続編登場でシリーズを区別する記号 「無印」
「無印」(むじるし) とは、マンガ や アニメ、ゲーム などで続編 (ナンバリングタイトル/ 正統続編) や 外伝 といった本編以外の作品シリーズ・バリエーションが後に登場した時に、それらと最初の作品 (本編) とを区別するために作品タイトルに付け加えて使われる言葉です。
例えば人気作品 「美少女戦士セーラームーン」 のアニメ版では、最初の本編シリーズ (1992年) の他、続編となる 「R」 や 「S」 などが後に制作されましたが、これらと最初のシリーズとを区別するため、「無印セーラームーン」 とか 「セーラームーン (無印)」 といった使い方で口にしたり記述したりします。 その作品専門の 掲示板 や場所によっては単に 「無印」 と呼ぶこともあります。
続編などがなければ、「セーラームーン」 だけで意味が通じますが、後から出てきた続編によってそれまでの作品の呼び名が変わる (レトロニム) のは人気作の宿命なのかもしれません。
同じような言葉で、「初代」 とか 「第1期」「シーズン1」 といった言い方もあります。 一方、続編ではなく外伝などの派生・スピンアウト作品のみとの区別の場合は、とくに 「本編」「オリジナル」 あるいは 「正編」 と呼ぶ場合もあります。
なお続編ではなくリメイクの場合、あるいは他の コンテンツ や媒体に水平展開した場合 (アニメから派生したゲームとか、ゲームから派生した小説とか) は、それぞれ原作版とかアニメ版、ゲーム版、小説版などと表記して区別しますが (さらにそれぞれが複数ある場合は、旧版新版で区別したり、年代とか監督や著者の名前で区別したりします)、「無印」 とわざわざついている場合は、最初の作品のみを指して使う場合が大半です。 もっとも、企画段階から同時進行で最初から様々な媒体で発表されるメディアミックス作品の場合はどれがオリジナルなんだという話もあり、作品ごとに基準が変わったりもしますが…。
「初代」 と 「無印」、似ているようで微妙に違うニュアンス
ところで 「無印」 という言葉自体は昔からあるのですが、おたく や 腐女子 らが作品タイトルや ジャンル の区別でこうした言葉を使いだしたのは、1977年に登場し1980年代にある種のブームにまでなったスーパーマーケット西友のプライベートブランド 「無印良品」(MUJIブランド) の影響が大きかったのでしょう。
無印良品のそれは、音読み訓読みが混ざった変則的な読み方をしますが (重箱読み)、当初は 「むいんりょうひん」 みたいな読み方をする人も結構いました。 筆者 の記憶では前述したセーラームーンの例をはじめ、特撮やゲームの世界において、1990年代前半から無印は 「むじるし」 と呼んでいたので、こうした読み方自体も以前からありましたのでそれが直接的な言葉のルーツなのかはともかく、無関係ではなかった感じはします。 セーラームーンに関しては、当時は続編である 「R」 が登場する前後から、パソコン通信 をはじめあちこちで無印といった表現で初代シリーズと後継シリーズとを区別するようになっていました。
これは特撮やゲームといった、毎年のようにナンバリングタイトルが制作される人気シリーズがたくさんあったジャンルでも同じでした。 当初は 「初代」 といった呼び方で区別するケースが多かった印象がありますが、「無印」 といった言い方がいつ現れたのかはよくわかりません。 意味も似ているようで違っている場合もあり、作品ごとに ファン の間でふさわしい呼び方がある程度定まっている場合もあります。
プリキュアシリーズとか特撮のウルトラマンや仮面ライダーは続編では 主人公 が変わりそれに伴い作品名も変わってしまうため (タイトルロール)、初代のままでも意味が通じます。 作品シリーズ=主人公の関係も、ある程度成り立ちます (それでも初代マンや初代ライダーのような表現の方が意味が伝わりやすいですが)。 しかし一部のゲームや前述したセーラームーンの場合は主人公は変わらず作品シリーズだけが新しくなるので、初代ではちょっと意味が通じません (セーラームーンに二代目はいないじゃん、みたいな)。
このあたりの使い勝手の良さが 「無印」 が普及した理由だと思いますが、無印も初代も同じような意味で使っている人もいますし、それが何を指しているのか前後の文脈を考えて理解しないといけないケースもあるでしょう。