もはや現場の会場施設に備え付けの何かのよう… 「備品」
「備品」 もしくは 「施設の備品」 とは、主にアイドルや演劇関係における一部の ファン の間で使われる言葉で、コンサートやライブ、とくに演劇やミュージカルといった催しで演劇公演の全日程に参加すること、いわゆる 「通し」 で鑑賞する人、現場 の常連すぎる常連さんを指す言葉です。
これらの公演や イベント は、おおむね劇場やライブ会場、コンサートホールといった 会場 で行われますが、全日程通しで参加・観賞するコアな 現場組 が、もはや会場施設の備品と同じ状態 (ずっとそこにある、備え付けられているかのよう) になっていることから、「備品」 や 「施設の備品」「その公演が行われる劇場名+ 備品」 といった形で呼ばれるようになりました。 これはキャストやスタッフでさえも中途で交代することがあるので、比肩しうるものはもはや備品しかないという状況をあらわした言葉とあります。
なおこの言葉が生まれるきっかけは、1993年夏から始まったミュージカル版 「美少女戦士セーラームーン」 の熱心なファンの間 (とある 同人サークル の参加メンバー) であり、造語されたのが1995年頃だったこともあり、毎回通しで観劇するファンを 「池袋サンシャイン劇場の備品」(当時同ミュージカルが上演されていた劇場の備品) と呼ぶようになったことがその発端・元ネタ となります。
似たような言葉にはこの他、「おまいつ」(お前いつもいるな) もあります。
「時間・お金・努力」 の3拍子が揃ってないと通しで見続けるのは困難
ミュージカル版 「美少女戦士セーラームーン」 は、人気作品のミュージカルであり、最初期のファン感謝イベントの企画から始まり、後にはメディアミックスの一環として本格的な公演が行われるようになったものです。 多くの演劇やミュージカルの舞台がそうであるように、公演期間は数週間に及び (最小で12回公演、最大で43回 (ショー形式のものを除く)、土日はもとより平日公演もあり、さらに同日中に午前の部・午後の部といった2公演が組まれることがあり、「通し」 で観劇するのはかなり敷居が高いものでした。
公演地は主に東京の池袋サンシャイン劇場でしたが、大阪や名古屋などに遠征することもあり、またセーラームーン人気もあってチケットも非常に取りづらく、「時間・お金・努力」 の3拍子が揃ってないと、とても通しで見続けられるような公演ではありませんでした。 その意味では 「施設の備品」 という呼び方は、突き抜けたファンに対する半ば賞賛、半ば呆れた尊称と云えるでしょう。
ちなみに 筆者 もセーラームーンミュージカルは好きでそこそこ頑張って観に行ってましたが、初日と千秋楽 (最終日) と間にどこか1日くらいを見るのがやっとで、あとは地方公演があれば行ける範囲で行く程度でしたが、それでも仕事の日程の調整やらチケット争奪戦やらで苦労したものでした (とくに千秋楽のチケット取りは 難易度 が高かったです)。 そんな公演に毎日毎回参加し、訪れれば必ず劇場にいるファンというのは、やっぱり 「もう備品と同じやん」 と思わざるを得ませんでしたw
蛇足ながらセーラームーンミュージカルはその後いったん一区切りがついた後、キャストやスタッフ、運営 などが変わる形で何度かリバイバルされていますが、筆者は仕事で関係者とちょっとしたご縁があり、キャストさんなどと親しく話をする機会を得ることになりました。 いわゆる 2.5次元ミュージカルの中でも長い歴史を持つビッグタイトルの一つでもあり、キャストさん自身も熱心なセラムンファンだったりセラミュファンだったりもして、これほど多くの人が情熱を傾ける作品にファンとして触れられたのは幸せなことだなと思ったりもします。