同人用語の基礎知識

ノーモア〇〇

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何かと揶揄されがちなカタカナ日本語フレーズ… 「ノーモア〇〇」

 「ノーモア〇〇」(no more 〇〇) とは、英語本来の意味では 「それ以上〇〇ない」 といった意味の言葉です。 例えば no more water で 「もう水がない」 みたいな意味になります。 その他様々な用法がありますが、日本においては単に 「〇〇はいらない」「もう結構」「不要だ」「反〇〇」 とか 「繰り返さない」「〇〇するな」「懲り懲りだ」 といった意味のカタカナ日本語としてもよく使われます。

 ノーモア表現それ自体にこれといった明確な 元ネタ はなのでしょうが、日本では政治や社会運動、思想の文脈で使われるケースが多く、また市民団体などが使うそれを大手メディアが好意的に伝える一方、それに対して反対の立場、冷ややかな見方をする人たちから揶揄として使われることもあります (後述します)。 「もういらない」 と似た使われ方をする言葉にはこの他、単にノー (no)、あるいはノーサンキュー (no thank you) もあります。

2007年から上映開始された 「NO MORE 映画泥棒」

 ネット でしばしば ネタ として使われる場合、映画館で映画上映の前に流れる 「NO MORE 映画泥棒」 から来ているケースもあります。 「映画の盗撮の防止に関する法律」 が2007年8月30日に施行されることから、その2か月前の6月30日より 「映画館に行こう!」 実行委員会の 「映画盗撮防止キャンペーン」 啓発 CM として上映が開始されています。

 CM では頭がビデオカメラで 盗撮 をする キャラ (カメラ男) と、同じく頭がパトランプの警察官キャラ (パトランプ男) があらわれ (他にポップコーン男とジュース男がいる)、盗撮行為とそれを咎め身柄を確保する捕り物をパントマイムで演じて映画の盗撮防止を訴えるものとなっています。

 これは映画館の 画面 を撮影した 動画インターネット で広がったり、海賊版 として販売される例が国内外で後を絶たず、それへの注意喚起といったものです。 コミカルなキャラや CM から一定の ファン が生まれる一方、お金を払って映画館に来た無関係の観客全員に見せる内容かといった反発も生じるなど、何かと映画を見る機会が多い おたく腐女子 の間でも話題になるものでもあります。

市民団体による 「反〇〇」 スローガンやキャッチコピーとして

 NO MORE 映画泥棒 より先にネットで話題となったり度々当てこすりされる話題として、革新系 ( に云えば左翼) の市民団体などが行う政治的主張における 「反〇〇」 活動でのスローガンやキャッチコピー、デモや抗議活動におけるシュプレヒコールがあります。 例えば軍事基地の前でそう書かれた プラカード を持って抗議活動を行うなどがよく目にする姿です。

 とくにその象徴でもあるのは、先の大戦末期に原子爆弾の 投下 がされ甚大な被害が生じた広島・長崎の地名にノーモアを接頭する 「ノーモアヒロシマ」「ノーモアナガサキ」、およびそれに関連する 「ノーモアウォー」(戦争)「ノーモアヒバクシャ」(被爆者) でしょう。 現在に続くノーモア〇〇の直接の源流とも云えるのは、これら反核兵器・反戦平和運動におけるスローガンであり、なかでもこれを用いた1982年6月の国連軍縮特別総会での長崎県の被爆者 山口仙二さんによる演説です。 有名な 「ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ナガサキ」 という核兵器廃絶の訴えは、その胸に迫る必死の訴えの姿とともに、世界に大きな反響や感銘を与えるものでした。

 ノーモアを用いたり地名をカタカナ表記にするのは、「これは日本だけの問題ではなく世界全体、ひいては人類にとって大切な問題だ」 というのを内外にアピールするため、英語や英語風の言葉にして伝えようとしているとの前提があります。 またわざわざカタカナ (例えばヒロシマ) とするのは前述の理由に加え、単なる地名としての広島県を指すわけではなく、原爆による大量虐殺や戦争の悲惨さ、その歴史を風化させず世界中の人々と連帯して原水爆の廃絶・禁止へと歩みを進める力や願いといった ニュアンス を込めた使い方でもあります。

 その後は核兵器はもとより戦争・軍事 に関わるもの、原発 (原子力発電所) や 環境人権 に関するもの、増税や福祉の縮小、その他あらゆる政治的な メッセージ にこの 「ノーモア〇〇」 が団体だけでなく個人の活動でも広く用いられるようになります。 一方であまりに様々な問題に広く用いられることによってある種の陳腐化がされたり、単にカタカナにしただけで何かを語ったような顔をすることへの反発も生じる事となっています。

 なかでも2011年の東日本大震災による原発事故が生じた福島県を 「フクシマ」 と呼ぶなどは、ある種の 地域蔑称 と受け取られたり、それによって生じる風評被害やそこに住まう人々への差別感情を醸成・強化する恐れから、強い批判を招くものでもありました。 とりわけこの時はすでに ツイッター といった SNS が普及しており、拡散 を目的としたヒステリックで過激な言動が多く見られた点もこの傾向に拍車をかけるものとなっていました。

揶揄や嘲笑の対象として 「ノーモア〇〇」

 ある程度まともな教育を受けた日本人であるなら、核兵器がもたらす結果の悲惨さは理解しているはずですし、核兵器をはじめ大量破壊兵器がこの世からなくなること、戦争が起こらない世界になって欲しいとの声にに異を唱える人はいないでしょう。 広島や長崎の記念碑や資料館を見て衝撃を受けない人は少ないと思いますし、多くの日本人にとって広島・長崎に原爆が投下された8月6日・9日は鎮魂と 祈り の日です。

 しかし反戦平和団体の一部に、日本やアメリカといった西側の軍事や人権に関しては NO を唱えつつ、ロシア (ソ連) や中国、北朝鮮といった東側のそれへの追及はしないか極めて寛容な姿勢がみられると、それは ダブスタ ではないかと不信感が生じるのは仕方がないでしょう。 また連帯や相互理解、対話や多様性の必要性を声高に訴えながら、当の反戦平和団体自身が 党派性 から分裂して互いを醜く批判したり排除しあって争う 言行不一致 の状況は、一部の団体への疑惑の目やうさん臭さを生じさせるものでもあります。

 ネットの 掲示板 (とくに 2ちゃん) などでは、これを揶揄する意図で ネットスラング のようにノーモア〇〇を使うこともあります。 その結果、あえて取るに足らないどうでもいい話題にことさらにノーモア〇〇を使って 露悪的 に冷やかすような使われ方もしばしばされます。

 例えば2006年9月11日に放映された 「NG名珍場面5000番組10万人総出演!! がんばった大賞7」 にて、出演 したある女性タレントを巡る雑音ネタ (オナラではないかと騒がれた) と、日付が同じ2001年9月11日にアメリカで起こった 「同時多発テロ」 と重ね合わせたネタでは、「放屁テロだ」「絶対に許さない」 としてノーモア〇〇 (タレントの名前) が広く使われ、その後原爆ネタ (屁爆者) とも融合しています。

 これは反核兵器や反戦平和、あるいはテロ行為そのものをあざ笑っているわけではなく、こうした 「誰も反論できない正論や 理想論 」 を振りかざして他人の批判ばかりしたり、およそ現実味のない空論を唱えるだけの お花畑 な人たちへの当てこすりやカウンターの意味があります (まぁ不謹慎ネタとして原爆ネタを面白がる人も一定数いるのは否定しませんが)。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2008年3月8日)
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