キラキラと同人誌を豪華に飾る 「箔押し」
「箔押し」 とは、接着剤つきの金属箔 (金箔や銀箔) を熱転写で凸版印刷し、同人誌 の 表紙 などにある書名、タイトル文字部分などを目立たせたり、高級感を出すための印刷加工のひとつです。 熱転写することから、「ホットスタンピング」(Hot Stamping) とも呼びます。
また 「箔押し」 したところが浮き上がるように印刷面 (紙) に凹凸を作る加工を 「浮き出し加工」「盛り上げ加工」「エンボス加工」 などと呼びます。 「箔押し」 せず紙に凹凸をつけるだけの場合には、「空出し加工」 となります。
同人誌のタイトル文字などに金銀の箔を貼る場合、印刷 を依頼した 印刷所 でオプションとなる別料金で入れて貰う場合が多いものです。 しかし費用が結構掛かるため、イベント会場 の スペース で、インスタントレタリング のように手で押さえて転写する金銀の箔を、作者 自ら押している姿もたまに見かけます (ものによりますが、あんまり耐久性はないです)。
その後上記金銀の他、様々な色の金属箔、メタル箔 (つや消しの金銀や黒やピンク、パールやエナメルなど) や、ホログラム箔など特殊な種類のものもバリエーションとして登場し普及。 1990年代以降は価格も安くなり、比較的手軽に行えるようになってきました。
1部 500円の本が、「箔押し」 しただけで700円に…難しいコスト意識
この種の特殊加工は本の装丁に凝る作家さんが好んで入れていますが、とりわけ豪華本がたくさん出た1980年代から1990年代のいわゆる 「同人バブル」 の頃は、目もくらむような豪華な作りのものが結構あったものです。 ただし 「表紙」 のデザインやタイトル文字によっては、見た目がものすごく下品になってしまう場合もありますし、ちょっと古臭く見える場合もあります。 また他の印刷面に比べ耐久性に劣る場合があり、保存状態によっては何年か経つと箔の部分がくすんだり、一部脱落する場合もあります。
また印刷のために、箔部分のみの刷版を別途作らなくてはならず、これを作るのに 10,000円程度から印刷面サイズによっては数万円かかります (業者によって値段はまちまちです)。 さらに印刷の単価も発行する 部数 にもよりますが、100〜500部程度の小部数の場合、1冊あたり数十円から100円以上もコストがかかることもあります。 小部数の場合、刷版の費用の一冊あたりのコストも跳ね上がりますし、これは結構バカにならない費用です。
例えば1冊 500円程度で 頒布 しようと思っている300部発注の本の場合、「箔押し」 するかしないかで、一気に200円前後も値段が上がってしまったりします。
「箔押し同人誌」…ある意味大手の証かも
同人誌作りなどは 作家 の自己満足で本を作ってしまってもちろん良いのですが、読者 となる ファン からしたら、「その分値段を下げて欲しい…」 なんて思ってる人もいたりして、ジャンル によっては空気を読むのも大切かも知れない点は微妙です。 中身がスカスカでイマイチなのに、業者頼みの装丁にばかり凝っている本というのも、少々見ていて 痛い と感じられてしまう場合もありますし。
もっとも 大手サークル のように、数千部以上の発行ともなると1部あたりの上乗せ単価は微々たるものとなります。 3,000〜4,000部以上となると、箔押し以外の印刷単価もかなり安く、箔押しの単価も1冊あたりわずか 20円とかの レベル になります。 するしないの判断に、費用があまり影響しないレベルだといってもよいかも知れません。 「箔押し同人誌」 ってのは、ある意味 「大手サークル」「売れてるサークル」 の象徴みたいなものなのかも知れませんね。