二人称 「けい」 として使う場合は、ほぼ銀英伝…「卿」
「卿」(きょう/ けい) とは、中国、及び日本において、官位制のなかでも高位の官職、貴族や高位の聖職者などを指す言葉です。 英語では 「Lord」(ロード) に相当しますが、ヨーロッパと東アジア (中国とその影響を受けた国) とでは、若干 概念 が異なります。
中国においては領地を持つ貴族 (領主/ 大夫) のうち高い地位を持つもの、大臣や重職を担うものに使われ、日本でもほぼ同じ使われ方をします。 一方で、ヨーロッパの貴族や顕著な功績により爵位を授与されたものを指す Lord の日本語訳としても使われ、日本では江戸時代までの中国の官位制を手本とした身分制度や、明治以降の西洋の貴族制を手本とした身分制度などで、ニュアンス が若干変わりながら継続して使われています。
通常は公家の中でも特に位の高いもの、公卿の敬称として使われ、官職名や名前に接尾して使われます。 この場合は、「きょう」 と読みますが、同じ読み方による単体で、主君が臣下を呼ぶ時に使用する場合もあります。
卿の用例で有名なものと云えば 「卿 (けい) は嘘をついている!」
これとは別に、「けい」 と読んで、二人称の人代名詞として使う場合もあります。 この場合は貴兄や貴殿などと同じ意味となり、主に男性が自分と同格か近しい先輩、あるいは後輩の男性を指して、軽い敬意や親しみを込めて使う言葉となります。
こうした使い方は日本や中国だけのようですが、現代日本において、おたく・腐女子 の 界隈 でこうした言葉を使う直接の 元ネタ といえば、SF小説 (ライトノベル)・アニメ で高い人気を誇る 「銀河英雄伝説」(銀英伝/ 田中芳樹/ 1982年11月〜) の劇中セリフからといって良いでしょう。
作中舞台のうち、主に銀河帝国内で使われる言葉で、日常生活はもちろん、他の創作物などでもあまり使われていない言い回しとなっていることから、銀英伝の ファン にはおなじみの言い回しといって良いでしょう。 とくに序盤最大の見せ場であるラインハルトとキルヒアイスの別れのシーンで、ラインハルトがミッターマイヤーに向けて使った言葉、「卿は嘘をついている」 は、ある種の おたく用語 ともなっています。
ちなみに銀英伝以外で、その影響下にもない作品でも 「卿」 が使われてる例がいくつもあり、とくに有名で、かつオタクが読んでそうな作品としては、長編小説 「坂の上の雲」(司馬遼太郎/ 1968年〜1972年) あたりでしょうか。 作品中では、ロシア皇帝ニコライ二世が、家臣に対してこの呼び方を行なっています。
こうして同人用語の基礎知識の項目が、また1ページ…。