本人たちとは無関係なところで結婚する運命…「いいなずけ」
「いいなずけ」「許婚」(いいなずけ) とは、将来の 結婚 の約束を当人同士ではなく、その親や親戚、互いの家やその主君などが勝手に交わしてしまうこと、あるいは結婚するように決められてしまうことです。 言葉自体はフランス語や英語のフィアンセ (Fiancè(男性)/ Fiancèe(女性)/ 婚約者) と同じで、昔は結婚する当人たちがまだ幼い時に双方の親が子の婚約を結び、その相手をそれぞれ指す言葉でした。
日本語の 「いいなずけ」「許婚」(許嫁) は貴族や武家同士の婚姻、しばしば政略結婚となるものについて、より上位にある家柄の男子に対し嫁として女子をもらう、差し出す際の、親側の 「許し」 が元になっています。
当時は小学生程度の年齢で結婚することも少なくなく (通常、一人前とされる年齢は、男性で12〜16歳程度 (元服、ただし時代によって年齢は異なる)、また当人の意志ではなく、親 (家) の意思が重要視されていたので、むしろこうした低年齢での婚約と男女の婚姻が当たり前の時代もありました (農民など庶民はまた違ったりもしますが)。
現在は日本や欧米においては、こうした 「家」 による政略としての 「いいなずけ」 という風習はほぼなくなったと云っても良い状況ですが、「本人の預かり知らないところで勝手に結婚相手が決められてしまう」 という悲劇性は創作の世界では脈々と扱われ、時にはそうした前時代的な悲劇性を想像上の貴族や武家、あるいは富豪の生活として懐古主義的に肯定的に扱ったり、当人たちの心の葛藤などを軸にした人間ドラマなどがよく描かれます。
富豪や旧家のお話ではお約束の…
一方で、「いいなずけ」 の相手が自分の好みの美少女や美少年だった場合、何の努力もしないで勝手に恋人や妻が目の前に現れる…しかもフラれたり離れられることもない…というのは、ある意味でとても都合がよく、非常にラッキーな状況でもあります。
これは作品を描く側からしても、キャラクター を動かしやすい、とても 「都合の良い 設定 だ」 とも云えますし、物語のひとつの 王道 でもある ボーイ・ミーツ・ガール の構造そのものでもあります。
こうした状況は、妹 とか 幼馴染 的な要素と同じ、ある種の 萌え の要素、萌え要素 ともなっていて、小説や映画、漫画 や アニメ、ライトノベル はもとより、1990年代からの ゲーム の中でも度々取り上げられ、人気のある設定の一つともなっています。