登場人物の心と気象状態が激しくリンク… 「お天気お姉さん現象」
「お天気お姉さん現象」 とは、ドラマなど実写系の作品において、主人公 や登場人物の心象風景が作中世界の天候に影響を与えること、人物の気持ちと天気とが安易に連動・リンク したようなわざとらしい演出、ありがちな映像表現を揶揄する言葉です。
代表的なパターンとしては、例えば主人公が悲しい時に雨が降る、ショックを受けたり衝撃的なシーンで日が陰り雷鳴がとどろく、雷が落ちる、あるいは逆に、明るく晴れやかな気分やシーンでは太陽が輝く、日が差し込むなどとなります。 テレビ番組のお天気コーナーの進行役キャスターがしばしば若い女性アナウンサーだったこと、またそのアナウンサーが 「〇〇は雨」「△△は晴れ」 などと地域ごとに予想結果を示すと雨や晴れ、雪といった表示が画面にされるため、こうした名称で呼ばれるようになりました。
人物の内面を象徴する演出表現は演劇の世界でよく見られ、舞台の照明を落とす暗転、逆に明るくする明転などもあります。 これらは場面展開などでも使われる手法なので、必ずしも心の中を演出として見せているわけではありません。 しかし舞台上の演者の心理描写と連動して行われることも少なくなく、暗くなれば気分が暗くなり良くないことを暗示しますし、明るくなるならその逆ということになります。
一方、マンガ や アニメ などでも、キャラ の心象風景に合わせた画面演出 (例えば背景を黒ベタで塗りつぶす、雷・稲妻のような電撃模様が描かれる) こともあります。 ただしこの場合は物語中で実際に雷が落ちたりするわけではないので、単なる背景処理や心理状態の比喩表現だとして、ドラマや実写系作品のように 「物語世界の天候が変わる」 ような違和感が生じることは少ないようです。 もちろんマンガやアニメでも、作中世界で本当に雨や雷などの天候変化が起これば、同じように 「お天気お姉さん状態だ」 とされたりもします。
なおキャラクターが 神 や 人外、あるいは超能力を持っていて実際に天候を変える力を持っている場合も、内面の演出ではないので別の 枠 となります。 また 1992年〜1994年にわたって連載された安達哲さんの人気マンガ 「お天気お姉さん」(週刊ヤングマガジン) 及びその派生作品、2013年4月12日から6月7日まで、武井咲さん主演で放送されたテレビ朝日系列のドラマ 「お天気 お姉さん」(金曜ナイトドラマ) とは何の関係もありません。
最近はめっきり聞かなくなった 「お天気お姉さん」
ところで 「お天気お姉さん」 といった呼び方自体は、近年のジェンダー意識の高まりから、ほとんど死語のような扱いとなっています。 元々はお天気キャスターといった呼び方が多く、お天気お姉さんを 公式 に名乗った人もほとんどいない状況ではありましたが、それでも以前はわりと耳にする言葉だったんですね。
当初は気象庁が発表したデータを紹介するだけといった役割がほとんどで、その意味では気象についてはただの お姉さん ではあったのですが (台風や大雨など災害の恐れがある時のみ、専門家の男性が同時に登場するケースが多かった)、その後、1993年の気象業務法改正によって翌1994年からは気象予報士といった資格が登場、徐々にテレビ番組などのお天気コーナーの担当者がこの気象予報士と入れ替わる形となり、男性による天気予報コーナーも増えるような傾向となっています。
天気予報は 「外出時に傘がいるかどうか」「洗濯して外に干せるかどうか」 といった日々の生活に欠かせない情報であると同時に、台風や大雨、雷や竜巻など人命に係わる防災情報と密接な関係があります。 予測精度の高まりも含め、より専門性の高い重要な情報として再認識されるようになっています。 しばしば 「アシスタント」 のようなイメージが持たれがちでもあるお姉さんという言葉が時代にそぐわなくなったと同時に、天気予報の重要性が理解されてきたこととの複合作用があるのかもしれません。