印刷や製本には一定量つきものの予備紙や汚損紙 「ヤレ」
「ヤレ」(ヤレ紙) とは、印刷 を行う際の刷り出しに使う練習用の紙や予備紙、印刷・折り加工・製本・表面加工・断裁など、印刷物を作る行程で生じる、汚損して最終的に用いることができない 「損紙」 のことです。 最終納品物 (本なら出来本) に使わず廃棄する紙全般を指し、印刷前のものは白損、印刷した後のものを黒損と呼びます。 語源自体は 「破れ」(ヤブレ) が転じたものとする意見が一般的でしょう。
なお同じような文字列の言葉に 「ヤケ」(色ヤケ・紙ヤケ) がありますが、こちらは紙や書籍類の 表紙 などが太陽光などによって焼けたり色褪せること、すなわち退色や変色していることをあらわします。 主な原因は紫外線による印刷インキの退色・変色、紙自体の変色などですが、長期保存した紙といった特殊なケースを除けば印刷・製本・納品の工程中に起こることはまずなく、一般的には古書類の保存状態を示す際に使われます。
ほんのちょっとした汚れでも、気になる人は気になるもの
同人誌 や チラシ・ペーパー・名刺 などなど、紙を使った印刷物を作るには制作物の規格や仕様にあった紙が必要ですが、ごくまれにシワや折り目がついていたり、汚れがついている場合があります。 また印刷時点では問題のない紙でも、印刷後に印刷インキがこすれるなどで汚れる場合や、製本過程でダメになることもあります。
これらの汚損に気づかずに製本を終えてしまうと出来上がっても不良品になってしまいますから、作業工程で汚損が生じないように印刷製本機器の洗浄や調整・チェックや行程の工夫は欠かせません。 ただしどれだけしっかりチェックしても一定割合で汚損が生じますから、一般的にはそれを見越して納品する実数より多少多めに印刷や加工、製本を行うことが多いでしょう。 なおヤレが混ざってしまうことをヤレ混入、混ざったまま工程が進んでしまうことはヤレ通しと呼びます。
紙や印刷物以外でも使われる 「ヤレ」
一方、ここから転じて紙以外の機材や道具類の 「汚れや傷」 の意味でもヤレが使われることがあります。 例えば中古車や中古の電気製品などを売買する場合に、品物の状態を表現するために 「若干のヤレあり」 とか 「ヤレなし」 などと表現します。 これはそれぞれ 「多少の傷や汚れ、曇りがある」「汚れや傷がなくきれいだ」 という意味になります。