一人称視点ゲームネタではあると便利な 「アルファベットヘッド」
「アルファベットヘッド」 とは、主に ゲーム の 二次創作 において、作中で プレイヤー の分身となる存在を表現する際の様式の一つです。 アルファベットの種類によって 「Pヘッド」 とか 「Tヘッド」 と呼ぶこともあります (後述します)。
例えばプレイヤーがプロデューサーとなってアイドルを育成するプレイヤー視線 (一人称視点) のゲームでは、ゲーム内に登場するのはアイドル志望の女の子の キャラ であり、プレイヤーやその分身であるプロデューサーの姿を画面中にグラフィックで表示しない場合があります。 この場合、ゲームをプレイしている分には 「画面のこちら側にいる自分」 を画面の中でことさらに意識する必要はありません。 画面中のキャラがプレイヤーに 目線 を合わせて (カメラ目線)、「プロデューサー」 とか 「あなた」、あるいはプレイヤーが設定したゲームネームで話しかければそれで充分です。
しかしキャラとプロデューサーとの関係を 同人 などの二次創作において描く場合には、プレイヤーの分身たるプロデューサーをどう表すかで困ることになります。 一般的には男性向けの作品ならば男性キャラで設定し、顔がはっきりわかると興ざめなので斜め後ろ姿や後ろ姿で顔が分からないような描写をしますが、これでは何かと不都合なこともあります。
「アイマス」 の 「Pヘッド」 や 「艦これ」 の 「Tヘッド」 などなど
そこで人気ゲーム 「アイドルマスター」(アイマス) シリーズ (2005年〜) の二次創作や ファンアート で、プロデューサーの 「P」 を顔というか頭にしたキャラクターが用いられることになりました。 これは 「Pヘッド」 と呼ばれます。
元々このゲームでは、プレイヤーやプレイ 配信者 の名前にPを接尾して表現する文化があったため (例えば 「する子P」 とか)、アイマス関係の作品では、描く方もこの便利な表現を肯定的に受けれられる下地がありました。 またこれは作品を見る方も 「P」 という文字が顔にあるだけのキャラのため、必要以上にプロデューサーの存在を意識しなくて済むというメリットもありました。 具体的な属人性が薄いため、自分をそこに仮託・投影することも容易になるでしょう。 その意味でこれを、女性向け作品によくある 夢表現 だとみなす人もいます。
アイマスは主にニコニコ動画などで一時代を築くほどの大きなムーブメントを起こし (いわゆるニコマス文化の大流行)、様々な同人表現や流行語、ネットスラング を産み出しますが、その中でもとくに他の作品と比べ特徴的なのがこの 「Pヘッド」 であり、苦手な人、忌避する人もいる一方、おおむねファンからは支持されて (アイマスも歴史が長いので、作品ごとに様々なファンがいて、かなりの温度差があります)、すっかり定着することになったのでした。
なお 「Pヘッド」 以前にこうした表現がなかったわけではありません。 例えば 作者 の代わりのキャラの顔に 「作者」 といった文字をのっぺらぼうの状態で書いたり、立体的な作者という文字を頭にしたキャラもいましたし、「悪」「善」 といった文字で頭が作られたキャラなどもいました。
アルファベットが頭になったキャラも存在していました。 例えば未成年の犯罪者報道などで 伏字 として使われる 「少年A」 と模したAヘッドキャラや、モブ の 「通行人A」「B」 などを模したアルファベットヘッドキャラによるエッチな作品などもありますし、アイデア自体はありふれた一般的なものでしょう。 しかし現在に続く 「アルファベットヘッド」 のより直接的な元祖というか、元ネタ だと云えるのはアイマスPヘッドであり、その影響はネット文化や同人・二次創作の世界ではとても大きかったといって良いでしょう。
なおこの表現は当初はアイマス特有のものでもあったので、そのまんまの 「Pヘッド」 と呼ばれるだけでしたが、その後 「艦隊これくしょん」(艦これ/ 2013年〜) のプレイヤー (提督) をあらわす 「Tヘッド」 など他のバージョンも生まれ、それらを総称するような意味でアルファベットヘッドとも呼ばれることになっています。 以降も様々なゲームにも当てはめられ、とりわけ 「ウマ娘 プリティーダービー」(2021年〜) が大ヒットすると、トレーナーをあらわす 「Tヘッド」 や、それでは提督と紛らわしいとしてカタカナの 「トヘッド」 なども登場しています。