パソコンで手軽に組版が作れる時代
「DTP」 とは、「DeskTop Publishing」 の略語で、日本語では 「卓上出版」 という意味です。 卓上とは 「パソコン」 とほぼ同義で、これを使ってモニタ上で企画からデザイン、組版、レイアウト、版下作成、プリントアウトなど、印刷 に関する一連の作業を行います。 それまでの手作業からコンピュータ上に作業場を移す事により、やり直しや同一処理の繰り返しなどが安価でスピーディーに行えるようになり、作業の効率化が劇的に図れるようになりました。
なお同じ略称となる 「Desktop prepress」(卓上組版・製版)という意味の 「DTP」 もあります。 両者はしばしば混同されていますが (後者を 「DTPr」「DTPR」 と表記する場合もあります)、プロの世界ならともかく、一般ではあまり厳密に区別しているケースは少ないようです。
前者の「卓上出版」 は、卓上 (通常はパソコンなどを使います) のみで印刷物の元となる組版・製版 (印刷用データ) を作成し、プリンターなどで出力して印刷物にすること、後者は、プリント部分を行わず、印刷用データを作るところまでの意味となります。
同人 の世界では、自分でプリンターで出力して作る コピー誌 などが前者、自分で印刷用データを作成し、印刷会社などに印刷を依頼して本を作る オフセット誌 などが後者となります。 後者の場合、作品を執筆した原稿用紙などを入稿 (アナログ入稿) したり、作成したデジタルデータを データ入稿 することになります。 その場合は、組版 (DTP) は、印刷業者がやったりもします。
完全に組版までを終了し、印刷のみを オンライン で全て発注して終わらせるようなものは、オンデマンド印刷 (On Demand) などと呼ぶ場合もあります。
自分で 「DTP」 を行うために必要なものは…
極論すれば、画像 やテキストの扱えるソフトウェアがあれば、たいていの印刷用データは作成できます。 ただしプロの印刷業者に頼むためのデータなどは、所定のフォーマットで作成する必要がありますし、「DTP」 に使われるソフトウェアなどでは、当然ながら各種作業を非常に効率的に行うことができます。
画像を組み合わせたり、簡単なデザインを作ったり、さらに文字編集機能も充実しているものが多く、様々な文字装飾や文字と文字とのスペースなども非常に細かく調整ができます。 書籍の誌面作りや広告原稿の類を作るソフトとしては、「QuarkXPress」 や 「InDesign」「PageMaker」「大地」 などの組版用の業務用 DTP ソフトがありますが、プロユースのものなので非常に高価だったり扱いにくかったりします。
個人で使うとしたら、イラストレーター (Illustrator)あたりがおすすめでしょうか。 ただし 「イラレを持ってないと絶対にDTPができない」 というわけでもありません。 筆者 は 「イラレ」 が苦手なので、商業 雑誌用の組版を Photoshop で平気で作ったりもしてますし (さすがに編集や印刷会社が 「Photoshop データで入稿する人を初めてみました…」 なんてビビッってますが… (^-^;)。 まぁこれは、商業雑誌などの世界だからであって、同人サークル 相手の 同人誌 メインの 印刷屋 さんなどですと、かなりの数が 「フォトショ形式」 なのではないでしょうか。
個人ユースでは、1995年頃から一般化
「DTP」(Desktop publishing) という言葉は、「PageMaker」 を発売した Aldus社の社長ポール・ブレイナードが、1986年に提唱しました。 アメリカでは元々タイプライターが普及していて、パソコンの普及も早く、日本などに比べ1足どころか、2足3足も早く 「DTP」 時代に入りました。 日本の場合、「日本語」 というハードルが非常に高く、普及ははるかに遅くなってしまったようですね。
なにせ日本語の全角2バイト文字は、アルファベットなどの半角1バイト文字に比べ容量がとても大きく、しかも大文字小文字英数あわせて 62文字 (実際は記号類もあるので 100を超えますが) 程度の英語に比べ、ひらがなカタカナだけで 100を超え、さらに膨大な 「漢字」 までがあります。
タイプライターもほとんど普及しておらず (和文タイプってのがありましたが…筆者が子供の頃、これが死ぬほど欲しかったです…)、1990年代頃までは、まだまだ 「活字版」 を組み合わせて版下を作ったり、写真製版が主流だったんですね。 またワープロ専用機 (簡単な組版のできるものもあった) なども活躍しつつありましたが、文字 (活字) の品質は、アウトラインフォントがまだなかったりで、とても商業印刷で使える レベル ではありませんでした。
その後商業印刷の分野に、ソフトとハードウェアが込みの業務用システムとして 「DTP」 が本格的に普及し、Macintosh の登場で、デザインや編集の分野に徐々にパソコンが浸透。 さらに 1990年代中ごろから本格的にパソコンがビジネスの分野にも普及し、1995年の 「Windows 95」 の登場で、パソコンによる印刷が一般化するのでした。
もっとも当時、カラー印刷をするのは結構大変で、見るに耐える品質のカラー印刷が簡単にできるようになるには、もう数年待たなければいけませんでした。 何しろプリンターは極めて高価でしたし、パソコン自体も一部のものを除き、まだ 16色とか 256色程度の インデックスカラー の時代でした。
2000年代となり、いよいよ
2000年代になり、パソコンもフルカラーが当たり前の時代になり、それまでは半業務用だった 「Illustrator」 や 「Photoshop」 も価格が安くなったり、機能の一部を省略した廉価版が発売されるなど、安く 「DTP」 を行う 環境 が整ってきました。 プリンターも安くなり、スキャナーやデジタルカメラも高性能のものが安価でどんどんでてくるように。
筆者が初めて買ったスキャナーは 本体だけで15万円以上しましたが… (しかも在庫がなくて、都内の店を何軒も回った)、まるで夢のような時代になりました。
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