実質的に 「企画意図」 や 「企画」 みたいな意味で使われる 「コンセプト」
「コンセプト」(concept) とは、発想やアイデア、思想、概念 のこと、それに伴う基準や行動の指針、方向性を指すこともあります。 理念やビジョンの下で、あるいはそれらと同じものとしてより具体性のある考え方や施策を指すことも多く、本来の意味はともかく俗語的な使い方でもっとも近いのは 「企画意図」 や 「企画」 でしょうか (理念などは基本コンセプトみたいな言い方をしたり)。 もっぱらビジネスや創作といった人や組織の行動に先だって設けられ宣言され、企画立案や実際の行動に関わる人、顧客や受け取り側の人たちの間でも 共有 されるものとなります。
似たような使われ方をするものに テーマ や題材、お題 などもありますが、コンセプトはその前、あるいはその上位に 設定 されるものとなります。 例えば おたく に近いところで メイド喫茶 といった喫茶店・飲食店を コンカフェ (コンセプトカフェ) と呼びますが、これは 「メイド をテーマとした独自性ある喫茶店を創る」 というアイデアや企画 (コンセプト) に基づくカフェという意味になります。 とはいえ、「メイドがコンセプトです」 みたいな言い方もされますから、あまり厳密な使い方が決まっている訳でもありません。
また ゲーム の攻略において、普通 の 攻略、最適解の攻略ではなく、プレイヤー が何らかのテーマなり 縛り なりを設けて行う企画・ネタ の要素が強い攻略を コンセプト攻略 と呼んだりします。 通常攻略などとは異なる企画性の高い 「見ていて楽しい」 攻略となります。
一般的な使われ方としては、自動車メーカーがこれからのデザインや 開発 の方向性をまとめた市販を前提としない 展示 のための車体をコンセプトカー (ショーカー・ドリームカー・ハローモデル) と呼んだり、本質的な部分や定まったセオリーにとらわれずに自由な発想で創る創作料理をコンセプト料理、コスプレ や シチュエーション に沿って作られた AV (アダルトビデオ) をコンセプトAV と呼ぶなど、様々なものがあります。
新しさや面白さ、狙いをまとめて提示するのに便利な言葉
単なる 普通 の英語であり、またビジネスで用いられる、いわゆるカタカナ用語としては古いもののひとつです。 言葉として注目を集めるようになったのは、日本ではとくに1980年前後あたりからでしょうか。 それまでの真面目で実直なものづくり、定番・タイムレス な商品開発 (技術主導型で品質や安全、信頼、適正価格といった本質的で古典的な価値観に基づくもの) に対し、新しさや面白さ、独創性、付加価値、流行、ブランドイメージ向上などを重視するビジネスやマーケティングを実現するものとしてよく用いられるようになっています。
これは日本が高度経済成長を経てバブルに向かう中で、豊かさ、モノ余りの成熟した社会にあって、極端なまでの上質さを追い求める一方、すでに必要十分な水準に達していた商品やサービスの品質や安全性、信頼を訴求するよりも、新しさや差別化を感じるコンセプトやそれをわかりやすく伝えるキャッチコピー (コピーライティング) を用いた開発やマーケティングに注目が集まるようになっていたからでしょう。 1980年代初めには、それまではマーケティングの 「裏方」 だった広告代理店やコピーライターの存在も前面に出てきて、明るく軽く面白くが持てはやされる世相の中、空前のコピーライターブームなども起こっています。
一方で 「本質的ではない」 というネガティブなイメージも
コンセプトという言葉は指し示す範囲が人によってバラバラです。 コンセプトや企画といった言葉が俗語化する中で、場合によっては企画ありきのもの、シチュエーションもの、色物、キワモノ、邪道 の意味で使う人もいます。 とくに言外に 「新規性がある」「他にはない独自性や際立った特徴がある」 という意味が強く含まれた言葉だと 認知 されていることから、結果的に単なる目新しさや話題性だけに着目した見かけ倒しといった ネガティブ な印象を持つ人もいます。
いずれにせよ一般の間で多元的な意味で気軽に使われる言葉であり、あまり厳密な定義の元で用いられるものではないでしょう。 まぁほとんどのカタカナビジネス用語や バズワード などは、だいたいそんなものではありますが。