汎用性の高さから大流行した 「ニキ」
「ニキ」 とは、「アニキ」(兄貴) のことです。
もっぱら 2ちゃんねる (5ch) といった 掲示板 で使われ、例えば相手が山田さんなら 「山田ニキ」 となります。 相手が女性の場合、姉貴 の意味で 「ネキ」 が使われます。 元々は2ちゃんねるの人気掲示板 「なんでも実況J板」(なんJ) から使われるようになったもので、直接の対象はプロ野球 阪神の金本知憲選手の愛称からでした。
金本選手のあまりの頼もしさから… 「アニキ」 間に喫煙を挟んで 「ニキ」
この言葉の 元ネタ となる金本選手は1992年にプロ入りするも、当初はあまり活躍することができませんでした。 しかし地道にトレーニングを重ね、徐々に頭角を現します。 とはいえ成績にはムラがあり、記録を打ち立てて大活躍するシーズンもあれば、不調や故障に沈む時もありました。その後 2003年に阪神に移籍すると、翌年に新監督に就任した岡田彰布監督の元、4番打者として長打を連発。 数々の怪我や障害に見舞われながらも好成績を キープ し、2006年3月31日には904試合連続フルイニング出場の世界新記録を樹立。 「鉄人」 として阪神の主力を担うのみならず、広く日本プロ野球界全体を代表するような大きな存在へと成長します。
一方、数々の好プレーでチームに貢献し評価が高まっても、苦難の時代を乗り越えたからか、チームメイトや関係者に対する細かい配慮や心遣い、謙虚さは失わず、その圧倒的な頼もしさや人望から、選手やスタッフ、ファン などから、「アニキ」 と呼ばれるようになります。 一方、熱心なファンがいれば アンチ も当然存在し、ネットでは様々な蔑称も作られ、何かと毀誉褒貶がされがちな存在ともなっていました。
そんな金本選手は掲示板でも 「アニキ」 と呼ばれていましたが、2008年5月13日の試合中、ベンチ裏でタバコを吸っている姿が映し出され、ネタ や蔑称として 「ヤニキ」(ヤニ + アニキ) との造語がされることに。 やがてヤニキ冒頭の 「ヤ」、および元々のアニキの 「ア」 も抜けて、単に 「ニキ」 と呼ばれるようになったのでした。
尊称でも侮蔑でも使われる 「ニキ」
ところで言葉の由来はともかく、「〇〇ニキ」 という言い回しは初見で 「〇〇アニキ」 だと容易に意味が読み取れますし、ネット の世界における 「なんJ」 の存在感や影響力は絶大であり、「かっこいい言い回し」 のようなイメージとしてそれ以外の場所にも伝播します。 いつしか対象を選ばず、頼もしくてかっこいい男性、ついで女性などにも、「ニキ」「ネキ」 が付けられるようになりました。
もちろん元々が 「アニキ」 と 「ヤニキ」 であるため、必ずしも頼もしさや好感を覚える相手だけでなく、例えば イキっ てる人、調子に乗っているような人に対しても、名前の後に 「ニキ」 を接尾して批判したり冷やかすような使い方もされます。 これは DQN (不良・ヤンキー) を揶揄して 「先輩」(パイセン) などと呼ぶのと同じですが、細かい元ネタを知らずとも、本来通りの尊称・蔑称両用の使い方ができるということなのでしょう。
ともあれ、使いやすさ、語感の良さ、使われる頻度などもあり、この時代を代表する大きな 2ちゃんねる用語、ネットスラング の一つだと云って良いでしょう。