同音異義語てんこもりで検索が辛い… 「検索汚染」
「検索汚染」 とは、Google や Yahoo! といった ネット の検索エンジンにおいて、検索結果を本来あるべき状態から歪めてしまうこと、多くの人が望むであろう検索結果とは異なる内容へと変化させてしまうことです。
例えば 「焼肉屋」 でワード検索する場合、ほとんどの人は外食である焼肉料理店を探したり調べたりするために検索を行うでしょう。 しかし全く同じ 「焼肉屋」 という名前のお笑い芸人やヒット曲、書籍、テレビ番組や映像作品といった異物同名の コンテンツ が存在した場合、検索結果にそれらが混ざったり、あるいは本来の焼肉料理店より上位に表示されたり焼肉料理店を駆逐する事になったりもするでしょう。
結果として、「焼肉屋」 でワード検索をする大多数のネット利用者は、名前が同じなだけの全く関係のない、知りたくもない情報を無駄に見せられたり、本来の目的である焼肉料理店の情報にたどり着くために無駄な手間や時間を費やすことにもなってしまいます。
お笑い芸人の芸名、擬人化ゲームのキャラ…同じ文字列があふれる
とりわけ検索汚染の 「害」 が声高に叫ばれるものに、お笑い芸人の芸名や、擬人化 された キャラクター が登場する ゲーム などがあります。 一般名詞をそのまま芸名にしたり、歴史上の人物や著名人、動物、軍艦や刀剣などの兵器、城、花の名前などをそのままキャラクター名にしたゲームなどは、調べたいものが見つけづらくなる不便さもさることながら、興味のない人からは不快に感じられる可能性もある性的な キャラ絵 などが表示されがちな場合もあり、何かと批判の矢面に立たされる傾向があります。
一方、ファン によってつけられた アニメ や ラノベ などの特定の作品名や カップリング の略称などが、他の既存の一般名詞や略称と偶然一致して検索結果に混ざる場合もあります。 とりわけそれが 成人向け の エロ い作品やカップリングで、検索除け のための隠語として作られたものだと、未成年を含めた無関係の人が突然それらの情報や 画像 を目の当たりにすることにもなってしまいます。
邪魔ではあるけれど、防ぐ方法もなく、また仕方がない場合も
中央に吹雪が配置された 「艦隊これくしょん」(艦これ) |
検索汚染で大きな話題となったものに、日本の旧帝国海軍の軍艦などを美少女擬人化した ネトゲ 「艦隊これくしょん (艦これ)」 があります。 2013年にサービスが開始され、ほどなくして大ブレイク。 同年暮れからしばらくの間、軍艦名で検索すると同ゲームのキャラに関する情報がずらりと並ぶ状態となっていました。
とくに本作や本作のアニメ作品を通じて実質的な 主人公 である特型駆逐艦 「吹雪」 の検索結果に対する浸食ぶりはすさまじいものに。 艦これが大ブームとなって アンチ も多数存在すること、そもそも軍艦を擬人化することそのものに否定的な立場の人なども少なくなく、この状況を批判する声はかなり大きいものでした。
しかし一方で、実在した軍艦名そのものも旧国名や山岳名、河川名などから付けられた同じ文字列のものであり、既にその時点で検索汚染ではないかとの考え方だってできますし、ゲームがブームとなっている段階ではゲームのキャラを調べる人の方が圧倒的に多い状況 (検索結果の表示位置に対する検索エンジンのアルゴリズムで結果的にそうなっている) だとも云え、「そのタイミングで検索する利用者の多くがその情報を探している状況であれば最適化であって、別に汚染だとは云えない」 との意見もあります。
またそもそも、検索結果が一部の利用者にとって好ましくないものになったとして、その責を負うのは一義的には検索サービスを提供する側です。 検索結果を汚染するために意図的に他と紛らわしい言葉を使っているならともかく、通常の範囲でネットを利用していて 「目障りだ」 と云われてしまっても困ってしまうでしょう。
似たものに 「サジェスト汚染」 なども
なお、検索結果が表示される際、検索キーワードに関連するワードが出てくることがあります。 これはキーワードを入力した際に、そのワードと一緒に検索されやすいキーワードを自動的に予測して表示する機能のことですが、こちらに ネガティブ なワードが表示される場合は 「サジェスト汚染」 と呼びます。
悪意を持って意図的にサジェスト汚染状態にされる場合もあれば、結果的にそうなる場合もあります。 例えば有名人が犯罪で捕まったなどのニュース報道があれば、それについて検索する人が増え、「有名人名 + 逮捕」 とか 「有名人名 + 犯罪名」 でサジェスト表示されることになります。
意図的に検索結果を操作して、検索しにくくすることも
何らかの目的を持って意図的に検索結果を歪めようとするパターンには、嫌がらせを目的としたサジェスト汚染のようなもの以外にもあります。 例えば何らかの犯罪行為を起こしてニュース沙汰になった人物や企業が、自らの名前と同じ文字列を使ったダミーサイトや著名ネットサービスでダミーの アカウント を複数立ち上げ、「どれが本物か容易に区別できなくする」 などの情報攪乱を意図した施策が代表例です。
あるいは詐欺商法やマルチ商法、自己啓発セミナー、カルト宗教団体などが、検索で同定されて被害情報が 共有 されるのを防ぐ目的で、自らの集まりや組織名・下部組織名をありふれた言葉や一般名詞にする場合もあります。 それでも悪名が広がり特定の文字列を組み合わせた形でなら検索結果に出てくるようになると、組織の改組・改名も頻繁に行い、追跡を逃れ続けています。 これらは自分に不都合な記事をネットから消したり検索結果から消す、隠す行為である 「逆SEO」 の一種とされ、その他の手法と複合して行われることもあります。
もちろんそれで自分の情報の全てがネットから消えるわけではなく、いわゆる デジタルタトゥー (ネット上にいつまでも残ってしまう不都合な情報) として一部が存在し続けますが、第三者がそれを調べにくくする、非常に分かりにくくする効果はあるでしょう。 とくにありふれたどこにでもある名前ならばともかく、珍しい名前の場合は検索結果も少なく、誰でも簡単に本人の情報に辿り着けてしまいますし、さらにそれぞれの情報が関連づいたり紐づいたりしますから、問題を起こしたり、起こしていなくても 炎上 などが将来起こる可能性を予想し、同名サイトやアカウントをいくつか作っているような人は、わりといたりします。
ネットでビジネスや広報を行っている人や企業、著名人ならともかく、一般人 の場合は名前で検索して誰でも簡単に本人の情報にアクセスできるのはメリットもなくリスクばかりが大きい状況でしょう。 例えば卒論とか特許・裁判関係、学校・企業での顕彰、勤務先の所属役員名や責任者名の紹介ページなどなど、実名がネット公開されていている珍しい名前の人が、リスク管理の一環だと考えて行うケースは多いようです。
これらは2011年頃のある出来事と、それに伴うはてな匿名ダイアリー (増田) のエントリーから 「木を隠すために森を作る」 とも呼ばれます。 身を隠すなら、人がいない地方より人が大勢いる都会に潜む方が効果があるのと同じですね。