このくらいがちょうど良い 「こういうのでいいんだよ こういうので」
「こういうのでいいんだよ こういうので」 とは、変に飾り立てたり凝ったり余計な細工や工夫をせず、ちょうど良いさまを賞賛する意味で使われる言葉です。 「ありのまま」「素朴」「シンプル」「庶民的」「親しみがある」「ありふれた安心感がある」 なものを指すことも多く、一般的には称賛表現の一つとなりますが、「こういうの」 という言い回しが引っかかる人もいるようです。
言葉というかこのフレーズ自体は 普通 の日本語ですが、ネット でことさらに使う場合は、マンガ 「孤独のグルメ」 に登場する 主人公、井之頭五郎が、第12話 「東京都板橋区大山町のハンバーグ・ランチ」 において街中の洋食店で出されたハンバーグランチを前にして心の中でつぶやいたセリフが 元ネタ となっています。
このエピソードでは、いつもは飄々としてあまり感情を表に出さない五郎が店舗内で感じた怒りを抑えながらも露わにしたり、この作品の コンセプト であり五郎の信条でもある 「孤独だが豊かで幸せな食事」 を述べたり、最終的には力ずくで店主に立ち向かう特徴的な話であり、またその後の店員の 「それ以上 いけない」（店主に対してアームロック （関節技） を決める五郎にそこで止めるよう促すセリフ） ともども、掲示板 などでは頻繁に使われるフレーズの一つとなっています。
なお実際の五郎のセリフ （心の中の声、独白） は、「ほー いいじゃないか」「こういうのでいいんだよ こういうので」 となります。
食べ物から女性の好み、好きなマンガまで…汎用性の広いフレーズ
エピソード的には、留学生の店員に対して横柄で乱暴な態度の店主とのいさかいがあり、落ち着いて食事がとれる 雰囲気 ではない中、思っていたより 普通に 美味しそうなハンバーグランチが出てきたことへの五郎の安堵がこのセリフには込められているのでしょう。 もっとも 「いいじゃないか」「こういうのが〇〇」 的なセリフはこのエピソード以外にもたくさんあり、特別にこのエピソードに特徴的なセリフという訳ではありません。
しかし 「思ったより普通のものが出てきて安心した」「ほっとした」「このくらいが丁度いいんだ」 という心持ちをあらわすのに最適なフレーズでもあるので、12話があれこれ話題となる中、エピソードとは切り離された形で掲示板などではよく使われています。
実際の使い方は様々ですが、例えば掲示板で 飯テロ がされたとして、オサレ で気取った超高級フランス料理の写真よりは、普段食べなれている丼ものの写真の方が食欲を喚起される人は多いものでしょう。 あるいは芸能人やアイドルの話をしている場なら、化粧がばっちり決まったスタイル抜群の美女よりは、学校で隣の席にいそうな素朴な女の子の方が、「こういうのでいいんだよ こういうので」 と云いたくなる感じです。
ただし称賛表現とは云いつつも、言葉からは 「これがいい」 ではなく 「これでいい」 という 下げ の ニュアンス が感じ取れ、そこに上から目線を感じたり、予想していた劣ったものと比較する形で安堵しつつ褒める表現に違和感や引っ掛かりを感じる人もいます。 言葉から受ける印象は人それぞれですし、あれこれ心情の機微に触れる文脈があっての言葉でもあるため、どちらが良い悪いではなく、分からない人はわからないだけのものなのでしょう。
ネットでの使われ方などを見ていると、親しみや安堵を込めた 「こういうの」 の温かみがしみじみと感じられ肯定的な受け取り方をする人の方が多いような気もしますが、こればかりはわかる人でないとわからないものなのかも知れません。 どちらにせよ、一緒にランチやディナーを囲むなら、同じ認識を分かち合える人と囲みたいものです。
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