見てるこちらの方が辛くなる… 「イキり」
「イキリ」 とは、そのまんまですがイキがっている状態、調子に乗ってこけ脅しの虚勢を張ったり、周囲に対して横柄な態度を取っているような状態を指す言葉です。 関西弁でいう 「意気がっている」 と同じで、ヤンキーやつっぱりといった不良少年の間では、昭和の昔から使われていた言葉です。 「調子こいてる奴」 がもっとも近い ニュアンス になるでしょうか。
こうした態度はつっぱらかっている生意気盛りの若いうちはしばしばやりがちですし、イキリ散らして偉そうな態度のわりに本人にたいした能力も実力もない場合は周囲で見ていて不快なだけでなく 痛々しく 切なくもあるのですが、とりあえず身近にいると何かと煩わしいものです。 イキリにはそうした言動を揶揄・罵倒する言い回しであり、迷惑行為に走るような人を指す厄介や 害悪、ヤンキー言葉の シャバい などと同様、かなり強めの蔑称として使われているといって良いでしょう。
「イキリオタク」「イキリ新人」 など派生語も
元々は若者言葉のひとつのような扱いをされる言葉ですが、2010年代になって ネット でも頻繁に使われるようになり、様々なバリエーションも登場しています。 もっぱら 「イキり」 の後に対象名を接尾し、例えばそれが おたく ならば、「イキリオタク」(調子に乗って目障りなオタク)、新入社員なら 「イキリ新人」(仕事もできないくせに口だけは一丁前の新入り社員) と呼んだりします。 むしろこうした使い方によってイキりという言葉の流行に拍車がかかった形でしょう。
なかでも 「イキリオタク」 が、ネットではもっともよく使われるパターンかも知れません。 これはオタクの一般化が進み裾野が広がることで、それまではオタクの世界に足を踏み入れることがなかったであろう 「人種」 までが アニメ を観たり ゲーム をやったりとオタクを自称するようになった、またそうした人がオタクが集まるような イベント や 掲示板 といった 「場」 に顔を出すようになったのが大きいのでしょう。 もっともこうした人はしばらく前からいましたから、人数が増えて目障りになり、単に指す言葉が変わっただけなのでしょうが。
なおこうした言動は、主にコミュニケーション能力の有無による交友関係の豊かさ・貧しさをあらわす リア充 や 非リア充 などの文脈でも語られることも多く、上から目線で マウント を取りがちな キョロ充 の行動パターンとの類似性も指摘されています。 また自尊心が高ぶって周囲を低く見るなどは、いわゆる 意識高い系 とも似通った状態だと云えるかもしれません。
一般に虚勢を張ったり尊大に振舞うのは、本人の心の中に劣等感や何らかのコンプレックスがあり、自己評価が低いがゆえにその裏返しとして強い態度に出ることが多いとされます。 従ってこれは他人に対して行う示威行為というよりは、自分自身を納得させ守るための無意識の行為なのでしょう。
本当に 「イキってる」 のか、周囲からのただのレッテル貼りか
生まれつきイキり言動をしがちな性格の人もいるのでしょうが、何かのきっかけでいきなりイキりだすようなパターンも少なくありません。 例えば高校デビューや大学デビューといった、進学を契機とした人間関係のリセットに便乗したイメチェンのやりすぎだったり、恋人ができた、仕事や 趣味 の世界でラッキーが続いたなどによって気分が高揚し、浮かれたりはしゃいだり鼻息が荒くなりすぎた時などです。
ただしこの場合は、周囲の人間の単なる嫉妬心やおたくの側の同族嫌悪からことさらに 「あいつはイキってやがる」 と悪しざまに云う場合もあり、どっちもどっちだったりもします。 そもそも 「調子に乗るな」「イキがってんじゃねえ」 などは、「キモイ」「ウザイ」「陰キャ」「清潔感 がない」 などと同様に根拠のない主観的・感情的なイチャモンの代表格のような言い回しですし、イキってると批判されてる方にさほど問題はなく、そう呼んでいる方にこそ大きな問題がある場合だって多いでしょう。
「おたくの分際で楽しそうにしやがって、身の程を知れ」 という文脈で 一般人 や他でもない当のおたく自身がイキリオタクを使う場合もあり、その場合はイキリオタクなどと云っている方がよほど精神的に未熟で横柄・尊大であり、イキってるのはどっちの方だと云えるかもしれません。