ゥ センサンビャクウゥ!」(画面上にレジカウンターのような加算される数値が出てきて1300でカウントが止まってチーンという音がする) は強烈なインパクトを与えるものでした。
また高IQキャラとして有名な美少女セーラームーンに登場する水野亜美 (セーラーマーキュリー) は IQ300 という 設定 になっています。 同じ300程度となる有名なキャラにはこの他、「ルパン三世」 の 主人公 ルパン三世もいます。
ちなみにギネスブックに認定されている世界でもっとも高い IQ の持ち主に、アメリカの作家マリリン・ボス・サバントさんがいます。 その数値はIQ228 です。 一方、正確な数値は分からないものの、専門家らによる推測値としてよく話題になる有名人では、歴史上最高の天才、コンピュータの生みの親と呼ばれる数学者のジョン・フォン・ノイマンで IQ300 程度とされています。 日本人が天才と聞くと真っ先に思い浮かぶ理論物理学者のアルベルト・アインシュタインで160以上とも190以上とも、レオナルド・ダ・ヴィンチで180以上とか200、詩人のゲーテで210みたいな意見があります。