知らない間に手が動く… 「勝手に描ける期間」
「勝手に描ける期間」(勝手に書ける期間) とは、創作 の活動を長年行っている人に気まぐれに訪れる、ある種の 「ボーナスタイム」 のことです。 「勝手に手が動く」「自動的に作品が出来上がる」 と呼ぶこともあります。 一般的な言葉では、「脂が乗っている時期」「仕事盛り」 となりますが、気力・体力ともに充実し、それまで培ってきた経験やノウハウが勝手に体を動かしてくれ、原稿用紙やパソコンにただ向かうだけで、いつの間にか勝手に作品ができてしまうような状態となります。
こうした状態は、長い間創作活動を行っている人ならば、感覚として何となく理解できるものでしょう。 例えばそれが マンガ なら、アイデアがとめどもなく湧き出し、作品に登場する キャラ は勝手に動き、むしろ自分とキャラが一体化し、何も考えなくても状況をただ書き写すだけで作品が仕上がっていきます。 あとは最後に多少の調整をすれば完成です。 後に読み返してみると多少粗削りな部分はありつつ完成度も全体として高く、同人誌 として発表しても好意的な感想が返ってくる場合も多く、得られる喜びや充実感はこの上ないほどのものです。
一方で、その真逆の期間もあります。 一般的な言葉で云えば 「スランプ」 なのでしょうが、スランプ状態ほどではないけれど、どうにもペンや筆が進まない、何をどうやっても作品創りが進まないこともあります。 むしろこうした状態が平常だ、デフォ の状態だという人も多いでしょう。
一所懸命考えてもアイデアは何も浮かばず、キャラは動いてくれず、というよりキャラが何を考えているのかすらわからなくなり、やむなく 設定 や過去の言動を元に矛盾しないセリフや物語を頑張って組み立ててみるものの、動かない人形をただ振り回しているだけにも思えてきます。 書いては消し書いては消しを繰り返し、気が付くと朝になっていたり。 そこまで来ると、そもそも自分は何のためにマンガを描いているのか、それすらわからなくなってきます。
「勝手に描ける期間」 は短く、またはかないもの…
創作活動に悩みや苦しみはつきものです。 俗にいう 「生みの苦しみ」 です。 またマンガにしろ SS にしろ作品を描くこと、それを外に向けて発表するということは、他人の感情を動かそうという試みであり、人様を感動させたり笑わせたり興奮させようと思うなら、描き手である自分の感情はボロボロに擦り減らすくらいの気概がなければ響く作品にならないという考え方だってあります。
しかしそれとは異なる 「勝手に描ける期間」 を経験した人は、「あの時と今と何が違うのだろう」 などと自問自答しつつ、再びその瞬間が来るのを待ちながら頑張るしかないのでしょう。
なお 「勝手に描ける期間」 は全ての人に訪れるわけではありません。 また訪れたとしても、それがずっと続くことはありません。 ただその期間をちょっと長くしたり、それに近い状態に引き上げることはできるようです。 それこそがプロ作家や実力派と呼ばれる人気 作者 としての経験やノウハウの大きな部分なのでしょうが、長い人生でこうした幸せな期間がやってくるのは1回か、せいぜい数度程度。 その機会を逃さず、また大きく膨らませて、幸せな創作人生を歩みたいものですね。