同人用語の基礎知識

艤装

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元々は船舶に関する言葉だったけれど、現在は様々な分野でも使われる 「艤装」

「艤装」(ぎそう) とは、本来は船舶を建造する際に航行できる状態へ仕上げるための工程全般を指す言葉です。 また艤装によって取りつける 装備品 そのものを指すこともあります。

 船舶はアルキメデスの原理によって浮力を得るために水を押しのけ空気が入るお椀状の構造を持つ船体の他、完成後の船の用途に応じた各種の 装備 が必要になります。 例えば風力で進むための帆船なら帆とそれを張るためのマスト (帆柱) が必要ですし、機械的な動力を推進力とするなら機関としてエンジンやスクリューが必要になります。 進行方向を変えるためには舵と、それに連動して動く船尾の 板 (舵板) も必要です。

 また用途別でいうと、貨物船なら荷役のためのクレーンやデリックといった起重機、積み荷を固定するラッシングが、客船なら乗客のための客室や内装、家具類が必要ですし、遠洋漁業用の大型漁船なら獲れた魚を新鮮に保つための冷凍・冷蔵設備や船内加工用の設備も必要です。 軍艦なら 戦闘 のための武装や 防御 のための装甲も必要でしょう。 艤装は水に浮かぶ状態になった用途別の船体にこれらを設えるための工程全てを指します。 なお 「艤」 という文字には舟へんがありますが、これは 「船首を岸に向ける」「船を備える」 という意味を持っています。

 元々は船舶や海洋分野で使われる言葉でしたが、その後は多岐にわたる分野で同様の意味で使われるようにもなっています。 例えばトラックなどでベースとなる車両 (フレーム) に対して荷台や荷箱、冷凍機やクレーン、タンクといった専用装備を施して用途に合わせた車輛にしたり、宇宙開発においてロケットや人工衛星に専用の機材や装置などを組み込む作業に対して使うなどです。 身近なところでは、建築物にドアや窓、サッシやガラスや外壁パネル、手すりといった建具や各種金物類を取り付ける最終仕上げ工事のことを指すものでしょう。

創作物やおたくの世界で使われる艤装

 マンガ や アニメ、ゲーム、あるいは特撮においては、軍事・ミリタリー に関する 作品 は元よりロボットものや SF 関係で使われたり、軍艦や軍用車両、航空機を 擬人化 した キャラクター らの艤装品を モチーフ とした ファッション を指すこともあります。 ひと昔前のロボットものなどは、最初から完成したスーパーロボットやメカが登場し、合体や変形や強化などをしつつもおおむねそのままの形で活動し、言葉も分かりやすく言い換えられたりしますが、時代を下ると実際の軍事におけるあれこれが盛り込まれ、それには言葉なども含まれます。 これは リアリティ を高めるためでもあるし、それに関連して 読者 や 視聴者 が子供ばかりではないという部分もあるし、また創り手に軍事好きが少なくないこともあります。

 取りつけとか装備、装着よりも何やら専門用語っぽい響きがあること、とくに軍事の世界で軍艦艇のあれこれに使われる言葉でもあるため、そうした 趣味 を持つ おたく らによって、日常 の会話でも使われがちな言葉でもあります。 例えば コミケ などの 同人イベント に適した服装や持ち物で身を固めることを 「コミケ特化型艤装」 みたいに呼ぶなどです。

 同様の理由により、模型やドール (着せ替え人形) の ファン、あるいは車・バイクのカスタムファンらも使いがちでしょう。 とくにファッションについては、コスプレ なども同様の使い方がされることもあります。

軍艦艇における艤装

 軍艦の世界における艤装は、一般的に他の船舶とは比べ物にならないくらい高度で専門的な作業を必要とします。 技術の粋を集めた主砲や魚雷 (発射管)、ミサイルといった武装の搭載、最新鋭のレーダーや通信・電子戦システムの架装、装甲を施したり弾薬庫の配備したり、軍艦旗や各種信号旗を掲揚するためにマストやガフ、掲揚竿をつけたり、無線通信用の アンテナ として空中線を張ったり、乗組員が長期の航海や戦闘を遂行するための生活設備の設置なども必要です。

 造船所で船体が形作られた後、これらの艤装を経てはじめて戦闘艦として稼働できるようになります。 そのため、海軍の歴史や造船の 現場 では、艦の戦闘力を決定づける極めて重要なフェーズとして扱われてきました。 それは現場や軍の技術力や建造施設の有無、戦術的な思想がどうこうと云うより、その国家が持つ技術力や工業力、ひいては経済力や国力の結晶といった部分もあります。 多大な予算や時間を費やす軍艦建造や整備は、昔も今も国家の一大事業のひとつです。

 生 と 死 が隣り合う戦闘艦でもあるため、乗員らの心のよりどころとなる礼拝所といった宗教的・文化的な施設が作られることもあります。 日本の場合、軍艦艇か民間船かを問わず、神棚が設けられることも多いでしょう。 物故者がいれば仏壇が設けられることもあります。 また魔除けや航海の安全、神 の守護を 祈っ て守り神として女神などをかたどった船首像 (フィギュアヘッド) が設置されたり、艦の所属を明らかにし乗員らの士気を高揚もさせる象徴的な紋章が艦に施されることもあります。 旧日本海軍の場合、法律上の軍艦に指定された巡洋艦以上の艦首部分に設えられた菊の御紋 (菊花紋章) がおなじみです。 これらは所属国を示すための掲揚義務がある軍艦旗と同様に精神的な意味を持っています。 また様々な国々を訪れることの多い大型艦や練習巡洋艦などは、表敬訪問などに用いられる外交儀礼に則った客間が用意されることもあります。

 一般的な艤装作業は造船所の職員や工員が行いますが、軍関係者や造船とは関係のない武器類の専門家や工員らが作業に加わったり、全体の進捗管理や品質のチェックなどを行うことが多いでしょう。 これらは艤装委員会やその構成員である艤装委員と呼ばれます。 また将来の乗組員が工員として作業に当たることもあります。 これは機密の漏洩を防ぐといった意味もあれば、実際に軍艦艇として運用する際に、乗員らがあらかじめある程度艦の内容を把握する必要があるためでもあります。 運用時にその艦の長 (初代艦長) となる士官が艤装委員長を務めるといったケースもあります。

 駆逐艦といった比較的小型の艦艇であっても内部構造から積んでいる武装まで、覚えなくてはならないことはたくさんあります。 まして戦艦や航空母艦といった大型艦の場合、ごく大雑把に艦全体を把握するだけでも数週間もの時間が必要な場合もあります。 また造船所や工廠で主だった整備を手がけるのは工員だとしても、実際に戦闘が始まり敵の 攻撃 で艦が損傷を受けた、武器 が故障したり不調になったなどしたら、現場で応急処置をするのは艦や艤装品に習熟した乗員です。 旧日本軍のように仮想敵国に対して国力に劣る国の場合、こうした稼働率に関わる部分では 多能 に寄った独自の対応が取られることもありました。

 なおいったん施した艤装を、その後の技術力の変化や時代に合わせて更新することは、換装とか近代化改装・改修と呼びます。 新型や能力向上型の機銃やレーダー探知機など個別の装備品の追加や取り換えくらいなら都度換装も可能ですが、主砲や主機 (エンジン) の換装や改造、上部構造物 (艦橋など) の刷新、変更箇所の数が多くてまとめて行うとか、戦闘で大きな損傷を受けた艦艇が修理と一緒に行うといった大規模な場合は、大規模改装と呼ぶことがあります。 これらは工期が数か月から数年に及ぶ長期に渡ることもあります。 ちなみに日本の独自設計によって建造された初の超弩級戦艦である扶桑・山城は、建造に時間がかかった上に二度に渡る数年がかりの大規模な近代化改装も行われ、後には ネタ として 「ドックにいる方が長い」 と揶揄されるほどとなっています。

 一般に艦艇は同型艦が複数建造され、おおむね一番艦 (最初に建造された艦) の名称を取って全体が 「〇〇型」(例えば吹雪型駆逐艦みたいに) と呼ばれますが、近代化する中で艦体形状・艦容が大きく変わったり艦種が変わるほどの場合は、新たにその艦の名前が型名として扱われたり、元になった型名に改造を示す改がつけられ区別されることもあります (吹雪型改みたいに)。 改造が数度にわたる場合は、改の後に二とか三がつけられます (吹雪改二みたいに)。 このあたりの命名規則や方法は、鉄道や自動車、航空機など、その他の分野でも、あるいはそれらをモチーフとしたゲームなどでも使われることがあります。 なかでも極端なものはネタとして 魔改造 と呼ぶこともあります。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2005年11月18日)
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