聞くだけで、言うだけで、心が痛む 「ちくちく言葉」
「ちくちく言葉」 とは、他者への言葉がけ、会話中の話題や言葉の選び方において、相手の心を傷つけるようなものを指します。 一般的な悪口や罵倒と同じ意味であり、例えば 「バカ」「アホ」「ウザイ」「死ね」「何をやってもダメだな」 などがそれにあたります。
元々は1990年代初めに精神に障害を持った人のコミュニケーションや感情コントロールなどの能力向上、リハビリテーションのための訓練・支援のひとつである SST (Social Skills Training/ ソーシャルスキルトレーニング/ 社会生活技能訓練) とそのプログラム・教材が生まれ活用される中、一部を子供の社会生活訓練向けの内容として利用する中で用いられた 概念 や言葉です。
他者を傷つけ不快にさせる ネガティブ な言葉や言いまわしを 「ちくちく言葉」、反対に相手の心をいたわり励ます ポジティブ で温もりのある言葉を 「ふわふわ言葉」 とし、「日常生活の中でふわふわ言葉を増やすことで結果的にちくちく言葉を減らせる」「円滑なコミュニケーション能力を学び身に着ける」 ことを目的に提唱されるようになっています。
元々他人を攻撃するような会話や言葉は、相手の心に チクリ と 刺さる 「棘のある言葉」「とげとげしい言い方」 のように表現されています。 これを子供にもわかりやすく伝える工夫がちくちく言葉であり、幼稚園や保育園、小学校といった場で子供の対人関係の力を育むために使われるようになっています。
意味は分からずとも、何となく云いたいことはわかる
一方、こうした取り組みが始まったのは比較的最近であり、ある程度以上の年代となるとちくちく言葉やふわふわ言葉、あるいは SST の取り組みを知らない人もいます。 しかしそもそもが子供向けの言葉でもあるため分かりやすく、ふわふわ言葉はともかくちくちく言葉は、初見でも意味がすぐに理解できるでしょう。 ニュース報道や育児を行う家族・近親者の話などを通じて面白みのある言葉、場合によっては コミュ障 を 煽る ような使い方もされる言葉としても広がったりもして、一般用語としての利用も増えています。
世の中には直接的な悪口や罵倒まではしなくとも、嫌味とか当てこすりをする人は少なくないでしょう。 とりわけ ネット の世界では、相手の顔が見えない場合も多く、いきおい激しい言葉や コメント の応酬がされてしまうこともあります。 その際に 「ちくちく言葉」 という控えめの指摘は、「悪口はやめろ」 よりはオブラートに包んだような、必要以上に相手を刺激しない遠回しな言い方として便利かもしれません。
一部の匿名系の 掲示板 などでは 殺伐 とした空気が流れ、論争やレスバも当たり前だったりもします。 また 実況・生配信の コメント欄 で、心ない発言をする人もいます。 若者が集うコミュニティによっては、利用者間の注意喚起として 「ちくちく言葉」 が使われているのを比較的見かけたりします。