使わないに越したことは…
「伏せ字」(伏字) とは、文字の一部を “○” や “×” 等で隠す事です。
“A子さん” のようにアルファベットで伏せる場合もあります。 元々は伏せなくてはならない理由があって固有名詞などを伏せる為のものですが、「伏せなきゃ書けないような事なら、そもそも ネット に最初から書くなよ」 との考え方が パソコン通信 や インターネット、同人 の世界では支配的でしたから、1990年代は冗談として使う場合がほとんどでしたね。
例えば 「東京 ○゛ッグサイト」 とか 「東京 ビoグサイト」 …のように、見て一発で分かる伏せ字が丁度良いようです。 あるいは放送時における放送禁止用語での取り扱い、「ピー」 音を、そのまま活字で表現するとかね… (Uっ!氏談)。 すっとぼけてほとんど伏せない状態の場合もあります。 例えば鈴木一郎なら 「一体なに木なに郎なんだ」 みたいな書き方です。
やっぱり一番多いのは、エッチ関係のスラングでしょうか…
ちなみに伏せなくてはならなくて伏せるケースでもっとも伏せ字が使われる頻度の高い単語は、エロにおける性器、なかんずく女性器に対するスラングのそれでしょうか。 すなわち、いわゆる放送禁止用語に使われる場合がほとんどとなっています。 もっとも最近は 「マムコ」「ティムポ」「オティムティム」 なんて云ったりもしますが…。 これなんかもある意味で一種の伏字なんだと思います (半分以上は冗談でしょうけど (^-^;)。
ところでパソ通やインターネットの 掲示板 (2ちゃんねる など) の通信の世界では、誤変換・当て字 による伏せ字的な使い方 (ネットスラング) もあります。 ロリをあらわす 炉利 とか、電波 な人、危ない人に対する差別的な罵倒語の誤変換当て字的な 基地外 などがその代表格でしょうか。 これらは 「音」 として意味が通じながら、例えば検索などで引っかからない (文字コードが違う) ために、ある種の政治団体やら著名人やらの固有名詞を表現する場合などにも頻繁に使われますね。 また犯罪予告や誹謗中傷が刑事事件化するようになり、「殺す」 を 「頃す」「●す」 とか、「死ね」 を 「4ね」「タヒね」、「自殺」 を 「自32」 などと書き換えたり伏せるケースも多くなっています。
違法行為である薬物の取引とか、いわゆる 援助交際 (援交/ 円光) 関連の連絡で使われる隠語もたくさんあります。 その中でも一般化してしまった言い回しに、女子高生の JK、女子中学生の JC があります。 これらは広い意味の ローマ字略語 でもありますが、他の伏せ字や隠語 (例えば1万円 = 諭吉 とか) と同様、アングラ な世界の言葉が表の言葉としても 認知 されるようになった分かりやすい例でしょう。
ネットの世界では、ネチケット やらそれなりのローカルルールのようなものはあったりするんですが、細かい云い回しなどは発言者それぞれが勝手気ままに行っているケースが大半ですので、単純な当て字なのか伏せ字なのか、それ以前のプレーンな誤変換なのか、判断が微妙なところです。
芸能同人やナマモノ・半ナマ系のサイトでは…
その後、1990年代後半からのホームページブーム、IT ブームがやってきて、さらに2000年代となりブログや SNS が一般化し、社会情勢は激変しました。 パソコンやネットを使ってるのは おたく ばかり…なんて時代は、遠い過去の話になったかのようです。 昔と違いごく普通の人、一般人 が誰でもネットをやっている時代ですから、社会 環境 の変化に応じて、「伏字」 の扱いも大きく変わってきています。
その端的な例としては、「わかってる人だけに見て欲しい」「無関係な人には見てほしくない」 という 芸能同人 や 半ナマ と呼ばれる同人系のサイトの存在でしょうか。 これらのサイトでは、積極的に 「伏字」 を使うケースもあります。 またロボット型の検索エンジンが普及すると、主に 検索エンジン避け対策 として守るべきローカルルールになっているケースも増えています。
誰でもネットを使う時代となり、伏字の意味や意義も変化
一方、ネットでお金稼ぎをする人の中には、アフィリエイト やアドセンス関連の機械的な判定による制限を回避するために伏せ字を使うケースもあります。 例えばもっとも利用者が多いと思われる Google アドセンスの場合、性的アダルト表現だけでなく、酒 (アルコール) が規約で禁止されたり、性風俗と誤解されやすい風俗といった言葉も使いづらく、いずれも 倍角文字 のような 「シ西」 や 「風イ谷」 といった書き方をすることもあります。 また 「エッチ」 なら 「叡知」 といった誤変換当て字系の伏せ字もあります。
また性的要素以外で一般に センシティブ (敏感で取り扱い注意なもの) な情報だとされるもの、差別や人権関係で使われがちな名詞が伏せられたりぼかされる場合もあります。 例えば何かと差別的な話題でしばしば登場する中国や韓国といった国名を、中華とかC国、大陸、K国や隣の国などと言い換えたり (いずれも使われ始めたのはかなり前ですが)、伏せ字ではありませんが、英語のカタカナ書きであるチャイナやコリアをことさらに使うなどです。 これらもアフィリエイト関係でしばしば広告出稿不可になったり収益化不能になりがちなため、ぼかす使い方が時代を経るにつれむしろ増える状態になっています。