同人用語の基礎知識

トンボ/ 見当標

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一昔前までは手動で書いたり貼ったり…原稿の目印 トンボ

 「トンボ」 とは、原稿用紙 (「版下」) の上下 (天地) 左右、および四隅などについた細い目印線のことです。

 印刷物を作る際に、印刷用の紙に対して「版下」 の位置を決めたり、断裁 (印刷紙のいらない部分を切り落とすこと) の時の目印にしたり、あるいは 多色刷り をする時にそれぞれの 「版下」 の重ね方を合わせるための目印、見当にしたりします。

 同人誌 を作る時、その元となる 原稿 (版下) を作る時に必要なもので、個人で手作りする コピー誌 などでは必要ありません。 しかし 印刷屋 さんに印刷を依頼する オフセット本オフセット印刷 による同人誌) などの場合は、ページ数を表す ノンブル と並んで必須のものとなっています。

原稿用紙における代表的なトンボ

原稿用紙における代表的なトンボ
原稿用紙における代表的なトンボ

センタートンボ
 原稿用紙 (版下) の天地左右のそれぞれ中央についた十字マークを 「センタートンボ」 と呼びます。 学校のグラウンド (校庭) を均すT字型の道具に 「トンボ」 ってのがありますが、あれと同じような形をしてますね。 名称の由来はどちらも、昆虫のトンボに形状が似ているからです。

 こちらのトンボは版下の位置 (両面印刷の際の裏表の位置合わせ) や多色刷りの時の版下合わせ (見当) に使うことから、「見当トンボ」「レジスターマーク」 などとも呼びます。

コーナートンボ/ 角トンボ
 また四隅についたものを 「コーナートンボ」(角トンボ) と呼びます。 こちらは 「断裁」 の目印に使うもので、「裁ちトンボ」「断裁トンボ」「クロップマーク」 などと呼びます。

 左の図を見てもわかるように2重線となっていて、原稿 (版下) の外側のものを 「外トンボ」(「製版トンボ」「塗り足しトンボ」) と呼び、内側のものを 「内トンボ」(「裁ちトンボ」「仕上がりトンボ」) などと呼びます。 断ち切り (マンガの などが、画面いっぱいに描かれているもの) の場合、このコーナートンボまで絵を描くことになります。

■ 折りトンボ
 製本をする時に紙の折り位置を見当するための 「折りトンボ」 というものもありますが、こちらは原稿 (版下) を作る時の目印みたいな感じです。 通常は、1つ1つのトンボは、ただの一本線です。 使われるケースでは、例えば三つ折りのパンフレットだったり、背表紙 のある同人誌の表紙用データなどがあります。

トンボの入れ方

 市販されているマンガ用の 「原稿用紙」 にはあらかじめ印刷されていますが、普通のケント紙などを使って描く場合には、自分でトンボを引かなくてはなりません。 描く紙を選ぶようなカラー原稿などの場合には、この作業はかなり面倒なものでした。 モノクロ 版下の場合には、ノンブルのように貼るだけでトンボが引けるシールのようなものもありますが、正確に各トンボの位置を決めるのは結構面倒です。

 PhotoshopIllustrator、あるいはパソコンでマンガを描くためのマンガ原稿作成用ソフト (「ComicStudio」(コミスタ) などでは、最初からカンバスにトンボが引かれていたり、自分で簡単に引く機能 (トリムマークなど) を持っていたりします。 2000年代となり、カラー原稿や後にモノクロ原稿もパソコン上で作ることが当たり前になってきましたから、そうした版下制作の場合には、あまり意識しなくても良くなって来たようです。

 なお実際の入れ方は、使うソフトによって異なりますが、例えば A5 の印刷物なら A5 の実寸 (148mm × 210mm) でファイルを新規作成し、そこに同じ大きさの原稿を画面全体に貼り付けてトリムマーク設定すればOKみたいな方法が多いでしょう。 塗り足しは縦横それぞれ 3mm 程度で大丈夫です。 トンボが入ったテンプレートを自作する場合は、同じく実寸でファイルを作り、同じサイズの適当な図形や画像を置き、その図形や画像にトリムマーク設定を行った後、図形や画像を削除すれば出来上がりです。

 またトンボや塗り足し部分が入った状態の pdf ファイルを作る場合は、上記で作ったデータを pdf で書き出す際に、オプション設定でトリムマークや塗り足しの表示を行うといったチェックを入れて書き出せばOKです。 あわせてノンブルの有無や順番、解像度線数 なども確認すると間違いのないデータが作れるでしょう。

「ガクブチ」 と呼ばれるようなページや、全面塗りつぶしなどの場合

 例えばマンガの原稿で、見開きで真っ暗な宇宙空間を描くようなページの場合、ベタ塗りの仕方によってはそのページのトンボは全て墨で真っ黒に塗りつぶされることになります。 また 「ガクブチ」 と呼ばれる、ページの天地左右に模様やベタ塗りが必要なデザインの場合も、同じようにトンボは見えなくなってしまいます。

 厳密な版下の重ねと多重刷りが必要な多色刷りの場合、こうした 「トンボが消える状態」 は、一般的にご法度です。 一方で、一部のページのトンボが塗りつぶされてみえないくらいなら、何とか対応してくれる印刷屋さんが大半です (実際、マンガの原稿や版下でトンボが全て揃っているような描き方は難しいでしょう)。 そのページが他の原稿と全く同じ仕様で、他のページにきちんとトンボが入っていれば、目分量でうまく合わせてくれる印刷屋も多いものです。

 ただし厳密な意味での合わせができなくなるため、腕の立つ職人がいるような印刷屋さんならともかく、技術力のない印刷屋さんだと、意図しない仕上がりになってしまう場合もあります (トラブル を防ぐため、トンボが全て飛んでいるような原稿は受け付けない印刷屋もあります)。

 極端な原稿の場合には、ある程度の 「自己責任」 が付いて回ることは意識しましょう。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 1999年11月12日)
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