一世を風靡し、関連成句や言い回し、流行語を多数生み出した吉野家コピペ
「吉野家コピペ」 とは、新爆さんのウェブサイト 「NotFound」 に掲載していた日記のうち、2001年4月7日分のエントリー (本文) のほぼ全てがまるまる 2ちゃんねる に コピー&ペースト (コピペ) されたものです。
「昨日、近所の吉野家行ったんです。吉野家。そしたらなんか人がめちゃくちゃいっぱいで座れないんです。」 で始まる26行ほどの文章で、後に文頭に 「2ちゃんねる風」 の 「そんなことより、ちょいと聞いてくれよ、>>1よ。スレッドとはあんまり関係ないんだけどさ。」 が付け加えられ、ほぼ完成したコピペ素材となりました。
全国で同時多発的に吉牛OFFが開かれるほどにブレイク
吉野家 |
当時牛丼チェーン 「吉野家」 では、同年4月4日から10日まで期間 限定 で牛丼の150円引きの割引キャンペーンを行っていて、この文章はそのど真ん中の7日に発表されました。
すぐに2ちゃんねるの吉野家 スレッド に転載される傍ら、本文中に散りばめられた面白い言い回し、転用可能な成句の魅力、固有名詞などを入れ替えるだけで他の ネタ に転用可能なこと、「汁ダク」 に対する 「ネギダク」 のおかしさなども手伝い、瞬く間に他の板などにも伝播。 2ちゃん全体を風靡する 「吉野家コピペ」「吉牛コピペ」 の お祭り を引き起こしました。
その後、アメリカ産牛肉の狂牛病 (BSE) 騒ぎ (2003年12月24日、日本はアメリカ産牛肉輸入停止)、さらにその際の吉野家側のアメリカ産牛肉輸入再開への根強い運動 (2005年12月12日に一部解禁) などが ネット の住人の一部に嫌われ、また流行から何年も経たことでコピペ素材そのものが 掲示板 などで貼られることは少なくなりました。
しかし文章内のいくつかの言い回しなどは、それを新しく書き込む本人が吉野家コピペを意識することなく使うほどに浸透し、「ネット全体から面白い言い回しを集積することでその多くが成り立っている」 2ちゃんねる的な言い回し、いわゆる 2ちゃんねる用語 の大きな一部分を作り上げた特別な存在であったといって良いでしょう。
その後の2ちゃん的言い回し、スラングの方向性をも決定付けた名作
AA や単なる1フレーズなどと違い完成したひとつの文章なので、コピペ素材化したとはいえ、ちょっと丸ごと引用という訳にも行きませんが、このコピペが 元ネタ、もしくは以前からある言い回しだったものの、この吉野家コピペによって爆発的に流行した言い回し、成句はたくさんあります。
代表的なものを以下に挙げてみましょう。
もうね、アホかと。馬鹿かと。
一家4人で○○か。おめでてーな。
よーしパパ○○頼んじゃうぞー、とか言ってるの。もう見てらんない。
○○ってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ。
問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。
お前、○○って言いたいだけちゃうんかと。
諸刃の剣。
素人にはお薦め出来ない。
こうした言葉使い、あるいはそれの変形は現在でも無数にありますが、当時いかにこのコピペの影響が大きかったのかが偲ばれますね。 なお新爆さんのウェブサイト 「NotFound」 は、現在も移転しつつ営々と更新を続けています。
後にコピペとして自身の文章がネット上で爆発的に流行っていることにほんのわずかな反応 (中島みゆきさんの歌の中で 「狼になりたい」 が一番好きで、それを思い浮かべながら作った文章だった、根底にそれがあるのを覚えておいて欲しい) はしましたが、流行中もその後も、飄々、淡々と自分のスタイルの文章を日記で更新し続けていて、筆者 も 「すごい人だな…」 と感嘆することしきりです。
こいつら、お食事気分かよ! ラーメン屋は戦場だ! 二郎コピペ
なお カテゴリ としてはぜんぜん違うものですが、同じ食べ物つながり、食べ物屋での客の 「戦い」(大食い早食いを競うロットファイトなど) をオーバーに表現したものとして、「いやー、先日のセカンドはやられました。はめられました」「小豚ヤサイマシマシニンニクカラメアブラ」 などの 「二郎コピペ」 というものもあります。
ちなみに 「二郎」 とは、東京都内や首都圏エリアに 20店舗ほど展開するラーメン屋 「らーめん二郎」(濃厚スープ、極太麺、超大盛り (デカ盛り) で知られる人気店) のことで、コピペでは、そこでの 「ジロリアン」(二郎 ファン) の食事を戦場レポートもしくは回想のような形で伝える内容と、その改変、オリジナルとなっています。