CM を通じて異常に流行った 「ティモテ」
「ティモテ」 とは、かつて日本リーバ (現 ユニリーバ・ジャパン) が販売していた 「ティモテ」(Timotei) というシャンプー製品のことです。 1980年代に頻繁に流れた 「ティモテ〜 ティモテティモテ ティモテ〜」 との歌声とともに 金髪 白人の女性が髪を洗うテレビ CM はよく知られた存在でしょう。 CM で描かれた長い 髪の毛 を片方に束ねて顔の片側によせ、手のひらで優しく揉むような洗髪の仕方は 「ティモテ洗い」 などと呼ばれます。
1975年にスウェーデンで誕生したブランド 「ティモテ」 はヨーロッパ原産のハーブ 「ティモシー」 をはじめ7種類の北欧の薬草が入ったハーブシャンプー&トリートメントとして誕生、日本には1985年に上陸し、CM もそれに合わせて放映されるようになりました。 放映頻度の高さや記憶に残る印象的な CM は、特定の年齢層にとっては非常に懐かしく感じられる おっさんホイホイ のひとつでもあります。 当時はタカラの女児向け人形であるジェニーシリーズからティモテモデルが コラボ で発売されるほどの人気で、修学旅行などで女子同士でお風呂に入ると1 グループ に1人は真似する人が必ずいたとの噂もあります。
その後、1994年に販売不振を理由に一度撤退、2013年にオーガニック認証成分配合のノンシリコン商品として復活しますが、2023年9月末で再び販売を終了しています。
毎日髪を洗うのが当たり前になりつつある時代にマッチした 「ティモテ」
同商品のキャッチコピーは 「毎日洗える」 でした。 こちらも時代を感じさせるというか、この頃はまだ毎日の風呂やシャンプーが、現在のように普及する前の時代だったのがわかりますね。 このコピーは刺激が少なく傷みやすい髪にもやさしいシャンプーだとの意味があるのですが、日本の内風呂普及率は1970年台にはまだ50%程度でシャワーなどもほとんどなく、ティモテ時代の1980年代には急速に広まるようになったものの、都市部の風呂なしアパートに一人住まいの若者は数日おきの銭湯通いがまだ珍しくない時代でした。
そもそも実家住まいで内風呂があってもシャワーや洗面所の給湯器がなければ洗髪はかなり大変でした (湯船から湯を取るので長髪の女性家族が何人かいるとあっという間にお湯がなくなりますw)。 毎日入浴ができる 環境 を前提とし、かつ髪や肌への優しさまで訴求するこのフレーズと商品 コンセプト は、当時としてはたいそう先進的なものだったと云えるでしょう。
その後日本では1990年代に内風呂や給湯器も普及し、若者の間では夜に風呂に入って洗髪した上で翌朝にも行う 「朝シャン」 も普及。 一般に頻繁な洗髪やシャンプーを用いた朝の洗髪は髪や頭皮、毛根 への負担が大きく身体に悪いとされますが、当時は身だしなみの一つ、爽やかな 清潔感 を維持するための新常識として盛んに推奨されていました。
ちなみにヨーロッパなどでは気候の違いや水質 (硬水) の問題などもあり、現代でも毎日お風呂に入る人はあまり多くない印象です (髪がゴワゴワになる)。 自然派かつ先進的な北欧風のイメージを前面に押し出しつつ、日本市場投入に当たって国内の内風呂・シャワーの急速な普及にも応じた プロモーション だったのでしょう。
日用品の CM は頻繁に流れるため流行語になったり文化を作ったり
シャンプーつながりで話題になったものにはこの他、1970年代の 「ダブルコンディショニング効果で、髪、いきいき」「つやつや」 の 「シャワラン」(シャワラン ビューティー シャンプー&リンス) があります。 起用されていたのは伝説的アイドル ユニット ピンクレディーで、テレビ CM や発売元である牛乳石鹸提供番組の生コマーシャルがお茶の間によく流れていました。
一方、1975年にライオンの 「エメロン・ミンキー・トリートメント」 の CM に起用されたハワイ出身のモデル、アグネス・ラムさんは、健康的な 褐色の肌、日本人好みの愛らしい顔に グラマー なボディでたちまち大人気となり、いわゆる 「アグネス・ラムフィーバー」 を巻き起こします。 その後は初代のクラリオンガールにも選ばれ、現在のグラビアアイドル文化の原点のひとつともなり、その後の日本のアイドル・タレント文化に与えた影響はとても大きなものがありました。
同じくライオンによる、髪の水分を 整える とうたった 「アクアミー」(AQUA-ME/ 1980年5月) シャンプー・リンスは、街頭で通行人の女性を捕まえて水分チェックを行う 「アクアチェック」 キャンペーンを展開。 タレントの石坂浩二さんがチェック用の水分測定器を持って女性の髪を調べる CM は大きな話題となっています。 ちなみに美しい髪の水分量は11〜13%だと CM では紹介していました。
この他、シャンプーにリンス成分を加えた 「ソフトインワン」(リンスインシャンプー) も1989年3月にライオンから発売され、CM で使われたキャッチコピー 「ちゃん リン シャン」(ちゃんとリンスしてくれるシャンプーです) が流行語になっています。 これは起用されたタレント薬師丸ひろ子さんの人気もさることながら、薬師丸さんの独特の語り口をお笑い芸人が面白おかしく物まねしたことからブレイクしたという面もあります。 「ちゃん」「リン」「シャン」 のどれかをアレンジして使う流行り言葉として便利でもありました。
なおシャンプーやリンスではありませんが、日用品は知名度が販売実績に直結しがちな商材でもあるため CM やキャンペーンも盛んで、洗剤などにも広告を通じて日本人の血肉になった言葉や表現が数多くあります。 代表的なのは 驚きの白さ (花王 「アタック」)・金銀パールプレゼント (ライオン 「ブルーダイヤ」) の家庭用洗濯石鹸・洗剤でしょうか。
「非モテ」 の空耳として
ネット でよく使われる表現に、異性に 「モテない」 という意の 「非モテ」 があります。 これと 「ティモテ」 が何となく似ている? ので、同商品の CM を 空耳 でアレンジして 「非モテ〜 非モテ非モテ 非モテ〜」 といった表現をする場合もあります。