カラーの時代だからこその力強さ 「モノクロ」
「モノクロ」(モノクローム/ monochrome) あるいは 「白黒」 とは、写真や映像、イラスト などの描写において、色 (色彩) を使わずに明暗の階調のみを使って表現したものを指す言葉です。
時代が下るごとに、若い人の間で独特な受け取り方も
「モノクロ」 の写真や映像そのものから受け取るイメージは人によって様々ですが、年代よってある程度の受け取り方の違いや傾向はあるようです。 例えば 昭和 の中頃までに生まれた人は、自分が子供の頃にはモノクロ写真が当たり前でしたし、場合によってはテレビがモノクロだった時代を知っていたりで 「見慣れたもの」「自分の実体験とつながったもの」 という意識が強いでしょう。 雑誌や新聞に掲載された写真や 画像 もモノクロやモノクロページが多い紙面でしたし、カラーの方が珍しいようような時代もありました。
また昭和の後半から平成の初めに生まれた人の場合も、すでに写真や家庭用のテレビはカラーが当たり前になっていましたが、携帯用の小型テレビとかゲーム機、初期の携帯電話などの画面がモノクロだったりもするので、それほどの違和感はないのかもしれません。 これらの人たちにとってモノクロは、「かつては当たり前だったもの」 あるいはある種の 「懐かしさ」「ノスタルジー」 の対象ともなる表現でしょう。
一方で、平成中頃以降の生まれとなると、写真やテレビや携帯用の様々な機器もフルカラーが当たり前となり、モノクロの写真や映像は 「大昔のもの」「戦前 のもの」 のような印象を強く受けるものでしょう。 子供の頃に平和教育の一環で学校や修学旅行先の施設で見る第二次大戦の怖い映像もモノクロですし、夏休みなどに帰省した親の実家の仏壇がある部屋に並べられた写真 (すでに故人となっている曽祖父母の顔写真などで、証明写真的な無表情な顔) も怖い印象しかなく、「懐かしさ」 などはなくてひたすら 「古い」「怖い」 ものに見えるという話はよく聞きます。
こうした子供の頃の怖かった記憶の他、モノクロ時代の写真や映像は当時のカメラやレンズの性能の問題もあってぼやけて見えたり、あるいはアナログデータによる経年劣化などもあり、しばしば不鮮明だったり黒い部分が潰れて 「細部がよくわからないもの」 だったりするのも、怖さに拍車をかける原因かも知れません。 また ゲーム や アニメ で 「昔の恐ろしい事件や事故、災害」 の回想シーンにしばしばモノクロ映像を効果的に使うケースもあるため、結果的にその印象は強められる一方となっているのも大きいかもしれません。
一般にモノクロは、カラーに比べると 地味 な印象があります。 しかし白黒のコントラストだけで描かれた図案は独特な力強さがあり、フルカラーよりもインパクトが出しやすいものです。 それは色数を押さえたことによりシンプルに訴求力が増強するという部分もありますし、当たり前のようにフルカラーが使える時代だからこその表現だからといった意味あるでしょう。 一方がもう一方の上位・下位互換ではなく、描きたいテーマに沿った表現方法として使い分けられると、表現の幅が大きく広がるかもしれません。
そもそも マンガ などは現在でもモノクロ (二階調) で描く方が一般的ですし、明暗の使い方に長けた人も多いでしょう。 色を 縛る ことによって、モノクロ時代とはまた異なる表現が生まれてくるかもしれません。