戦いで得られたものは…? 「戦果」
「戦果」 とは、軍事 における作戦や個別の 戦闘 によって得られた何らかの成果や効果、軍や部隊や個人の功績などのことです。 具体的には撃破した敵の戦力、例えば敵兵士の撃破や兵器の破壊、敵基地や拠点の破壊や占拠、領土や捕虜の獲得、兵器や食料といった物資の 鹵獲 や接収、獲得などです。 敵の進軍を遅らせる、偵察や諜報などによる敵情の獲得も、直接的で華々しい派手な戦果ではないものの、戦局を左右することもある極めて重要な成果です。
戦争に関する言葉が一般用語として使われるケースはたくさんあります。 戦果もビジネスの場から個人の 日常 のあれこれに当てはめてよく使われます。 とくに目に見えて分かりやすい獲得した成果は、戦利品と呼ぶこともあります。 例えば コミケ などの 同人ベント に サークル参加 してどのくらい 同人誌 が 頒布 できた (売れた) かを戦果、自分が手に入れた同人誌を戦果や戦利品と呼ぶなどは、ミリタリー ファン に限らずとてもポピュラーな表現でしょう。
戦果と作戦成否と戦の勝ち負け
どんな戦闘でもいざ干戈を交えれば双方に損害が生じます。 相手に与えた損害は戦果、こちらが受けたものは被害となりますが、これらは個別に取り扱われることもあれば、キルレシオ といった考え方のように、敵味方の撃破数の比で見ることもあります。 こちらが1の被害に対して相手に3の損害を与えればすなわち3倍の大戦果となります。 とはいえ敵と味方の兵力差がそれ以上だったなら、局地的にどれほどの大戦果を挙げようともあまり意味がない場合もあります。 例えば30万の敵に対して10万のこちらが1万の損害と引き換えに3万の敵をやっつけたからといって、全体の兵力差は変化がありません。 実際は単純計算で導かれる数値以上に寡兵側がより不利になることが多いでしょう。
直接破壊や鹵獲などをせずとも、相手に無駄撃ちをさせればそれだけ相手の砲弾や 燃料、食料などを消耗させ、結果的に破壊したのと同じ効果を得られることもあります。 少数の囮を使って敵をおびき出したり、欺瞞兵器を使ったりカモフラージュで敵がいるように見せかけるなどですね。 また負け戦となった場合、全体の損害の大きさをごまかすために個別の部隊や個人の戦果をことさらに殊勲として取り上げて喧伝するなどは、戦時あるあるの類としてどんな時代のどんな戦争でも普遍的に見られる姿でしょう。
一方、戦果以前の話として、そもそも軍事行動においてもっとも重要なのは作戦目標の達成です。 それができなければ相手をどれだけ撃破しても作戦としては失敗です。 また作戦や目標の 設定 自体が適切なものかどうか、実現可能なのかどうかも重要です。 個別の戦闘ではなく作戦全体、ひいては戦争全体の戦況に与える影響が重要です。 よく云われる戦略と戦術の違いというやつですね。 戦果という言葉の使われ方にも様々な角度からの検討が必要でしょう。
とはいえ個別の戦闘でこちらが大きな戦果を挙げれば純軍事的な効果以外にも士気の高揚や他国への対外アピール、相手側への心理的プレシャーの増大、あるいは有能な指揮官の発見や抜擢が可能になるなど、様々な副次的効用が見込めます。 場合によってはそれら副次的効果を狙い、純軍事的にはほとんど無価値の攻撃を行うこともあります。 相手国の士気や世論を挫くための都市部への無差別な 爆撃 とか、パフォーマンス重視の攻撃などです。
例えば先の大戦でアメリカ軍が行った1942年4月の東京に対するドーリットル空襲などは、軍事的にはほとんど無意味なものでした。 しかし日本軍部は初めての本土、しかも首都 (帝都) への攻撃に大きな衝撃を受け、当時日本と戦争状態にありアメリカが支援していた中華民国には勇気を与え、アメリカ国民に対しては太平洋戦争への意識を植え付け、軍の戦意高揚にも大きな効果がありました。 一般的には1941年12月8日の真珠湾攻撃を受けてルーズベルト大統領が行った演説、および 「リメンバー・パール・ハーバー」 のスローガンによって戦争反対のアメリカ国民の世論が変わり戦意も一気に盛り上がったとされますが、実際はそれほどでもなく、当初から明確に戦意高揚を目指したパフォーマンス的な作戦であり、そして大成功したものだったのでした。
難しい戦果確認
戦果に関してもっとも難しいのはその確認作業でしょう。 小規模かつ一方が全滅するような戦いならばある程度客観的な戦果の確認や把握ができるのでしょうが、大軍が入り乱れての戦いとなれば確認するのは難しく、とくに現代戦は遠隔攻撃が増え、被害を軽微に見せたり大げさに見せたりする情報戦も 絡み ます。 敵戦車を撃破したと思ったら戦車に見せかけた欺瞞兵器だったなどはよくあることですし、こちらの兵力を大きく見せる、小さく見せるといったカモフラージュは当たり前のように双方で行われます。 実際の戦果は戦後にならないとわからない、あるいは正確な数字は歴史の闇、永遠 の謎、諸説ありみたいなこともよくあります。
日本においては先の大戦時、世紀の大誤報と呼ばれた1944年10月の台湾沖航空戦の敵情判断の誤りがあります。 4日間に渡り航空機1,200機以上を投入した大規模な戦いでしたが、アメリカ軍の損害は極めて軽微 (重巡洋艦2隻大破・航空機89機) だったにも関わらず、日本側の航空機搭乗員の未熟さや視界が悪く確認作業が難しい夜間・薄暮の攻撃、報告を受けた各部隊司令部や上層部の希望的観測による確認作業の杜撰さで、敵空母撃沈11隻、撃破8隻、戦艦撃沈2隻、撃破2隻をはじめ、アメリカ機動部隊壊滅との幻の大戦果がもたらされたものでした。
1942年6月のミッドウェー海戦および同年8月のガダルカナル島の戦い以来、敗退を続ける日本軍はそれ以前から戦果の水増し・損害の過小発表や隠蔽を行ってはいました。 大本営発表というやつですね。 これらはまだ敵を欺き国民の士気喪失を防ぐための情報戦略の一部だったと強弁ができたとしても、この件に関してはそれ以前のお話であり、しかも誤りを悟った後も国民や政府、陸軍はもとより作戦を主導した海軍内ですら情報の訂正がろくになされませんでした。 結果、大戦果の報を信じた陸軍が戦機到来とばかりにやるべきではない攻勢をかけるなどして、その後はほとんど自滅のテイで損害を増大させています。
![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() |
関連する同人用語・オタ用語・ネット用語をチェック
