おたく同士の交流や、イベントの際に良く上映されていました
「マッドムービー」 や 「マッドビデオ」(MADムービー/ マッドビデオ) とは、テレビの アニメ や特撮などのテレビ番組、あるいは映画などのオープニングやエンディング、本編などの映像を ビデオデッキ や、後にはパソコンなどで 編集、再構成して面白おかしく作りかえたものです。
おたく系 のイベントや集まり、同人イベント などの際、一種の余興として 会場 で上映されることが多く、ビデオ普及以前は楽曲や音声のみ編集の作品ばかりで (複数の アニメソング/ アニソン などを組み合わせたり、アニメなどの キャラ のセリフを無理やり編集して繋げて、別の物語を作ってしまう)、「マッドテープ」 などとも呼ばれていました (IT 用語を転用して 「マッシュアップ」 などとも)。
もちろん著作権的には完全に違法で、人によっては自分が好きな作品を壊したり汚すことだと敬遠する 雰囲気 もありますが、編集スキルや機材を持っていて、さらに作品を 「分かってる人」 が作ったマッドは、場を大いに盛り上げる格好の目玉となっていました。
音声のみのマッドオーディオの時代には、アニメのオープニングやエンディング (OPやED) 曲の、替え歌なんかが良く作られていました。 また ヒーロー 物のアニメや特撮で、ヒロイン の悲鳴や息遣い (場合によってはエッチなあえぎ声に聞こえなくもないw) ばかりを摘出してうまく繋いで、オーディオブルーテープに仕立てているようなツワモノもいました。 この音声テープだけの時代は結構長く、マッドではありませんが、筆者も宇宙戦艦ヤマトなんかは、ラジカセで録音して 絵 は記憶でたどるような感じで
MAD(マッド) の語源は、ある同人サークルの作品から
ちなみにマッドテープ (MAD TAPE/ それから転じたマッドムービー、マッドビデオなど) の直接的な語源は、初期の コミックマーケット で、アニメなどの楽曲を編集して同人音楽テープとして 頒布 していた 同人サークル の作品、「MAD TAPE」(マッドテープ) に由来します。
絶妙な編集手腕で当時大人気を得ましたが、楽曲の権利を管理する当時のレコード会社からクレームが入り、発売を中止しました。 ある意味、サンプリング楽曲の走りのような作品でした。 替え歌などを含むキチガイテープなども、SF系の集まりやコミケなどで頒布されたり披露されていました。
ラジオの深夜放送で、マッドニュースとも呼べる 「NHKつぎはぎニュース」 なんてのも
またニュース番組などのアナウンサーの声をつぎはぎした 「マッドニュース」(MADニュース) が話題になったこともありました。 有名なのはラジオの深夜放送、「タモリのオールナイトニッポン」(ニッポン放送/ 1976年10月16日〜1983年9月28日) の中で、NHKのニュース報道の音声を編集した 「NHKつぎはぎニュース」 でしょうか。
元々抑揚がなく定型なしゃべり方をするNHKのアナウンサーならではの遊びで、まったく関係のないニュースの単語などを入れ替えて面白おかしく別のニュースにしてしまうもので人気がありましたが、当のNHKからニッポン放送に強いクレームが入り、わずか3ヶ月足らずで終了、その際タモリがブチ切れの コメント を放送で行っていたのが印象的でした (^-^;)。
ちなみにタモリさんは当時大ブームとなっていた BCL (海外の短波ラジオ放送などを聞く 趣味) の専門番組をラジオで持つなど (BCLワールドタムタム)、ちょっと捻った知的なギャグ、密室芸ともどもオタク系に親和性の高いタレントさんで、このへんはかなり影響したんじゃないかな…って感じがしますね。 少なくとも、いわゆる 空耳系 の 「MAD」 については、「空耳アワー」 のある 「タモリ倶楽部」 の影響なしには語れないでしょう。
ちなみの蛇足で、BCLワールドタムタムは松下のスポンサー番組でしたが、SONY が TBSラジオ系でやっていた BCL番組に 「BCLジョッキー」 ってのがありまして、これのパーソナリティは、あの宇宙戦艦ヤマトで人気絶頂の富山敬さんでした。 また東芝がスポンサーの番組、「ハロージーガム」 というのもあり、こちらの 司会 は肝付兼太さん (ドラえもんのスネオですw)。 筆者は BCL をやってましたから、これらの番組を当時ワクワクしながら聴いていまし
ビデオの本格的普及、そしてレーザーディスクの登場で、劇的に進化したマッドムービー
ビデオデッキが一般家庭に入って来たのは 1975年5月10日、SONY よりベータマックス規格初のビデオデッキ 「SL-6300」 や、翌 1976年10月、ビクターより世界初の VHS ビデオデッキ 「HR-3300」 が発売されてからですが、当時は社会人になりたての若者が気軽に手を出せるような値段ではありませんでした。 これらの機種は大卒初任給の3倍程度の価格であり、さらにデッキ本体の値段もさることながら、記録媒体となるビデオテープがとても高く (1時間テープで 4,000円〜5,000円程度)、また3倍速もありませんでした。
したがって週1の番組を上書きせずにずっと録画し続けて保存するなど、よほどお金に余裕がないと無理でしたね。 また編集には複数台のデッキやテープが必要になりますから (最低2台)、本格的にマッドムービー (MADムービー/ ビデオ) の時代が始まるのはやっと 80年代に入ってからでした。
現在でも比較的知られている当時の有名な作品に、聖戦士ダンバインのOPの替え歌 「農耕士コンバイン」(秋田大学アニメーション製作研究会/ 1985年頃) なんてのがありました (オリジナルは曲を借りただけの自主制作アニメ、後に実際のダンバインアニメ動画と組合させれてマッド化)。 この頃は徳間書店の 「アニメージュ」(1978年7月1日創刊) などの雑誌も創刊され、本格的なアニメブームの真っ最中でした。
1980年にはテレビアニメ 「J9シリーズ」(1981年10月〜1984年1月) のネーミングの元ともなった、アニメ ファン 垂涎のビデオデッキ、「SL-J9」(ベータマックス ジェイナイン) が発売。 高い スペック を持つ高性能機の登場とともに、次第にデッキもテープも安価になって行きます。 それに伴い、アニメファン、SFファンの集いで、漫画研究会やアニメ研究会が次々に作ったこうしたビデオが紹介されるようになっていました。
パターンとしては、他の作品との類似点を探して別の作品の似たキャラを入れ替える、同じ名前のキャラを入れ替える、演出上ちょっと謎な部分を拡大 解釈 して別の意味にしてしまう…などなど、アニメや作品をかなり深く知っていないと作れず、見るほうにもそれなりの レベル を要求するような作品が多かったですね。 この辺は、同人漫画における 「ダブルパロディ」 などに近いテイストです。 あるいはアニメや特撮キャラの動きを切り貼りして、当時のヒット曲 (ピンクレディーや西城秀樹あたり) の振り付けにしてしまうようなものまでありました。
様々な名作がありますが、インターネット 時代の傑作と云えば、「僕が好きなのは子供〜♪」 と軽快なメロディで歌われる 「僕はロリコン」(劇団ビタミン大使 "ABC" 内 KAWAI) の楽曲に、様々なロリアニメ、美少女アニメの キャラ絵 を被せた一連のロリコンの ネタ の MAD でしょうか。 wmv や avi、mpeg などの動画ファイルの他、フラッシュなども様々なバージョンのものが出回っていますが、曲自体も一連のこれで初めて聴いた人が多く、筆者的にも かなりインパクトのあるものでした。
パソコン通信の時代が始まり、さらにパソコンで動画が安く簡単に扱えるように
パソコン通信 の時代は 1985年4月1日、電々公社が民営化しNTTが発足、パソコン通信用モデムの利用が可能となり、5月に商業パソコン通信ホスト局 「アスキーネット/ ASCII net」 が開局したことで始まりました。 当時は回線速度も遅く、動画などのやり取りは出来ませんでしたが、SF大会やコミケなどで手渡しで行われていたマッドテープやマッドムービーのやり取りが、ネット 上で情報をやり取りし、郵便を使うことで加速していった時代でもあります。
また CG (コンピューターグラフィックス) は8色や16色の MAG などの時代でしたが、複数のCGをパラパラ漫画のように表示でき、MIDI による音楽も載せることの出来るソフトやフォーマットが登場し、「マッドのエッセンス」 だけを小さいファイルサイズで作ってネット上にアップする人たちも出てきました。
有名どころは MASL (マッスル/ NEC PC-98シリーズ、および互換機用の、簡便なアニメーション作成&再生ツールで、「Memorymapped Animation Scenario Language」 の略) などがありましたが、一発ギャグ的なマッドアニメが大量にネット上に溢れていたものです。 この頃になると、SF大会やコミケ以外にも多くの中小イベントが立ち上がり、さまざまなマッドムービーが会場で上映されていたものでした。
90年代に入るとパソコンによる動画編集が一般家庭でもかなり手軽に行えるようになり、それを CD-ROM に焼いて簡単に持ち運べるようになりました。
フラッシュの登場、そして YouTube (ユーチューブ/ ようつべ) の出現、MAD と AMV との融合…
現在では簡便なマッドは、フラッシュで手軽に作れてしまう時代です。 動画や音声を切り貼りするだけでなく、作者 が簡単なアニメを作って、それに動画の音声をかぶせたような手の込んだものもあります。 さらに2005年にサービスを開始した動画を 共有 するサービス 「YouTube」(ユーチューブ/ ようつべ) の出現で、Winny などデータ共有ソフトに二の足を踏んでいたユーザも手軽に動画にアクセスする方法を得ました。 それをパソコンで見るだけでなく、携帯電話や携帯ゲーム機でどこでも見れるのですから、すごい時代になったものですね。
YouTube |
ニコニコ動画 |
ただし、昔も今も、マッドが著作権的に問題があり、アンダーグラウンドなもの、こっそりやり取りされるべきもの、知る人ぞ知る、分かってる人だけが分かる、限定 されたメディアであるのには変わりはありません。
YouTube の登場で、前出した 「農耕士コンバイン」 など過去の名マッドが発掘・再評価される一方、次々作られるマッドは短期間で消費され、ネタも旬であるのが重要となり、さらに法的に問題があるがゆえにすぐに消えてゆきます。
誰でも簡単にマッドが作れる時代になっても、作る人は作るけれど、作らない人は作りません。 法律違反の 「だめなもの」 という認識を持ち、節度を持って、職人さんの鮮やかな仕事に感謝しつつこっそり楽しむのが一番なのかも知れません。
なお欧米では日本のアニメなどの見所を編集してまとめ、適当な音楽を BGM として被せて作る 「AMV」(Anime Music Video) というものがありますが、こちらは日本の MAD とはまったく異なった生まれ方と発展をしています (ただしコミケの前身が日本SF大会であり、日本SF大会は世界SF大会 (ワールドコン/ World Science Fiction Convention) の日本版のような立ち位置での開催でしたし、ワールドコンでは日本でいう MAD やコスプレ、ファン創作のようなものがありましたので、同時多発的な収斂進化のようなものがあるとは云え、まったくの無関係という訳ではないと思います)。
日本にもこの種の見所シーンと音楽を詰め合わせた似た作品がありますが (特定キャラの出演シーンと、そのアニメキャラのキャラソンを被せたイメージビデオ、PVのようなもの)、こちらはアイドルミュージッククリップのアレンジのような感じで、AMV と直接の関係はないと思います。 もっとも YouTube などの登場で日本の MAD と AMV との融和は起こり始めていますし、今後はどうなるか分かりませんけれど。
代表的な MADムービーのカテゴリ、様式
つぎはぎ 入れ替え系 | アニメ番組や音楽などの再編集版。 同じ作品内でシーンとシーンとを継ぎ接ぎして別の意味や内容にしたり、セリフや動き、歌の歌詞を継ぎ接ぎして別のストーリーや曲を作り上げたりします。 一種のリミックスといって良いでしょう。 また予想もできないような別の作品のシーンを突然混ぜて作ったりして、意表を突く内容になったりもします。 |
リピート系 | 例えばアイスキャンデーを舐めているシーンの動きを、延々と繰り返して作るような動画やオーディオデータのことです。 見ているとだんだんとエロく感じてくるから不思議です (不思議じゃないです)。 |
早回し スロー再生 逆回転系 | そのまんまですが、動画や音声データを早回ししたりスロー再生したり、あるいは逆回転させた動画や音声データです。 アップテンポの曲をさらに速くしたり、再生速度を変えることによる音声データの変調 (早回しだと音声が高音に、スローだと低音になります)、さらに逆回転で予期せぬ面白い言葉が突然現れるなど、実験精神溢れる一発ギャグ系のネタ動画になります。 |
吹き替え系 | アニメなどのキャラクターのセリフを、他のアニメや番組などのセリフと入れ替えて再現したり、それを継ぎ接ぎして別の物語にしたりする、作るのがかなり大変な MADムービーです。 たいていはある種のダブルパロディとなっています。 |
空耳系 |
本来のセリフや歌詞と違った意味に聞こえるようなセリフ、歌詞に、字幕などをつけて独自のシーンやストーリーに仕立て上げるもので、MADムービーの中でも 動画共有サイト などではもっとも人気のある ジャンル のひとつです。 多くの場合は素の状態で空耳に聞こえるシーンや楽曲が選ばれますが (ネイティブ空耳)、上記のつぎはぎや早回し、スロー再生や逆回転と組み合わされて作られるケースも少なくありません。 |
偽字幕系 | 洋画などで外国語で喋っているシーンに、偽の字幕を入れる MAD 作品です。 一人の登場人物が延々と演説や回想を述べているようなシーンがあわせやすく、映画 「フルメタル・ジャケット/ Full Metal Jacket」 での、鬼教官・ハートマン軍曹の新兵への檄や、「インデペンデンス・デイ/ Independence Day」 でのアメリカ大統領の出撃前の演説シーン、「ヒトラー 〜最期の12日間〜/ Der Untergang」 での、将軍たちを前にしてのヒトラーの激昂あたりが お約束 でしょうか。 |
ダイジェスト 総集編系 忙しい人のための系 |
アニメ1話分の内容を5分とか3分とか、あるいは1分とかに短くまとめたダイジェスト版のことです。 中には 20話分以上ものシリーズ全てをまとめるものもあります。 どのシーンをどう組み合わせてストーリーの核心を捉えるか、さらにその捉え方が作者の独特の視点で面白みのあるものかが、このタイプの MAD ムービーのキモになります。 似た系統のものに、「忙しい人のための」「とっても忙しい人のための」「超忙しい人のための」 などの総集編をうたった動画もありますが、これは カテゴリ としてはダイジェストではなく 「つぎはぎ」 に近いものが多く、どれだけ笑える内容になっているかが勝負になります。 「5秒でわかるシリーズ」(○○ in 5 seconds) といった形で、海外ユーザが作ったものもあります。 |
超編集 魔編集系 | ダイジェスト系やつぎはぎ系に近いもので、例えばアニメなどの特定キャラクターの登場シーン 「のみ」 をひたすら集めたような動画がこう呼ばれるケースが多いようです。 本来の意味では 「素晴らしい MAD」 の賞賛表現になりますが、特定シーンやキャラのみを動画などから選び出すのはかなり大変なので、結果的に力作揃いとなり (しかも作者の病的なまでの情熱も感じられる)、こう称される場合が多いのでしょう。 |
同時再生系 | 複数の動画を1つの画面の中に並べた動画です。 例えばアニメの OP やヒーロー・ヒロインの変身シーン、名場面などを再現した動画と、オリジナルの動画を並べて見比べたり、パクリとパクられの比較、あまり似ていないけれどほんの些細な共通点を無理やり繋げて笑いを取るなど、様々なものがあります。 |
人類滅亡 |
アニメや映画、テレビ番組などの衝撃的シーンの後半に、地球に隕石が衝突して人類が滅亡するシーンを付け足したもの。 お笑い芸人のギャグで例えると 「ガチョーン」、マンガ の 「ちゅど〜ん」 という爆発オチ みたいなもんで、最後に取りあえず人類滅亡させとけば収まるわ、みたいな感じなんでしょうか。 二夜連続シリーズのNHKスペシャル 「気候大異変―地球シミュレータの警告」(2006年2月18日〜19日放映) という番組の中で放映された隕石衝突シーンのCG動画に、ドリフの 「8時だよ全員集合」 の前半コントの終了音楽 「ドリフアタック」(盆回し) をかぶせて無理やりつなげるのがお約束です (初期はBGMなし)。 似た系統の動画は昔からあり、「○○で宣戦布告」 でいきなり戦争が始まったり、ビルの倒壊シーンを重ねたりはちょくちょく見かけるものでした。 |
手書きMAD | 自主制作のオリジナルアニメ (手書きアニメ) と MAD の中間のような作品。 既存の素材 (ムービー、音楽、エフェクト) などを一部利用しながら、新規描き起こし、もしくは既存作品の作画・動画のキャプチャー画面からのトレースによるイラストでアニメ作品を作ります。 実際のアニメ作品よりは動画の数が少ない (間引く) しているケースが多く、動きは多少ギクシャクしますが、それでも1分間程度の作品だと膨大な動画枚数が必要で、MAD の中でも非常に手間のかかる作品だといえます。 |
モーショングラフィック タイポグラフィー | モーショングラフィックとは、グラフィカルデザインに動きや音楽を加えたもので、文字 (テキスト) や矢印、線 (ボーダー) などが調和を保ちながらアニメーションします。 例えばタイポグラフィー (タイプライターの打刻のように、一文字ずつ現れる文字の動きやその発展系) を使った音楽MADの場合、歌詞のテキストが音楽にあわせて目まぐるしく動き回ったりします。 欧米では昔からある表現方法で、日本でもテレビ番組のオープニングなどで、タイトルやスタッフロールなどが動き回るコミカルな演出でおなじみです。 クールな印象があり、音楽や一定のリズムにシンクロしたスピーディーな動きには見ていて爽快感がありますが、作るのはかなり大変 (死ぬほど面倒) です。 |
実写版 リアル系 | 実物の人間がアニメや ゲーム などのOPやED、クライマックスシーンを演じ、その様子を撮影して再現したもの。 ちょっとしたOPひとつでも、人を集め、コスプレし、演技の練習をし、撮影し、編集し…どれほどの手間がかかってるか予想もつかない、MAD の王様とも呼べる MAD。 しかし出来が悪かったり、おふざけで作ると、ひたすら叩かれてしまう実り少ない冒険。 ちなみに筆者は、カカフカカ企画の桜井勝朗さんのとりこです。 |
作業用BGM 集中作業用BGM 作業妨害用BGM | ある テーマ に沿った曲を集めた音楽メドレー動画で、40分間とか60分間を超えるなどの長時間のものが多いのが特徴です。 とくに気合の入ったものは、「集中作業用BGM」 などと呼ばれる場合もあります。 仕事やパソコン作業などのBGMとして使ってくださいといったものですが、音楽データをそのままメドレーにしているので、基本的に取り扱いは、著作権法の上ではかなりのブラックです。 なお 「作業用」 とはなっているものの、むしろ気が散ってしまうようなメドレーとなっているものもあり、この場合は 「作業妨害用BGM」 などと呼ぶ場合もあります。 |
AMV Anime Music Video | アニメなどの見所シーンを再編集したものに、好きなバンドやグループの音楽をかぶせたミュージッククリップのような作品。 欧米ではこのタイプの動画作成が多いようです。 |
盛り上がる MADムービー、個人的に好きな作品あれこれ…
…ちなみに個人的ヒット作は、ダンスが良く動くと評判だった 「涼宮ハルヒの憂鬱」 のエンディングと 「MUSASHI GUN道」 をあわせたMADムービーだったりします。 腹が痛くなるほど笑ったマッドは久々でした。 それと、ゲーム 「Age of Empires II」(Microsoft) と 「くそみそテクニック」 のダブルパロディMAD、「町の人テクニック【AOC+くそみそ】」 は、笑いすぎて涙が出てきました…。
作家さんで云うと、「マンコ特集/ PUSSY Feature」「チンポ(チンコ)特集/ All people are loved Penis features」「肛門特集/ Anus feature」「入ってる!特集/ Insert feature」「ホモエさん/ HOMOESAN」「エロい腰の動き特集/ Fuck experts」 などなど、膨大な作品がある giponko1970 さん (ようつべ投稿者名なので、作家名かどうかは不明) ですか。 この人はいろんな意味で、ほんといろんな意味で、天才 だと思います。
それと、実写系MAD作品ファンで知らない人はいないのではないか…? とすら思うカカフカカ企画の桜井勝朗さん、いつかサインが欲しいです。
MADムービーのこだわり版、超編集、鬼編集、魔編集というジャンルも
超編集、鬼編集、魔編集とは、例えばあるアニメの特定キャラクターに萌えている人が、アニメからそのキャラが登場しているシーンのみをつぎはぎして作った作品です。 前後を入れ替えたりストーリーを変えたりといった加工は一切なしで、ただひたすらそのキャラのみを追いかけます。 「もう○○しか見えない」「ずっと○○のターン」 という訳です。 編集内容は徹底していて、ストーリー上どれほど重要なシーンであってもそのキャラが登場しなければ全てカット、逆にそのキャラのものであったら足の一部、影や、スタッフロールの文字であっても漏らさず採録します。
アニメにはオープニング曲やエンディング曲がつきものですが、その場合もそのキャラが画面に出ているシーン (もしくは歌を歌っているならその歌唱シーン) のみを切り貼りするため、歌詞が変わってしまう場合があります。 その特定キャラのファンは、そうした寸詰まりの歌詞を覚えていて、それを歌えたりします (例えば萌えると評判のアニメ版第5期 「ゲゲゲの鬼太郎」 の ねこ娘パートの場合、OP曲の歌詞は 「おばけにゃガッ ゲッ ゲゲゲのゲ〜」 となります。
キャラではなく、シーンに特化した超編集、鬼編集、魔編集もあります (神編集は単に編集技術が素晴らしく上手な場合にも使うのでちょっとニュアンスが違います)。 パンチラシーン だけをひたすらつなぎ合わせて編集したり、うなじや首筋だけをつなげたもの、足首だけとか、作品を横断して採集しているケースも多いようです。 昔はビデオからの編集なので大変な手間がかかりましたが、今は DVD やデジタル録画のデータをパソコンで編集できるので、かなり楽になりました。 とは云えやっぱり多大な手間がかかるのは当然で (抜けがないようチェックするのも大変です)、こだわりがもっとも大きなジャンルとは云え、またすさまじく時間や手間のかかる作品ですね。
最近 (2007年) のこのジャンルでは、質、量、放映後から発表までのスピード、キャラこだわりや編集の完璧主義のレベルなどから、前述したアニメ版第5期 「ゲゲゲの鬼太郎」 の ねこ娘パートのみを採集した 「まるごとねこ娘」 がすさまじいデキとなってます。
MAD の作り方は人それぞれ…ツールを開発するツワモノも
実際に MAD を作る場合、フラッシュならフラッシュ作成ツールが、動画なら動画編集ツールが必要ですが、MAD ならではの編集作成の課題もあり (音楽との同期、字幕挿入、音量やアスペクト比、動画形式などが異なる動画との混交、秒単位どころか、フレーム単位での切り貼りなどの複雑な編集)、またいくぶん安価になったとは云え、動画関係のアプリケーションソフトウェアは価格も高くて、若い MAD 作者が手を出しにくい状況にあります。
ただし 「パソコン通信」 の時代でもそうであったように、需要 があれば作品が作られ、作品を作るのに不都合があれば、そのための道具類が作られるのがネットの世界。 フリーウェアの動画編集ソフト、変換ソフトもかなり出回っていますし、アニメ作画支援ソフトやモーショングラフィックスソフト (ニコニコ動画利用者によって作られた 「NiVE」 などが有名) も出回っています。
商業 メディアの世界でも、「ポストプロダクション」(ポスプロ) と呼ばれる、動画や音楽の撮影・録音後の全ての作業、あるいは最終工程や仕上げを行う会社やチームでの作業形式が増えてきました。 広告代理店経由の制作などは最低限とし、自社で抱えたポスプロでCMやネット用の動画 コンテンツ を作る企業も増えています。 広告媒体に 「YouTube」 や 「ニコニコ動画」 を選ぶパターンも増えていますが、これから 「MAD」 の世界と 雰囲気 も、何か新しい展開を迎えそうです。