一頃より減ったものの、まだまだ人気の印刷方法です
3色刷りの例/ 原稿3枚刷り3回ページ1枚 こんな感じで塗り重ねます |
「多色刷り」 とは、印刷 の際に刷りインキを2色や3色と替えながら重ね刷りされた、簡便なカラー印刷 (多色印刷) の事です。
フルカラー印刷の場合は、カラー原稿の光学的色分解 (CMYK による 4色分解)によって印刷しますが、この多色刷りの場合は、色の数だけ用意した複数枚の単色による 原稿 を元に、複数の 色 インキで重ね刷りする方法になります。
例えるとすると 「芋版の年賀状」 みたいなイメージですが、色の上から色を重ね刷りすることもでき、複数の色を掛け合わせて別の色にすることも可能です。
この印刷を美しく行うには、複数枚 (使う色の数だけ必要です) の原稿を、それぞれズレることなく、また原稿を組み合わせた時の仕上がり具合を想像しながら作成する必要があり、技術と手間と経験が必要です (原理的には、光学式の色分解を手動で行うような感じです)。
なお似たようなものに ダブルトーン という印刷方法もありますが、こちらは色の分解を手動では行わず、また原則として2色のみの扱いとなっているので、根本的に違う印刷方法になります。
フルカラー印刷の費用が高かった頃は、同人誌 の 表紙 などに安価で色を入れる印刷方法としてポピュラーな存在でしたが、フルカラー印刷の低費用化とともに、一頃よりは減りつつあります。
しかし 「素朴な感じが良い」「優しい感じがする」 と、あえてこの方法を選んでこだわって 絵 をつくっている素敵な作家さんも多い印刷方法となっています。
版下を重ねるための 「トンボ」 指定が命
なおこの印刷方法の場合、原稿 (版下) の位置を正確に合わせるための トンボ (センタートンボ) が重要になります。 一般の原稿でも 「トンボ」 が揃ってない原稿などは受け付けない 印刷屋 さんが大半ですが、とりわけ 「多色刷り」 では、正確な 「トンボ」 は必須となっています。
ただし 「トンポ」 がズレなく完璧に一致していたら絶対にズレないかというと…実はズレたりします。 何故かというと、1色目を刷った時に、紙がインキを吸ってごくわずかにですが、縮むんですね。 2色、3色と色を重ねるごとにインキが乗り、そのつど縮むので、刷り色数が多い 「多色刷り」 では、紙の種類、インキの種類、印刷当日の季節、湿気なども、場合によっては無視できない レベル になる場合もあります。
ここらは原稿を入れる側が意識する必要はありませんが、印刷所 では文字通りの職人が、長年のカンで意図的にトンボをずらして刷りを行ったりして、他ならぬ発注者であるあなたのために、その技を惜しげもなく発揮してくれたりします。 きちんとした印刷屋さんは、相手がプロだろうが同人だろうが、自らはプロの仕事をきっちりとこなしてくれます。 トンボが多少ずれていても、作者 の意図を汲み取って修正して印刷してくれる場合もあります。
恥ずかしくない原稿を一所懸命作り、しっかりと 入稿 するようにしましょう。