繊細で敏感で、取り扱い注意な 「センシティブ」
「センシティブ」 とは、英語の形容詞 sensitive で、繊細な、敏感な、傷つきやすい、腫れ物、閲覧注意 といった意味で使われる言葉です。 ネット においては、個人や社会にとって敏感な内容の情報を指し、個人のプライバシーや感情、安全に関する話題、社会的な感情に影響を及ぼす可能性がある取り扱い注意な話題や コンテンツ を指します。
センシティブ扱いされやすい代表的なものに、18禁 やそれに近い エロ な話題や 画像 があります。 具体的には 全裸 または性器や胸部、臀部などが拡大された半裸、セックスをはじめとした性的行為やその模倣行為に関する話題や画像などになります。 これらは NSFW (Not safe for work の頭字語で、職場での閲覧に注意を要する表現) と呼ばれることもあります。
また差別につながりやすい人種、民族、宗教、出身地、性別、病気、障碍の有無や性的指向、犯罪 (とりわけ性犯罪) や暴力、グロテスク要素、いじめ やパワハラ、自殺 (自死) などがあります。 個人の 特定 につながる個人情報などもそれに加わります。 おおむね一般に 成人向け とか R指定 など年齢制限があるもの、差別や 人権 に関するデリケートなものといっても良いかもしれません。
言葉そのものは 普通 の英語表現であり日本でもカタカナ言葉として広く使われてきたものですが、2010年代後半あたりからは、とくにネットを中心に使われるようになっています。 これは SNS の利用が普及する中で、センシティブな情報の取り扱いがますます重要な テーマ となっていること、とりわけ日本で利用者が多い ツイッター や Youtube で、これらの話題がセンシティブという名称で取り扱われるようになった点が大きく影響しています。
ツイッターをはじめ SNS では、利用者が 投稿 した内容に対して他の利用者が反応し合うため、センシティブな情報が急速に 拡散 されたり、その情報に触れるべきでない利用者が不用意に触れて影響を受ける可能性があります。 また世界的に 児童ポルノ に関する問題が重要視される中、未成年に見える キャラクター のお色気表現が忌避されるようになり、そうした イラスト を投稿する 絵師 の アカウント が BAN されたり凍結・シャドウバン される、投稿が非表示になるなどで、「プラットフォームがセンシティブだと判定」 する内容やその是非が、度々大きな話題となっていたことがあります。
何が人の心をえぐるかわからない時代
社会問題に関する議論が行われる中で、特定のトピックが急速に注目を集め、それに伴いセンシティブ扱いとされることがあります。 中でも特徴的なのは、東日本大震災に伴う津波や被災の様子と福島第一原発事故に関する話題、LGBTQ+ といった個人のセクシュアリティに関する話題、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う感染予防やワクチンに関する話題でしょう。
いずれのテーマも人の生活や尊厳や人命に関わるものであり、人によっては強い トラウマ などから、精神に大きな負担を掛けかねないものです。 議論となれば賛成反対が鋭く対立する 可燃性 が高いもので 拡散力 も強く、陰謀論 まで入り込んで大騒ぎになるものばかりでもあります。 また自殺 (自死) に関しても、報道やネットでの投稿によって影響を受ける人たちがいることに配慮し、自殺予防の観点から近年はとくに強いセンシティブ扱いがされるテーマだと云ってよいでしょう。
これらの話題は極端な意見や誤った情報が広がることで人の心身を傷つけたり社会の分断を招きかねないものであり、一方で 表現の自由 もあるし社会的なテーマでもあるため折々で触れざるを得ないものでもあり、どこからがセンシティブでどこからがそうでないかの判定が難しいものばかりです。 それぞれのサービスのコミュニティガイドラインに反するかどうかは大きな基準ではありますが、機械的に特定のキーワードやフレーズを自動排除する仕組みも、言葉狩りやそれに伴う 伏せ字 が蔓延するだけで本質的な問題はなんら解決しないと批判されがちです (もはや文脈など無関係に 「死」 や 「殺」 あるいは 「コロナ」 といった文字そのものが禁字というか パージ されるようになっています)。
ツイッターでは、ガイドラインにそって自動的に警告が表示されたり、利用者がフィルター機能を用いて自分のアカウントの 設定 で 「センシティブなコンテンツを表示しない」 を選択したり、投稿の際にセンシティブな内容だとの設定ができるようになっています。 この場合は、第三者がその投稿を見ようとした場合に 「センシティブな内容を含む可能性のあるメディアを表示する」 といった注意喚起の警告が出るようにもなっています。
ネットにおけるセンシティブ情報は、人によって、あるいは時代によって変化し、最低限のガイドラインによる規制はあるものの、「誰も傷つけない」 のは難しい状況になっています。 例えば暴力的な表現も、かつては実際の暴行とか死体といった直接的なものがセンシティブだとされていましたが、現在ではメンタルヘルスの関係もあり、単なる怒鳴り声や叫び声だけでもセンシティブ扱いされることの方が多いでしょう。
ツイッターのように多種多様な価値観を持つ不特定多数が参加し、かつ リアルタイム での情報発信が行えるプラットフォームにおいては、利用者がある程度の責任を持って適切な ゾーニング を心がけ、また発信したり拡散すべき情報かどうかを賢く考え、受け取り手に配慮する姿勢が求められています。 難しいですが、それが他人の心身や社会の安全、卑近なところでは自分のアカウントを BAN や凍結から守るためにも必要なのでしょう。